25 あおい、外の世界へ
まほろはテスト最終日を無事に終え、午後からあおいを大型ショッピングモールへと誘った。いくら何でも28cmのローファーではさすがに歩き回れないあおいである。
「……スニーカーか……。じゃあ、今から買いに行くか。二階のファンションフロアーなら売ってるだろ。なんならそのまま一階で食い物も買えるしさ」
「うん、行きたい!行こうよ、高山」
あおいの瞳が一瞬輝いたが、すぐに曇ってしまった。
「靴……」
あおいの視線が玄関に並べている28cmのローファ―の方へと向いた。
まほろはフンと鼻で笑うと、靴入れから「サイズ調整のできるマジックテープ式のスポーツサンダル」を引っ張り出してきた。まほろのである。
「しょうがないから、これ履け。ベルトを一番きつく締めれば、とりあえず歩けねえことはないだろ」
あおいが足を入れ、まほろがしゃがんでベルトをギチギチに締め上げる。多少つま先は余るものの、足首がしっかり固定されて、なんとか歩けるレベルになった。
「……うん、これなら速くは無理だけど、いけそう。有難う、高山」
あおいは玄関で何度か足踏みをして嬉しそうに笑った。その仕草は最高に可愛らしかった。
久しぶりに外の空気を吸ったあおいは、本当に嬉しそうに何度も深呼吸をしている。
道中、すれ違う男の人が「えっ……めちゃくちゃ可愛い子がいる……」とあおいを二度見、三度見していく。あおいは元々男なので、自分が見ることがあっても、自分が見られる立場になったことを意識していない。隣を歩くまほろは気が気ではない。
地下鉄で数駅先の大型ショッピングモール、二階靴売り場に到着すると、あおいの目が輝いた。
「……すご……。こんなに種類があるんだな。男の時は、黒か白の安物のスニーカーしか見なかったから気づかなかった」
あおいは棚にずらりと並ぶレディースやユニセックスの靴を眺める。今のあおいの足は25cm。女の子としては少し大きめだが、男女兼用のスニーカーなら一番種類豊富なサイズである。
「高山、これ……どうかな?」
あおいが手に取ったのは、シンプルなベージュとホワイトのキャンバススニーカー。カジュアルで、サックスブルーのTシャツとキュロットパンツにも完璧に合いそうだ。軽量なのも、あおいは気に入ったようだ。
「……良いんじゃねえの。履いてみろよ」
あおいは丸椅子に腰かけて、デカサイズのサンダルを脱ぐと、新しく届いたばかりの真っ白なソックスを履いた足をスニーカーに滑り込ませた。
「あ……すごい。ピッタリだ。……うん、軽いし動きやすい」
つま先を指で押して、フィット具合を確かめるとその場で立ち上がり、トントンとつま先を弾ませるあおい。ジャンプするたびに、サックスブルーの裾が揺れて、楽しそうな笑顔がはじける。値段もそう高くはない。
「よし、靴はこれにするよ!高山、会計お願い」
「おう。……あ、なんならタグ切って貰えよ。サンダルより歩きやすいだろ?」
「あっ、そうか……そうする」
まほろは財布を取り出して支払いを済ませる。やっと、足元も万全な「女の子コーディネート」が完成した(中身は男の子なのだが)
いよいよ、次は一階の食料品売り場だ。




