6 告白
高山 まほろの部屋。ベッドの上で、男物のぶかぶかインナーを着たあおいが、バスタオルにくるまりながらガタガタと小刻みに震えている。
「……なぁって。お前、さっきから俺の顔見てビクビクしてっけど、何なんだよ?……っうか、なんで、ぶっかぶかの男物のブレザー着て雨の中に倒れてたんだ?」
まほろが怪訝そうに顔を近づけると、あおいは悲鳴を上げるように両手で顔を覆った。
「……来ないでよッ!また、なんか酷いこと言いたいんだろ?……また、あんな冷たい目で僕を見るんだろ……⁈」
「……え?」
あおいは指の隙間からまほろを見た。
髪を金髪に染め、口の悪さはそのままだが、その瞳には自分を蔑んだような「あの真帆路」の冷酷さは無く、純粋に目の前の行き倒れの少女を心配する熱い人間味が宿っている。
「本当に……高山だよね?君、高山 真帆路……?髪の毛……金髪になってるし、なんか……ちょっと違うみたいだ……」
「はあぁ⁈ばっきゃろッ!……俺は高山 まほろだわ!つーか、お前、さっきから自分の事『僕』って言ったり、あたかも俺の知り合いみたいな口きいたり、マジで何なんだよっ!」
「……ぼ、僕……僕は水瀬 あおいって言うんだ……っ!男、なんだよ。君と……同じ高校の……」
「はあああ?……嘘つけっ!あいつは男だ!お前はどこからどう見ても女だろっ!ちゃんと胸だってあるじゃねえか!」
(何だよ。こいつ……完全に電波だろ?俺との会話が成り立たねえぞ……)
あおいは大粒の涙をぼろぼろとこぼしながら、必死に声を振り絞る……前の自分の声ではないが、それでもプライドも何もかも捨てて、目の前の男に縋るしかないのだ。
「信じてくれないかもしれないけど、ホントに僕は『水瀬 蒼』で、男だったんだっ!ずっとずっと仲良くしてもらいたかった君に……でも……でもね、今まで君に凄く酷いこと言われてきて、もういいやって縁切り神社に行ったんだよ……っ」
「縁切り神社って?……ああ、あそこ……お前が倒れていたところか」
(あれ?……でもよ、俺は水瀬に、今まで声かけられたことなんてなかったぞ?仲良くしてもらいたかったって……どういうことだ?……顔は知ってるけどさ……)
まほろは、益々パニックになる。水瀬 蒼とはそういう関係だったのだ。
「そうだよ!土砂降りの中、境内で願掛けしてたら、目の前が真っ白になって、ものすごい衝撃が走って……気がついたら、君に助けてもらっていたんだ。嘘じゃないよっ!信じてよっ……!」
「……いや、信じてたって……そんなこと『ハイそうですか』って、言えるわけねーじゃん!」
「どうしよう……僕、これからどうしたらいいの?高山……」
「……んなこと俺に聞くなっ!知らねえよッ!」
ベッドの上で膝を抱え、目を腫らし大粒の涙を流してパニックになっているあおい。同じくパニックになるまほろ。
……知らねえ……とは言ったものの、まほろは金髪をガシガシと乱暴に掻きむしり、困り果てたようにため息を吐く。女の子の身体(見た目は好みのドストライクの美少女)になったクラスメイトに多少のドギマギはあるけれど、根が圧倒的にお人好しな彼は、泣いている奴を放っておけない。
「……あー、あーっ、うるせえ。泣きわめくな。……とりあえずここに居ろ。明日、俺が学校の『水瀬 蒼』に直接会いに行って確かめてきてやるから、お前はここを動くな!」




