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DSaC  作者: げど☆はぐ
家出娘と場外乱闘
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第三話

 エリックの屋敷に行って彼に会い、報酬の話などしたものの、別に新しい話は無いのでここは大胆にカットさせてもらう。とにかくレイチェルにもし会えたら連れ戻して欲しいとの事だった。

 警察の捜索が使えない以上はなんでも推測から動いてみるしかない。

 駆け落ちする以上、男が裕福という事は稀だ。となると中央区は貴族や大企業が多いから除外してみよう。北区は港に近いため登録された漁師が多く、漁師名簿を見れば該当する男はいない事がすぐ分かった。という事でまずは南区からだ。

 私はまず飲食店を当たってみる事にした。若い二人が一旦どこかに、例えば男のアパートに落ち着いた後は、よっぽど男の方が稼いでない限り生活のためにレイチェルにも労働意欲が湧くだろうと思ったからだ。その場合、飲食店か郵便物の配送のどちらかからだいたい始めるだろう。しかしいくら屋敷が南区にあるとはいえ、細かい所まで道が分かる貴族の娘というのははちょっと想像しづらい。という事で飲食店だ。

 たいていの場合、貴族の娘がいきなりキビキビと働けるという事はまず無い。高い店でトラブルを起こしては大変なのでまずは大衆向けの、特に客があまり来ないようなカフェやレストランなどをまずターゲットにしよう。


 私はカフェやレストランをレイチェルの写真を持って聞き回った。これのいい所はそのままそこで食事を楽しめる点だ。一石二鳥。

 このヴェイン公国はもともと地方の貴族がそれぞれを治めるヨーロッパの中の小さな国の一つだったが、現ヴェイン公が隣国を巻き込んだ議会連邦制を提唱し、小競り合いを経て他の国をいくつか吸収して今の形になった。そして蒸気機関の発見、世界初の実用化により一気に発展した。諸外国との関係は良好で、その事はこのカフェ巡りの――もぐもぐ――料理内容からもよく分かる。南国の果物を使ったタルトや、アジア系のカレーナンに豆のスープ。極東から伝わった笹もちや串団子――もっきゅもっきゅ――コーヒーも国によって酸味やコクが違うね――紅茶に緑茶。ふう、ご馳走様でした。

 しかしこの街は広い。ようやく二鳥目が捕まったのは三日目の夕方だった。

 レイチェルが一時期働いた事があるというカフェをついに見つけた。高齢の店員によるとすぐにやめてしまったそうだが、住所が控えてあった。サラに聞いた所によると男の方の名前はジョンという。なのでおそらくジョンが住んでいるアパートの住所だろう。探偵の許可証を見せて住所を教えてもらった。いい流れだ。レイチェルもまだそこにいればいいが。


 台風前夜のような、聞こえるのは風だけで人の声があまりしない夜だ。南区二ー三ー七。ここだ。通りはかなり寂れた雰囲気だった。夜になるとなおさらだ。私はリボルバーに弾が入っているのを確かめてから車を降りた。

 三階建ての寂れたマンション。こんな所に住んでいる若者と貴族の娘の組み合わせか、反対されるのも当然だ。ロビーに入って階段を昇り、通路に捨ててある紙コップなどを避けながらジョンの部屋である七号室の前に来た。

 ノックをしたが返事は無い。留守か。少し待ってみたものの気配が無いので出直そうかと思ったが、その前に下のペラペラの郵便受けから部屋をちょこっと覗いてみた。明かりが点いていないのでよく見えない。私は鞄からペンライトを取り出した。取っ手を回すと歯車が回って一定時間光を発する。自転車のライトの小型版と言った所だ。えいえいえいえい……よし。

 私はペンライトを向けて再度覗いて見た。……あれ? 家具が無いぞ。まさか出て行ってしまったのか? 仕方ない、隣の住人に聞いてみよう。

 私は隣の部屋をノックした。すぐにドアが開いた。ジョンの部屋のノックの音を聞いて耳を澄ましていたのかもしれない。中からずいぶんいかついスキンヘッドの男が出て来た。顔が怖い。

「す、すみません。隣の方は今日は留守でしょうか?」

「いや。もういねえよ。だいぶ前に出て行っちまったからな。あんた借金取りか?」

「あっいえ。その……探偵です」

「探偵!? へえー初めて見た。もっとこう、オッサンのイメージだったけど。美人の探偵もいるんだな」

 いいこと言うじゃないか。

「どこに行ったかまではやっぱり、ご存知ないですよね?」

「そうだな、挨拶程度だったし。だけどほら、あいつ明らかに外国人だろ? 追い出されたんだよ」

「そうなんですか?」

「ここの新しい管理人はそういう所うるせえからな」

「そうですか。他を当たってみます。ありがとうございました」

「あいよ」

 管理人の差別主義はとりあえず置いておこう。しかし新たに判明したのは、写真が無かったから今まで知らなかったがジョンは見るからに外国人だという事だ。その後二人がどこに行ったか管理人に聞いてもおそらく無駄だろう。だが一つ気になったのは、レイチェルではなくジョンは何の仕事をしていたかだ。アパートを追い出されるくらいだ、仕事にもひょっとして支障が出ているかもしれない。とすると……。

 北区に船の荷物を積み込んだりするような、日雇いの仕事を紹介する施設があるのを思い出した。正反対か、やれやれ。レイチェルの分しか写真が無いからどうなるかは分からないが明日はそこで聞いてみよう。

 やはり鳥は簡単には捕まらないな。

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