第14話 採用詐欺
副部長の思い出話を一つ。
人事担当者に確認して整合性が取れているので事実と判断しています。
ある飲み会でのこと。
副部長は酔っ払っていた。
「副部長って昔は地方の支店にいたんでしたよね。
支店ってどんな業務をしているんですか。」
同僚が副部長に昔の話を質問した。
「そりゃーいろいろよ。本社みたいに管理だけの仕事じゃないからね。
必要とあらば現場にも顔を出さないといけない。
外と中、両方の仕事をやったよ。
本社の人間も支店に異動していろんな仕事をしたらいい。
いい経験になるよ。」
「へぇそりゃ大変ですね。
そういえばうちって採用活動も大変って聞いたことがありますね。
建設会社を志望する学生って少ないですからねー。」
「採用活動もやっていたなぁ。
そういえば失礼なやつが3人いたな。
あの野郎どもにはやられたわ。
ああいうやつはだめだね。社会でやっていけない。」
「どんな子だったんですか。」
「俺が採用したやつなんだが、地元就職がしたいって言っていたからうちは支店もあるから地元就職できるよって言っていたんだよ。」
「それで地元で働けるように3人採用したんですね。」
「そう、採用してすぐに東京に送り込んだ。」
「え?地元で働くって話はどうなったんですか。」
「そんなの守る必要なんてない。新卒なんてなんの権利もないやつらの要望なんて無視だよ。
それにな地方に居たって技術なんて身につかない。
ありきたりな建物ばかりで件数も東京に比べたら少ない。
それなら若い時に東京でバリバリ経験を積んだ方がいい。
俺の親心ってやつだ。」
それを聞いて私は口をはさむことにした。
「親心もなにも約束をたがえたのは副部長の方でしょ。
きちんと説明していたんならまだしも了解を得ずにやるべきことじゃない。」
「俺だって説明したよ。
支店に何回も電話がかかってきていつになったら地元に帰れるのでしょうか。
地元で働けるって約束しましたよねって。
数年はそっちで修業したほうが君のためだって言ってやったらあいつら何したと思う?」
「何をしたんですか?」
「3人同じ日に辞めやがったんだ。
幸い俺のことは詳しく話さなかったみたいで人事のやつらも俺までにはたどり付けなかったがな。
それであいつらを採用した高校から出禁になっちまったよ。」
周りの人は
「災難でしたねー。そういうこともありますよ。」とか
「副部長は悪くない。副部長の親心を理解しないなんて若造なんですよ、親にしつけがよくない。」
と言っていた。
後日人事担当者にこのことを伝えたところ覚えていた。
3人同じ日に退職届を持ってきて驚いていたし話を聞こうにも憮然としていて話も聞けず一身上の都合ということで退職した。
少し前から支店単位での採用活動に効果がでていなかったので本社の人事チームが全国を飛び回ることになり、付き合いのある学校に電話したところ出禁なので来ないで下さいと言われた。
詳細は聞くことができず支店に確認しても知らないとしか回答がなかったので原因不明で気になっていたようだ。
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