15 ブカブカの居候と、理性の限界注文 2
無理だ。どう考えても実店舗に女性用下着を一人で買いに行くのは命を懸けても不可能だ。かといって、このままあおいに自分のトランクスを穿かせたまま、ノーブラのジャージ姿では、いつかまほろの理性の寿命が尽きる。
コンビニで食品を買い、支払いにスマホを出したまほろは、ふと閃いた。
(通販だ……!そうだよ、オンラインで買えばいいんだ……!)
家に戻ると早速、あおいの前で画面を開く。
「えっ、通販?」
「おう!ここなら誰の目も気にせずに買えるだろ?ほら、一緒にお前も見ろ。こっち来い」
食品をキッチンに置いて、まほろはリビングのソファーに座ろうとした。
……いつもは乱雑に置かれている雑誌や服、お菓子の食べた後の袋、ジュースのペットボトルなどが至る所にあるのだが、気づいてみるとすっきりと片付いていた。
自分が学校に行っている間に、あおいが一人掃除をしていたに違いない。
「あっ……お前、部屋を片づけてくれたのか……気づかなかった……サンキュな」
「……う、うん。僕、これぐらいしか出来ないから……」
恥ずかしそうに、あおいは微笑む。
一方、帰宅と同時に、待っているあおいから視線を外し、慌ててご飯を買いに行こうとしたまほろだ。突然あおいに「下着買って」という、とんでもないことを言われてパニック状態になっていた。今更だが、気づくはずもない。
「……あおい、こっちこい」
まほろはソファに座り、隣の空いているソファを手でたたく。あおいがジャージの裾を気にしながら、少し距離を開けてちょこんと隣に腰掛ける。ふわりと女の子特有の香りがリビングに広がり、まほろの心臓がまたドクンと跳ねた。
「ええと……サイトは……『ユニーク(Unique)』でいいよな。ここなら安くて、商品豊富だし、いろいろ買えるはずだ」
スマホの画面に映し出される色とりどりの女性用下着のカタログ。男子高校生が(一人は元)頭を突き合わせて女の子の下着画面をみつめるという、人生で最も奇妙でドキドキの『オンラインショッピング』が、今まさに始まろうとしていた。
「……おい、あおい。これって、一体何が違うんだ?」
広いリビングのソファ。まほろはスマートフォンの画面をにらみつけたまま引き攣った声を上げた。
画面には、シンプルで機能的なブランド『ユニーク』の女性下着のページが開かれている。だが、そこに並ぶ文字は、男子高校生のまほろにとっては未知の領域過ぎた。
「なぁ……ショーツって、なんでこんなに種類あんだよ!……んーと、『レギュラー』『ローライズ』『ヒップハンガー』『Tバック』『サニタリー』。あと『ボクサー』って、男物とどう違うんだ……?」
「……う、うーん、僕だってよく分からないけど……あんまり小さいヤツだと動いたときに脱げそうになっちゃうのかな?……あ、高山……僕、この『ボクサー』ってやつがいいかも。前に穿いてたのによく似てるから、一番落ち着くかも?じゃあ、一枚お願い」
「待て待て……お前は馬鹿か?毎日それ洗濯して乾かなかったら詰むだろがっ!また俺のトランクスを穿く羽目になるんだぞ。最低でも三日……三枚ぐらいは買っとけ」
「う……うん、有難う」
「次は……お、上のやつだな。ブラジャー……だろ?」
まほろがゴクリと唾を飲み込みながら、サイトのページをめくる。画面にずらりと並ぶブラジャーの画像に、二人の間の空気はさらに緊張した。




