第8話 (悪習)定例イベント後
後日、遺族の弁護士という方から電話が来た。
うちの会社を訴えると言ってきた。
電話を終えると部長は不機嫌な顔だった。
ベテラン事務員が話しかける。
「はぁ訴える?どうして?」
「これは明らかな過労自殺だと言っている。
今までのケースからすると裁判したら負けるわな。」
「なんでうちの会社が悪いんですか。おかしいですよ。
死んだのは本人ですよ。私たちじゃない。
勤怠のデータをいじってしまえばいいんですよ。」
「それがな、あの日病院に運び込まれた際にうちの社員と遺族が会ったらしくて話しちゃったんだって。
”3日間(72時間)働かして1日休みっていうシフトを3カ月続けていた”と。」
「それでなんでうちが悪いんですか。原因は別にあるんじゃないですか。」
「当然うちもそう言ったよ。きっと恋人に振られたかして精神的にショックを受けていたんじゃないですかね。最近の若い人はすぐに死んじゃいますからね」
そう言ったところ遺族が激怒した。
「今回のやつらはアタオカ(頭おかしい人)でしたか。
死んでから迷惑かけるって最悪ですね。
まぁ弁護士先生にやっつけてもらいましょうよ。」
事務員は自分は関係ないっと言った感じで話す。
「それがな、最近うち裁判多すぎてこれ以上裁判できないって言われているんだよな。
いったん社長に話してくるわ。社長判断なら弁護士先生も受けてくれるだろう。」
そう言って部長は席を立ち社長室に向かった。
しばらくして部長が戻ってきた。
すかさずベテラン事務員が駆け寄る。
「社長はなんと言っていましたか?」
「社長はどうしちまったんだ。以前ならそんなことは言わなかったはずなんだが。」
部長は困惑しているようだった。
「遺族の言い値で金を払ってやれと、3億でも5億でもいいから払ってやるんだ。
若い命が死んでしまって申し訳ないと思えって言われた。」
「社長も歳ですからね。そのあたりに原因があるんでしょう。」
「はぁ、なんで死んだガキに大金払わなあかんのや。そんなんなら俺のお気に入りの嬢にプレゼントでも買ってやりたいわ。世の中不公平だわ。」
その後遺族から裁判を起こされることなく示談が成立した。
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