第五鋼
人間だった頃の俺は売れないバンドマンだった。
自分が生まれるより前の楽曲ばかりコピーしていたのだから当然だ。
それでもそういうのが好きなメンバー同士で組んだので楽しい時間だった。
いつかはオリジナルを書いてレコード会社に持ち込もうなんて話もしていた。
俺は数少ない女性ファンと知り合い、彼女と交際することになった。
そして半年後、俺は死んだ。
みんなには申し訳ないことをしたと思う。
突然俺が死んで、あいつら悲しんだろうな……なんて考えて様子を見に行ったら、
連中は俺の死をダシに作曲して売れっ子アーティストになってやがった。
しかも死因をはっきり書きやがって……そこは美化しとけよ。
いや、それがウケて成功したんだろうけどさ……。
とりあえず仲間たちは上手くやってるとして、
彼女は今どこで何をしているのかわからない。
思い出の場所を巡ってみても運命の再会とはいかず、
俺はもう彼女を探さないことにした。
あれから10年経っている。
死んだ男のことなんか忘れて幸せに生きているはずだ。
そう自分に言い聞かせて本来の任務へと戻った。
怪人は思いがけない方向に進化していた。
人間の形状を維持しつつ特殊能力を有していたのだ。
相変わらず尻から糸を垂れ流しているだけだが、
なんだか他の行為に見えて汚らわしい。
彼だってこんな風にはなりたくなかっただろう、
せめて速やかに焼却処分してやるのが情けというものだ。
「──ティモ・トルキ!!」
8000度の熱光線が怪人を襲い、跡形も無く消え去った。
そして今回も建物に被害が出てしまった。
オフィスビルが1棟消失したのだ。
もちろん故意ではないことは理解しているが、
このままだといつか人間を巻き込んでしまうかもしれない。
人を守りたくて魔法少女になったのに、
誰かを傷付けてしまっては彼女自身も傷付くだろう。
放出するエネルギーを制御する練習が必要だ。
そう伝えると、彼女は特訓に対してやる気を起こした。




