29 ドラッグストア:まほろ、人生最大の勇気
ドラッグストアが開くと同時に、まほろは商品を探した。ピンクやパステルカラーで埋め尽くされたその一角に、まほろは迷い込んでいた。彼は呆然と立ち尽くす。
(……いや、種類多すぎだろ。どれが何なんだよっ……!)
棚にずらりと並ぶ「羽付き」「スリム」「夜用」「多い日用」の文字の羅列。まるでゲリラ豪雨の予測データでも見せられているような気分だ。スマホで検索しようにも、手が汗で滑って上手くフリック出来ないし、それこそ分からない。
その時、棚の品出しをしていたエプロン姿の女性店員が、怪しげにナプキン売り場をうろうろする男子高校生に気づき、不審そうに視線を向けた。
(……くそっ、不審者だと思われているぞ……でもここで逃げ帰ったら、アイツが……)
まほろはゴクリと唾を飲み込み、ギュッと拳を握りしめると、意を決してその店員へと大股で歩み寄った。
「あ、あの……すいません……!」
「あ、はい?どうされましたか?」
意を決して突然、血相を変えた男子高校生に話しかけられて、店員は少し身を引く。まほろは耳まで真っ赤にしながら、蚊の鳴くようなけれど必死の声で絞り出した。
「その……と、友達が……女の子なんですけど……急に『あれ』が来たらしくて。お腹、めちゃくちゃ痛がって動けなくなってて……買いに来たんですけど、何を買ってやればいいのか、全然分からなくて……!」
店員は一瞬目を丸くしたが……やがてまほろの今にも泣きだしそうな眼差しを見て、その表情を『柔らかいお姉さん』に変えた。
「……そっか。それは大変だね。偉いね、君。ちょっと待っててね」
店員さんは優しく微笑むと、手際よく棚からいくつかの商品を手に取り始めた。
「初めてなのかな?痛がるようだったら、鎮痛剤も買ってあげてね」
「……鎮痛剤……?」
「ええ。それとね、ナプキンはね、最初はこれがおすすめ。普通の日用の『羽付き』。羽があると下着からズレにくいから安心なんだよ。それと、もし寝る時も心配なら、このお尻まで隠れる『夜用』も一枚あると、お友達もホッとすると思うな」
店員さんは、まほろが分かりやすいように、パッケージの裏を指差しながら丁寧に使い方を説明してくれた。
「後はね、お腹を極力冷やさないようにね。温かいココアとか、冬場ならカイロもお腹と腰に貼ってあげてね」
「……っ、有難うございます!本当に助かりました……!」
まほろは、頭を下げ、教えてもらった商品を抱えるようにしてレジへと走った。
レジでは中身が見えないように黒い袋に入れて貰い、それを自分のD-バックに押し込んだ。




