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DSaC  作者: げど☆はぐ
家出娘と場外乱闘
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第五話

 私は首都バッハから三十キロほど西にある牧場の敷地内に車を停めてアイドリングしていた。近くに飛行船乗り場があり、のんびりと飛行船が上空を飛んでいる。

 ここにジョンが、そしてもしかしたらレイチェルもいるはずだ。

 ジョンはこののんびりとした牧場でお馬さんの世話をして暮らしているという。レイチェルも一緒に働きながら暮らすのにもちょうどいい、と思っていたのだがどうも様子がおかしい。

 まず馬がいない。外はもちろんここから見える厩舎にもいなかった。世話をする馬がいなくてどうやって暮らすのだろう? 私は嫌な予感がして建物の窓の死角に車を停め直し、タンクの火は入れたまま車を出ると柵伝いに建物に近付いて入口を覗いた。電球が割れていて暗くてよく見えない。私は慎重に建物に入った。厩舎によく似ているが人間が暮らす方に。


 受付とおみやげ売り場になっている建物の入口はあたり一面血だらけで、男性が何人も斬殺されていた。バラバラなので何人かは分からない。壁には弾痕がいくつもあるし、死んだ彼等の物と思われる銃も散乱している。ここで激しい戦闘があったのは明らかだ。なるほど、ジョンの家庭には少し問題があったようだ。

 私はリボルバーを抜いて奥の廊下に入ると、壁が崩れていて死体が見えている部屋があった。そこ以外はうまいこと扉が閉じていて射線が切れていたので、私は手前の部屋から順番に確認して行った。色んな部屋で死体が転がっている。どれも斬殺されている。

 なぜ銃を持った男達が刃物で倒されているのだろう? そもそもなぜこんなに銃を持った男達が牧場に集まっていたのだ? 従業員の間でカウボーイブームでも来ていたのだろうか? しかしカウボーイ達はある日料理に文句を付け、馬に乗りながら突撃したが凄腕のコックに斬り殺されてしまい、馬はそのまま走り去ってしまった。犯人はコックだ! 私は自分の思い付きが馬鹿馬鹿し過ぎて吹き出しそうになった。なんで屋内で馬に乗るのだ、意味がわからん。

 手前から三つの部屋はすべて死体が転がっていた。私は一番左奥の少し広い部屋に入った。ここには死体は無い。ベッドが二つ。書き物用の粗末な机と椅子。牧場主の家族の部屋かと思ったが写真も無い。押入れを開けると若い男女の服が何着か入っていた。女の服は何着かの作業用の服の他に高価そうなサテンのドレスがかかっていた。

 ここがレイチェル達の部屋かもしれない。

 鞄が無い。窓が開いている。何かが起きて音を聞いてここから逃げた? それならまだ生きているかもしれない。私は黄ばんだ白のカーテンがふんわりと揺れている窓からそっと外を覗いた。ここからは馬が放牧されるエリアが見える。しかし窓の下からはずっと草が生えていて人間の足跡を追うのは難しい。どこへ逃げたのか……まだ見当はつかない。ジョンはどうなった? 分からない。

 ここまでのようだ。事務所に戻って警察に通報しよう。

 そう思って入口に戻り建物を出た瞬間、遠くの丘で何かが光った。そして頭に衝撃を受け、視界が真っ暗になった。


 気が付くと、私はアイドリングしている自分の車の車内にいた。

 どうやら狙撃されて一回死んだらしい。ヒモ付きの情報の洗礼をさっそく浴びてしまった。やれやれ。しかし私は一回死んだくらいで取り乱したりはしない。

 私は魔法使いだ。

 私は死んだ時、ある程度時間を巻き戻して人生をやり直す事ができる。一か月程なら好きなタイミングに戻る事ができる。もう少し具体的に言うと、肉体が死んでも私の自我がどこかに残っていて、好きな時点に戻って新しい肉体を授かり、その肉体のここからここまでを私だ、とまとめている意識がそこから再スタートするのだ。私は自我と意識を明確に区別している。意識は肉体に宿る。だが自我は肉体ではなくどこかに永遠に存在しているのだ。コーヒーが好きとか、イケメンが好きとか、その割合を決めている存在、それが自我。つまり私だ。

 事故で死んだ時にこの能力に気付き、その後これで株を売買してお金には困らなくなった。しかし余生を過ごすには私は若すぎる。なにせまだ二十四歳の若さ弾けるフレッシュな女の子なのだ。

 あまりにも暇なのでこれを武器に二年前から探偵として生きている。依頼達成率百パーセント。おかげでこの業界には多少知られるようになった。

 今回はまったく無意識のうちに死んだのでつい先程の、牧場に着いたタイミングに戻ってきたようだ。

 私は助手席に置いてある双眼鏡で先程光ったあたりを運転席から眺めた。スナイパーライフルが見え、驚いて顔を上げた女と目が合った。

 私はレバーを全開にして車を急発進させ、少々荒っぽい運転で牧場から離れた。車で来てよかった。

 双眼鏡の向こうに映っていたのは写真で見たレイチェルだった。

 なぜ死体だらけの牧場の外から、初めて見る私をスナイパーライフルで狙撃する? 反抗期にしては過激すぎる。とてもあそこまでは行けない。説得するのは諦めてここはいったん警察に通報して様子を見ることにしよう。

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