↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『妖狐は異世界を攻略し尽くす!』 ~ゲームを極めた私、この世界をガチ攻略~  作者: AsaHiruYugataYoru


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/11

第6話 うれしいサプライズ

第6話|うれしいサプライズ


《村人》Lv.10達成。第二職業枠も無事に解放した。


シロネ:(次はお待ちかね――《アサシン》!)


前世で最も長く使い続けた基本職。解放条件も当然覚えている。


**短剣で5体討伐。**


シロネ:「短剣、短剣……」


短剣さえあれば、あとは倒しやすい魔物を選べばいい。


シロネ:「……あ!」


盗賊に攫われたとき、相手から奪った短剣があった。


シロネ:「お母さーん!」

リナ:「なにー?」

シロネ:「私が盗賊から奪った短剣、知らない?」


家事をしていたリナが手を止める。


リナ:「短剣? 助け出したときには持ってなかったわよ」

シロネ:「なっ!?」


あの日の逃走を思い返す。レオとミアを連れて、森の中を必死に逃げ回った。


シロネ:(逃げてる途中で落とした……?)


どこで失くしたのかまでは分からない。


シロネ:「そう……」


耳がぺたんと倒れる。


《アサシン》解放――開始前から頓挫した。


◇


短剣がないなら仕方ない。


シロネは家の前に座り、薬草をすり潰していた。


ゴリゴリ、ゴリゴリ。


シロネ:(短剣ほしいなぁ~)


《アサシン》が無理なら、その間に《調合師》を育てればいい。薬草をすり潰し、いろいろな組み合わせを試していく。


ゴリゴリ、まぜまぜ。


すると――。


**《痺れ薬》の調合に成功しました。**


シロネ:「おっ」


完成した薬を覗き込む。


シロネ:(痺れ薬か。これは使えそう)


ひとまず大切に保管する。


そして、また薬草を手に取る。


シロネ:(短剣ほしいなぁ~)


◇


別の日。


トルク:「シロネ、釣りでも行くか!」

シロネ:「うん!」


父のトルクと一緒に海へ向かう。


二人で並んで座り、餌をつけた針を海へ投げる。しばらく待っていると、竿先がぴくっと動いた。


シロネ:「きた!」

トルク:「慌てるなよ。そのまま引け!」

シロネ:「よいしょっ!」


ざばんっ!


小さな魚が海面から飛び出す。


シロネ:「釣れた!」


ぴちぴちと跳ねる魚を押さえた、そのとき――。


**職業《釣師》が解放されました。**


シロネ:「なっ!」

トルク:「どうした?」

シロネ:「……なんでもない」


魚を持ったまま、内心で確認する。


シロネ:(《釣師》も取れた)


新しい職業が増えた。これは普通に嬉しい。


それでも頭の片隅には――。


シロネ:(短剣ほしいなぁ~)


三回目。


そろそろ頭から追い出す。


◇


穏やかな波の音を聞きながら、二人で釣りを続ける。


トルク:「そういやシロネ。最近、よく村の手伝いしてるんだってな」

シロネ:「うん! まあね!」


少し得意げに胸を張る。


トルク:「母さんから聞いたぞ。毎日頑張ってるって」

シロネ:「ふふん」

トルク:「偉いな!」


トルクが頭をわしゃわしゃ撫でる。


シロネ:「わっ、ちょっと!」


ぐしゃぐしゃになった髪を手で直す。それでも尻尾は少し嬉しそうに揺れていた。


トルク:「何か欲しいものでもあるのか?」

シロネ:「短剣がほしい!」


一拍。


シロネ:「なっ!」


言ってから気づいた。


村は食料にも余裕がない。毎日の食事だって十分とは言えないのに、自分の武器を買ってもらう余裕なんてあるはずがない。


シロネ:「……忘れて」

トルク:「短剣か」

シロネ:「いいの。ほんとに」

トルク:「そうか」


トルクはそれ以上何も聞かなかった。


シロネも海へ視線を戻す。


少しの沈黙。


ぴくっ。


竿先が動いた。


トルク:「シロネ、来てるぞ!」

シロネ:「えっ!?」

トルク:「引け、引け!」

シロネ:「分かってる!」


ざばんっ!


