第七鋼
鋼音ちゃんが魔法少女になってから半年が経過した。
彼女の活躍により俺の妖精界での待遇は良くなり、
軍に入隊させられ、特殊部隊の隊長という地位を与えられた。
全く嬉しくない。
俺一人だけの部隊だし、何が特殊なのか説明されていない。
やることは今までと変わらないし、増えたのは責任だけだ。
妖精界は一度滅びた方がいい。
それはさておき、鋼音ちゃんが新しいことを始めたいと言い出した。
どうも自分の活躍を世間に公表したくなったらしく、
配信機材を買い揃えてもいいかという相談だった。
答えは当然NOだ。
これまでに多くの怪人を倒してきたが、
同時に建物への損害も発生している。
自分が犯人ですと白状するようなものであり、
責任問題に発展したら困るのは親御さんだ。
それと、過去に魔法少女になった女性が正体を明かした結果、
碌な人生を歩まずに精神を病んだという話を聞いたことがある。
当時の妖精軍が総出で人間たちの記憶を改竄し、事態は収まったようだ。
そんなことにならないよう、細心の注意を払ってきた。
可能な限り透明状態を維持して活動していたし、
誰かに撮影されないように電子機器を狂わせる工作もしていた。
全然魔法少女らしくないが、これも彼女を守るためだ。
今は納得できなくても、いつかわかってくれればいい。
その日の怪人は久しぶりのクリーチャータイプだった。
といっても人間に羽が生えただけのフォルムだが。
もう見た目だけで判断できる。こいつは飛べる。
そしてやはり彼は空を飛び、そのスピードが凄まじかった。
ソニックブームという現象を初めて生で味わった。
彼はすごく楽しそうで、撮影している女性に手を振っていた。
本人に悪気は無いのだろうが、衝撃波で負傷した人たちがいる。
自分が楽しければ他はどうでもいいようだ。許してはならない。
「鋼音ちゃん、焼却処分だ!」
彼女はまだ少し不機嫌だったが、今は戦士の顔をしている。
これも滝行の効果だろうか。並外れた集中力で敵の軌道を見切った。
「──ルカ・トゥリッリ!!」
32000度の熱光線が怪人を襲い、跡形も無く消え去った。
毎回圧勝しているように思うかもしれないが、実は結構ギリギリだ。
魔法少女になったからといって身体能力が向上するわけではなく、
鋼音ちゃんができるのは妖精エネルギーの圧縮と放出だけだ。
俺はサポートに徹し、断熱の魔法で被害を最小限に抑えている。
そんなわけでこちらには攻撃力しかないので、一発外したら後が無い。
スナイパーのような戦闘スタイルに落ち着いたのも無理はない。
こちらも高いリスクを抱えているのだ。
ビルが消し飛ぶのは、もう必要経費だと思って諦めてもらうしかない。




