11 不在の証明と綺麗になった鳥かご 2
「おい、あおい……寝てろって言ってたろうがっ!」
風呂から上がったまほろは、自分の部屋へスポーツドリンク持って入ってきた。あおいはベッドの端にちょこんと腰掛けて、まほろを待っていたようだった。
「……仕方ねえから、今日はここで寝ろ……で、鍵はしっかり閉めとけよ」
「えっ?……でも高山は一体どこで寝るんだ?……僕、リビングで寝ても……」
「俺がリビングのソファで寝るんだ。……お前も、さっさと寝ろよ」
「……うん……」
それだけ言うと、バタンとドアが閉まり、あおいは一人静かな部屋に取り残された。言われた鍵はあえてかけなかった。
(……うわっ、何だこれ……)
布団から、自分じゃない匂いがする。Masculine (マスキュリン)――男の子特有の匂いに驚くあおい。初めに寝かされていたときには気づかなかったが……途端に恐怖が押し寄せる。自分の意思とは関係なく、身体が女の子として彼に反応していまっている。
(やめろ……頼むからドキドキするな……僕は高山とは友達になりたかっただけなのに……何なんだよ……これって……)
中身は昨日まで普通の男子高校生だったのだ。男の匂いなんてしょっちゅう学校や部室で嗅いだことがあるのに、どうして今こんなに息が苦しくなるのか、頭がおかしくなりそうだった。
「……眠れるわけないよ、こんなの……嫌だ」
真夜中、どうしても落ち着かなくて、あおいはそっと部屋を抜け出した。
リビングのソファではまほろが足を放り出して寝息を立てていた。その姿を暫く見眺め……また再び部屋のベッドに戻った。
結局、あおいは一睡もできないまま、横たわりながら、カーテンの隙間から朝の光が差し込んでくるのをじっと待っていた。
張りつめていた緊張と、一晩中まほろの匂いに翻弄され続けた疲労の限界が訪れたのは、すっかり外が白み始めた朝方の事だ。
「……高山……」
最後に小さく彼の名を呟き、あおいはようやくまほろの布団の中で泥のような深い眠りへと落ちていった。
ジャージの襟元をおおきくはだけさせ、まほろのトランクスから細い生足を覗かせたまま眠るあおい。
その数十分後、リビングで目を覚ましたまほろが、おそるおそる部屋のドアを開けた。
(……こいつ、鍵、かけてなかったのかよ)
その無防備過ぎる寝姿に、本気で理性を吹き飛ばされそうになった。寝苦しかったのか、歩きにくかったのか、ジャージのズボンを床に脱ぎ捨てて、布団の間から、白い生足がはみ出ていた。
「……あおい……」
慌ててドアを閉め、まほろは咄嗟に口元を手で押さえた。顔面は沸騰しそうなほどの熱さだ。
……あまりにも無防備だ。自分の部屋のベッドにこんな奇麗な女の子が、鍵もかけずに寝ているなんて。
そして……この光景を見ている自分は……早朝なのだ。男だったら生理的に分かる瞬間だ。
ドキドキが止まらないまほろである。