今度はさっきより大きな魚が跳ねる。


トルク:「おお! やるじゃないか!」

シロネ:「ふふん!」


短剣の話は、それで終わった。


◇


それからの日々。


シロネは調合を繰り返し、魚を釣り、村の仕事も手伝った。


《調合師》や《釣師》を育てるだけでもやることは多い。最初こそ短剣のことばかり考えていたが、忙しく過ごしているうちに、そのことも少しずつ頭から抜けていった。


そして――二週間後。


トルク:「シロネ! 釣り行くぞ!」

シロネ:「うん!」


再び二人で海へ。


以前より竿の扱いにも慣れ、シロネは魚を釣り上げていく。


トルク:「上手くなったな!」

シロネ:「まあね!」

トルク:「最初は魚に引っ張られてたのにな」

シロネ:「あれは最初だけ!」

トルク:「ははは!」


何匹か釣った頃には、空が赤く染まり始めていた。


トルク:「そろそろ帰るか!」

シロネ:「うん」


二人で魚を持って村へ戻る。


この頃には、シロネの頭から短剣のことはすっかり抜けていた。


◇


家へ入ったシロネが、ぴたりと止まる。


シロネ:「……ん?」


食卓には、いつもより少し多めの料理が並んでいる。


豪勢というほどではない。それでも、この家では明らかに特別な食卓だった。


シロネ:(今日、何かあったっけ?)


レオとミアもすでに座っている。


リナ:「シロネ、こっちに座って」

シロネ:「うん……?」


言われるまま座る。


リナとトルクが顔を見合わせた。


リナ:「シロネ」

トルク:「誕生日おめでとう!」

レオ:「おめでとー!」

ミア:「おめでとー!」


シロネ:「なっ!?」


耳が一気に立つ。


みんなを見る。食卓を見る。


シロネ:(誕生日……)


完全に忘れていた。


前世の記憶が戻ってから、やりたいことが多すぎて、自分の誕生日まで頭が回っていなかった。


今日で――六歳。


リナ:「どうしたの?」

シロネ:「……忘れてた」

レオ:「自分の誕生日を!?」

シロネ:「うるさい」

レオ:「普通忘れるか?」

シロネ:「レオは黙ってて」

レオ:「なんでだよ!」


トルクが笑い、リナもつられて笑う。ミアもよく分からないまま楽しそうに笑っている。


シロネ:「……ありがとう」


改めて祝われると、なんだかむずがゆい。


耳がぴくぴく。

尻尾も左右に揺れる。


レオ:「シロネ、尻尾すげー動いてるぞ」

シロネ:「なっ! 見なくていい!」

レオ:「喜んでるじゃん」

シロネ:「むぅ~!」


また、みんなが笑う。


シロネも恥ずかしさをごまかすように料理へ手を伸ばした。


今日は少しくらい、育成のことを忘れてもいい。


家族と一緒に食べる。それだけで十分だった。


◇


食事が一段落した頃。


トルク:「そうだ、シロネ」

シロネ:「?」


トルクが細長い布包みを持ってくる。


トルク:「俺たちから、もう一つあるぞ」

リナ:「誕生日の贈り物よ」

シロネ:「私に?」

トルク:「ああ。開けてみろ」


シロネが受け取る。


ずしっ。


見た目より少し重い。


シロネ:「……?」


布をゆっくりほどいていく。


ちらりと金属の光が見える。


シロネの手が止まる。


布を完全に外す。


**一本の短剣。**


シロネ:「なななっ!?」


耳がピンッと立ち、尻尾がぶわっと膨らむ。


レオ:「うわっ! 短剣!? いいな~!」

ミア:「おぉー!」


シロネは両手で短剣を持ち上げる。


鞘から少しだけ抜く。


キラッ。


ちゃんとした刃だ。


シロネ:「これ……」

トルク:「欲しいって言ってただろ?」

シロネ:「でも……」


思わずリナを見る。


この家に余裕がないことくらい、シロネにも分かっている。


リナ:「誕生日だもの」


シロネ:「……」


もう一度、短剣を見る。


欲しかった武器。

《アサシン》を解放するために必要だったもの。


でも今は、それより先に出てくる言葉があった。


シロネ:「……お父さん、お母さん」


短剣をぎゅっと抱える。


シロネ:「ありがとう! うれしすぎる!」


トルク:「ははっ! そんなに喜んでくれるなら良かった!」


シロネの尻尾がぶんぶん揺れる。


トルク:「切れ味が落ちないように、ちゃんと研ぐんだぞ。道具は手入れして長く使うんだ」

シロネ:「うん!」

リナ:「それと、危ないことはしないでね」

シロネ:「……うん」


リナ:「シロネ?」


シロネ:「なっ! 気をつける!」

レオ:「今、間があったぞ」

シロネ:「なかった!」

レオ:「あった!」

シロネ:「ない!」

ミア:「ないー!」

シロネ:「ミアはいい子」

レオ:「なんでだよ!」


家族の笑い声が響く。


その真ん中で、シロネはもう一度短剣を見る。


欲しかった武器。


そして――家族からもらった、初めての大切な武器。


シロネは嬉しそうに鞘を撫でる。


明日から、また忙しくなりそうだった。


**第6話|うれしいサプライズ 終**

最後までお読みいただきありがとうございます!

感想もお気軽にいただけると嬉しいです。

面白かったら、評価・ブックマークで応援していただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。