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女騎士さん、冒険者になる。~今日も魔物の肉がうまい~  作者: 九條葉月


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調査


 逃げてきた冒険者4人組『風の栄光』の話によると、ゴブリン退治中に食人鬼(オーガ)が出たらしい。


「……食人鬼(オーガ)って、オークのデッカいヤツだっけ?」


 近くにいたニッツに確認する私。これでも最近は魔物について勉強しているのだ。


「オークのでっかいヤツだな」


「オークのでっかいヤツかぁ」


 雑なニッツな説明と、それで納得してしまう私を見かねたのかガイルが追加説明してくれる。


「見た目や図体のデカさはオークに似ているが、オークより一回りデカいな。あとはオークよりも頭が良く、力もある」


「上位存在じゃん」


 オークでもあれだけ強かったのだから、それの上位存在であるオーガとなると……よく生きて帰ってくることができたわねあの素人さんたち。


「あとはゴブリンを支配下に置いて、軍隊みたいなこともするらしい」


「ふぅん」


 ゴブリンを従える。


 それってこの前討伐したオークじゃないの? あぁ、でもあれは5匹くらいしか率いていなかったものね。『軍隊』ってほどじゃないか。


 それこそあのオークが『進化』して率いるゴブリンの数が多くなれば――


 …………。


 いや、まさかね。


 あまりにも突拍子のない考えに私は首を横に振った。


 そして。


 ――食人鬼(オーガ)現る。

 その報告を受けたギルマスたちは慌ただしく動き始めた。「討伐隊の編成」だとか「騎士団に救援要請」、「領主様に報告を」などと物騒な文言が飛び交っている。


 巻き込まれると面倒くさそう――いえ、魔力欠乏症になったミーシャの体調が心配なので、私たちはお暇して残りの休暇を満喫することにした。





 翌日。

 なぜかギルマスに呼び出された私たちである。


 受付さんに案内された会議室にはすでに多くの人が着座して待っていた。ギルマス以外は知らない顔ばかり。……まぁ私は辺境に来たばかりだからそれも当然なのだけど。


 勧められるまま椅子に座ると、一番奥の席にいたギルマスが深刻そうな声を上げた。


「冒険者になったばかりのセナは知らないかもしれねぇが、食人鬼(オーガ)が出たのなら一大事だ」


「なんか強いんでしたっけ?」


「雑な認識だなぁおい。どうせニッツが教えたんだろうが……。強い以外にも厄介な特徴がある。――奴らは好んで人間を食うんだ」


「あぁ、だから『食人鬼』と」


「普通の魔物は飢えたときに冒険者や商隊を襲うんだが、別の獲物がいればそっちを狙うことが多い。武器や防具を使う人間よりはそこらの野生動物の方が簡単に狩れるからな。ゴブリンの群れだって、自分たちよりも大規模な集落を襲うことはまずない」


「ふ~ん」


 王都から辺境に移動する途中でゴブリンの群れに襲われたときは……そういえば人数はこちらの方が少なかったものね。ゴブリンはゴブリンなりに勝てる算段を付けて襲撃をするのか。


「だが、食人鬼(オーガ)は違う。奴らは腹が減っていなくても人間を襲うし、軍勢を率いて村や町を襲うこともある。記録上では城塞都市に攻め込んできたこともあるらしい」


 それはそれは。怖いもの知らずというか。人類の叡智・城塞を舐めすぎというか。


「だからこそ、食人鬼(オーガ)が出たなら『軍勢』が大きくならないうちに大規模な討伐隊を編成するか、騎士団に出動願うしかない」


 いやぁ、いくら食人鬼(オーガ)でも騎士団は動かないのでは? なにせ「魔物退治は卑しい冒険者の仕事」というのが共通認識だったし。……辺境伯の騎士団は違うのかしら?


「だが、なぁ」


 なぜか難しそうに眉をひそめるギルマス。


「何か問題が?」


「……こういう言い方は何だが、目撃したのが新人共だからなぁ。しかもオークと食人鬼(オーガ)はよく似ている」


「あぁ、見間違いの可能性もあると?」


 騎士団でも戦場慣れしていない子は敵の戦力を過大に報告したり、逆に過小評価したりしてしまうものね。


「討伐隊を編成してから『見間違いでした。ゴメン』じゃあ済まされないからな。騎士様にご足労いただくなら尚更だ。報告した冒険者の責任問題になっちまう。――食人鬼(オーガ)で間違いないという確証が欲しいんだ」


「ほうほう。……なんだか嫌な予感がしますが、私たちを呼び出した理由は?」


「どうせもう察しているんだろう? Aランクパーティ『暁の雷光』には食人鬼(オーガ)の調査をしてもらいたい」


「え~」


「そんな面倒くさそうな顔をするなって。それに倒せとまでは言わねぇよ。食人鬼(オーガ)と確信できたらすぐに逃げてきてくれ」


「うーん……」


「な? 頼むぜ。お前たちなら万が一食人鬼(オーガ)と遭遇しても生きて帰ってこられるだろうと見込んでの提案だ」


 ギルマスは私が転移魔法を使えるとは知らないはずなので、純粋に『暁の雷光』の実力を評価してくれているのでしょう。


 どうしようかなぁと悩みながら皆の様子をうかがう。


「……ま、しょうがないんじゃないか?」


食人鬼(オーガ)だったらすぐにでも討伐隊を準備するべきだが、ギルマスの懸念も分かるからな」


「準備が終わったあとに間違っていたことが発覚したら、報告をした新人さんたちの責任問題になりますし」


「下手をすれば投獄」


 投獄は厳しすぎない? とは思うけど、戦場で間違った報告をしたらと考えたら是非もないかしら?


 なんだか他のみんなは(渋々ながら)受ける方向みたいだったので、私も了承したのだった。食人鬼(オーガ)のお肉にも興味があることだしね。


「また肉欲かよ」


「肉欲まみれだな」


「そろそろ自重した方がいいですよ?」


「ミーシャに呆れられるのはだいぶ末期」


 なぜか呆れられてしまった。なぜだ。




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