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1-85.魔犬(4)

御父様(おとうさま)。遅いです〜」


ミィーファは父親に、笑顔でプンスカすねて見せる。


あぁ、スネる笑顔も、かわウぃね♪


ロービンスン騎士爵の笑顔は、ほどける。


「すまん、すまん。ササキ勇者殿と有益な意見交換が出来てな、つい白熱してしまった」


うん。ウソではない。


「も〜う。今日は、誰が主役ですのぉ?」

クリッとした碧眼(へきがん)で、父親の目を(のぞ)き込む。


うーん、超絶可愛い♪


「うむ。申し訳ない。お詫びに久々の散歩を、親子でしないか?」

彼は、ほどける笑顔のまま軽い口調で提案する。


「嬉しい♪」


あぁ、もう、彼女の明るい笑顔に、ロービンスン騎士爵の表情は、デレっデレだね。

左足を(かじ)られる前は、彼女が、ロービンスン騎士爵家の太陽だったのだろうなぁ。


「では、診察させていただこうかな?」


武良は、親子の仲睦(なかむつ)ましさに苦笑しながら、ベッドかたわらの丸椅子に腰掛ける。


「ササキ勇者様。この『すぱっつ』はスゴイですね。履いたら勝手に私の両足全てを『もこもこ』で隠してくれましたは」


「『使える』でしょう。どうぞ進呈しよう。命じれば『形状』も『色』も『素材』も変えらるからね」


「嬉しい♪ありがとうございます。えと。これも『もーふぃんぐ』素材なのですか?」


「そうだよ」


「わぁ。ササキ勇者様の様に『有能』なのですね♪」


あはははははははは


武良は、おもわず腹から、高笑いしてしまう。


「ロービンスン騎士爵。ミィーファさんの笑顔の『人心掌握(じんしんしょうあく)』には、かないませんな♪」


「そうでしょう♪」

ロービンスン騎士爵は、うんうんと頷く。


「さて、いい加減、真剣に診断するとしよう。では、この『御聖体(ごせいたい)』を食して」

武良の右手に突然現れた半透明の容器から、フチがチョコンと飛び出て居る、白く丸い『御聖体』をミィーファに差し出す。


「は、はい」

ミィーファは言われるがままに、フチがチョコンと飛び出て居る『御聖体』を右手でつまみ、素直に口に入れる。


サク


「あら、美味しい」

すぐに口の中でほどけて、飲み込む。


「……」

武良は、ミィーファの様子を静かに見守る。


「ど、どうされました?」

ややガン見され、彼女はうろたえる。


「何か……頭痛とか、吐き気やめまいはしないかな?」


「えー、特に何もなさそうです」


「良いね。波長が合ってるね。隼、同調率は?」


急に武良の周りに多数モニターが浮かび、表計算やグラフが、明るく浮かび上がる。


『はイ。87%ト、高い同調率でス。すぐにでも、歩けますネ』


「まぁ綺麗な輝き。ササキ勇者様。この綺麗な輝きは、どう言う意味ですの?」


「うん。ミィーファの脳波や思考と、義足の動きを管理する『使い魔』との波長を表して居るよ。二つの波長が、合えば合うほど『自然』に歩けるんだ。もし同調率が悪ければ、しばらく『うまく動かす練習(リハビリ)』が必要になる所だけど」


「よかった」

ミィーファは、良い診断に微笑む。


「では隼、左足の先端を出しておくれ」


『はイ』


『もこもこスパッツ』が勝手に動き、ベッドに座るミィーファの左大腿部(ふともも)の、(かじ)られた先端が、少し出る。


ヴン


その左大腿部が、細かいグリッド(光の網)に包まれる。


すぐに、ミィーファ左大腿部内部スキャン3D映像が立ち上がる。


「わ♪キレイ♪」


『ミィーファ様の生体情報確認。ヴァイタル正常』


「……神経(ニューロン)は、どこまで生きてるかな?」


ニューロン(神経)は……!マスター!これは!』


「うん!わずかに『魔素』が残って居る」


左大腿部内部スキャン3D映像に、大腿骨(だいたいこつ)に残る犬の歯型に沿って、黒い煙の様な影がもやもやと(うごめ)いている。


「……ミィーファ」


「はい」


「……この状態は……ずいぶんガマンしたね。どんな義足にしても、『傷』に当たると、痛かったでしょう。このベッドに寝ていても、ジワジワとした痛みが続いているね」


ミィーファは、はっ、と武良を見る。


「……」

しばし無言だったが、コクンとうなづく。


「君のせいでは無いよ。あらゆる義足が『痛くて』合わなかった……合わなくて歩けなかったのは、この残留魔素(ざんりゅうまそ)のせいだ。『せっかく御両親が、何度も用意してくれた義足を、どれも装着出来なくて申し訳ない』と、気に病む事では無いよ。君のせいでは無いのだから」

