2 ブカブカの迷子
ザァザァと容赦なく降り続く四月の雨の中、神社の境内は奇妙な静寂に包まれていた。
「冷たっ……、え?なんだ、これ……?」
境内の石畳の上。__あおいは激しい眩暈と共に、意識を取り戻した。
だが、何かがおかしかった。視界がいつもより若干低く、なにより自分の身体が酷く軽い。
慌てて立ち上がろうとしたあおいは、自分の足元を見て息を呑んだ。
「!!」
さっきまで、ピッタリ……いや高校生活で若干小さくなっていたはずの男子学生のズボンが、足首の所で大きく弛み、完全に地面を引きずっている。上着の袖も、手首を通り越して指先まで完全に隠れてしまっていた。
(嘘だろ……?なんで服がこんなに大きくなって……あれ?いや、僕の身体が縮んだの……か⁈)
軽いパニックになりながらも、あおいはサイズの合わないブカブカの制服の裾を引きずり、一歩を踏み出した。
歩くたびに長い裾が足に絡まり、雨に濡れた泥で制服が汚れていく。サイズの合わないローファ―。それでも、この不気味な場所から逃げ出したくて、誰かに助けを求めたくて、長い袖で顔を拭いながら、必死に前へ進もうとした。
「誰か……誰かいないのぉ……っ?」
やっとのことで出した声……さらに血の気が引いた。
自分の口から出たのは、低くて聞きなれた自分の声ではない。「ハイトーン」高くて、酷く可憐な……可愛らしい「女の子の響き」だった。
身体の変化、衣服のサイズの不一致、ブカブカの靴。聞きなれない声。人通りは無い。
限界を迎えたあおいの足は、引きずっていたズボンの裾にひっかかり、そのまま境内の冷たい地面へと激しく倒れ込んだ。
バシャッ!!!
(何、これっ?……何が起こって……?)
意識が朦朧とする。ブカブカの学生服に埋もれるようにして、あおいはそのまま再び意識を失った。




