第三鋼
軍への報告中、俺は何度も叱られた。
与えられた命令は当然こなしているし、
鋼音ちゃんという天才を引き当てたのだから
もっと褒めてくれてもいいんじゃないかと思う。
彼らの不満点は敵の総大将ワルイドの居場所が掴めないことだった。
それは軍の捜索部隊が担当していたはずで、俺には関係無い。
現場にいる俺がしっかりしていないから見つからないと言われた。
もう完全にただの言い掛かりだ。腹が立つ。
あいつらファンシーな見た目で性格がネチネチしていて嫌いだ。
なんというか、俺はまだ妖精になり切れていない。
人間だった頃の記憶を引き継いだまま転生した影響だろう。
長い悪夢を見ているようだ。できるなら人間の体を取り戻したい。
それはさておき、鋼音ちゃんには学校があるので平日の昼間は動けない。
俺はその時間を使って敵の痕跡を調査しているが、今のところ成果は無い。
本来は捜索部隊の仕事だが、なかなか現場に来ないので俺に一任されている。
俺はもう正直、妖精界の平和なんてどうでもいい。
あるのは人間の女の子をいつまでも戦わせたくないという思いだけだ。
今回の怪人も成人男性が変異させられたモノだった。
ワルイドは一体なんの目的でシンクロ率の低い素体を使うのだろう。
興味は湧かないが、それを調査する価値は大いにありそうだ。
まあどうせそれも俺に押し付けられるんだろうけど。
さて、この怪人は今までとは様相が違う。
背中から触手を生やしており、人間らしさが半減している。
むしろこういうクリーチャーっぽい見た目の方がやりやすい。
人間の原型を留めていられると、どうしても罪悪感が湧いてしまう。
見た目こそ不気味だが、動きは鈍くて力も無さそうだった。
せっかくの触手もただ生えているだけであり、地面を引き摺って歩いていた。
「──フレドリック・ノルドストローム!!」
8000度の熱光線が怪人を襲い、跡形も無く消え去った。
初めてのクリーチャー戦で慌ててしまったのか、
鋼音ちゃんの放った熱光線はビルの一部を消滅させたが人的被害は無かった。
これも経験だ。次からは気をつければいい。
固まる彼女をそう宥め、俺たちは急いでその場から退散した。




