第九鋼
なんと、ワルイドの方から接触してきた。
正体不明、居場所も不明、目的も不明のそいつから来てくれたのはありがたい。
正体の察しはついていたが、やはり我々と同じ妖精だった。
ファンシーな外見でえげつない点も実に妖精らしい。
奴はオコジョとカバが合体したような、なんともいえない姿であり、
これはこれで「ブサ可愛い」と評価してくれる人間がいそうではある。
東京征服の目標を掲げているにも関わらず潜伏先は埼玉で、
これまで東京中を駆けずり回っていた自分が馬鹿らしくなった。
怪人を作り出す目的もシンプルだった。
人間の体を取り戻したい。
ワルイドは俺と同じく記憶を消さずにいる転生者であり、
変異させた成人男性たちは単なる実験台だった。
クリーチャー化したのは失敗作で、狙って作り出したわけではない。
彼はかつて軍の兵器開発部門に在籍していた天才科学者らしく、
俺が携わっている“魔法少女作戦”の中枢となる戦士化技術も
このワルイドが発見して実用化されたものらしい。
彼は人道に反する行為はしたくないと拒否したが、
人間界を侵略したい軍上層部はその技術を盗み、
彼を厄介者として抹殺しようとた。
彼からすれば俺は口封じのために送り込まれた刺客だ。
それなのに彼は俺を仲間に引き入れようと勧誘してきた。
東京征服が完了した後は妖精界へ殴り込むつもりらしい。
気持ちはわかるが、テロリストの仲間になる気は無い。
結局彼は人道を踏み外して人体実験を繰り返しているし、
軍の思惑とは関係無しに俺自身が倒すべき敵だと認識している。
妖精界がどうなろうと構わないが、この人間界は守りたい。
「フッ、交渉決裂というわけですね……
貴方には期待していたのですが、残念です
……まあいいでしょう、僕にはまだ策があります
いずれまたお会いしましょう それではごきげんよう──」
そう言い残して彼は瞬間移動でその場から立ち去った。
今回の怪人は今までの相手とは明らかに格が違った。
体長は10メートル以上、手足は8本、羽が生えており、
これまでの“失敗作”のハイブリットといった感じだ。
そして、それは意図的に作り出されたように思えた。
確証があるわけではないが、勧誘を断った俺へのプレゼントだろう。
「──リッチー・ブラックモア!!」
65535度の熱光線が怪人を襲い、跡形も無く消え去った。
おそらく次に奴と会う時は最後の戦いになる。
そんな予感を胸に、焦土と化した新宿を後にした。




