13 不在の証明と綺麗になった鳥かご 4
洗濯機が回り出す音を背に、あおいはリビングを見渡した。
高校生の男の一人暮らしのマンションだ。ごみが散乱しているわけではないが、脱ぎっぱなしの靴下、乱雑に積まれた雑誌、棚の上の薄い埃等……もともと几帳面なあおいからすればつっこみどころが満載だった。
(高山には、命を救って貰った上に迷惑かけて、こんないい場所にタダで置いて貰ってるんだ。せめて……掃除ぐらいは僕がやらないと)
あおいはジャージの袖をたくし上げると掃除を開始した。窓を開ける。
リビングの雑誌を綺麗にそろえて棚におさめ、散らばっていた小物をまとめていく。床に掃除機をかけ、棚の埃を丁寧にふき取っていくと、部屋がみるみるうちに澄んだ空気へと変わっていった。
次に、借りているまほろの部屋、キッチン、トイレ、玄関……と手際よく掃除を済ませる。
最後に、洗濯と乾燥が終わったシーツと枕カバーを干しておいた布団にかけなおすと、柔軟剤の爽やかな柑橘系の香りがした。これで良し、とあおいは満足げに額の汗を拭った。
時計を見ると、まほろがそろそろ帰ってくる夕方で、辺りが赤く染まってきていた。
あおいはすっかり奇麗になったリビングのソファに腰掛け、まほろの帰りを待っていた。
中身が男の蒼だというアイデンティティは何も変わっていない。けれど、慣れない女の子の身体で、男友達の為に部屋を片付けるという状況に、あおいは不思議な、なんとも表現しがたい奇妙な気まずさを覚えていた。
(……いいやっ、これは居候としての当然の義務なんだ。断じて、甲斐甲斐しい女の子の真似事なんかじゃないんだぞ……!)
必死に自分に言い訳をしながら、あおいはグレーのジャージの襟元をぎゅっと握り締め、真っ赤になった顔をかくすようにソファで丸くなるのだった。