武良は彼女を(いつく)しむ様に、優しく微笑む。


その言葉を聞いたミィーファの双眼から、ハラハラと涙がこぼれる。

そして父親と母親に、左手を伸ばす。

両親も左手を伸ばし、三人の左手が重なる。


「笹木武良勇者殿。原因を解明して下さり、誠に……ありがとうございます」

ロービンスン騎士爵の礼を言う声が、()るえる。

メルナ夫人も、ハラハラと涙を流す。


「御礼の御言葉は、もう少しガマン願います。私は『親子四人で散歩』を御約束したのですから」

武良は、暖かく微笑む。


「では、とっとと『魔素』を払ってしまいましょう。タム」


「はい?」ナンでココで俺が呼ばれる?と言う表情をする。


「タムも、『パル』と同化して居る限り、基本魔法が使える。もちろん治癒魔法もだ」


「は?え?じゃぁ?」

タムはイヤな予感に、顔を引きつらせる。


「そうだ。タムの治癒魔法で、この魔素を払ってくれ」


「「「……」」」


タムに期待と不安の混ざる、両親と妹の視線が集まる。


「心配するな。魔法式はパルが起動する。しかし『タムの『癒そう』と言うイメージ』が『存在しないと』発動しない」


「えと……どうすれば(よろ)しいでしょうか?」


キリッ


妹のためにと、腹くくった真剣な表情をする。

うん。畜生(チクショー)、イケメンだね。


「そうだな……基本は『痛いの痛いの、飛んでいけ〜♪』だよ」


「は?」

タムのキリッとした表情は、思いっきり戸惑(とまど)う。


「ん?タムも幼い頃、転んだ時とか、母上にしてもらわなかったか?」


「……あ……」


タムはおもわず、実母メルナを見る。

メルナは少し(ほお)を紅くして、息子に微笑み返す。


「または……ミィーファがヨチヨチ歩きの時、転んだらどうしてた?」


「……抱き上げて、ヨシヨシしてやりましたね」


タムはミィーファに視線を移し、苦笑ぎみに微笑み、(ほお)を少し赤らめる。


ミィーファの顔も、ほんのり赤らむ。


「ようし。ではタム。両手の平を胸の高さ位で合わせておくれ」


「こ、こうですか?」


彼は胸の高さに合掌(がっしょう)する。


「うん。では、そのまま少し、手の平を離す」


「こう、ですね」


「そう。そしてその両手で幼い(ミィーファ)さんを、ヨシヨシして上げた情景を思い出してみな」


「はい……」


ぼわ


タムの両手の間に、淡く青白い光の(オーブ)が生まれる。

ちょうど五百円硬貨くらいだろうか。


確かに『聖なる癒しの光』だ。


「いいね。そのまま、(ミィーファ)さんの傷口に、光を当てて」


「はい……」


彼はベッドに近付き、ゆっくりと(ミィーファ)の傷口に『聖なる癒しの光』を、押しやる。

『聖なる癒しの光』は、すぅっと、傷口に吸い込まれる。


「あっ!」


ビクンッ!


ミィーファの左大腿部は、打ち上げられた魚が、跳ねる様に動く。


「よし。聖魔法の『聖素(せいそ)』が、魔素に(おお)(かぶ)さり、魔素の対消滅(ついしょうめつ)を始めた」


左大腿部内部スキャン3D映像の、犬の歯型にもやもやと(うごめ)く黒い影に、聖なる光がスッポリ覆いかぶさる。


「あっ!やんっ!」


あー。神経も同時に再生させてるから、感覚もいじられるか。痛みじゃなくて、むず(がゆ)いだろうねぇ……


「あん!やん!」


けっこう(つや)っぽい声になっちゃうな。ちとマズイな。


隼。神経ブロック。


武良は、誰にも聞こえない、脳内会話で命ずる。


了解ス。


「……あれ?」


急にミィーファは、紅く上気した顔をあげる。


「大丈夫かい?」


「は……い……その、急に『(かゆ)み』が無くなって……」

ミィーファは、グッタリとしなびた表情で答える。


「うん。神経が再生される時に感覚も再生しちゃうから、むず痒かったよね。ごめん。先に感覚をブロックさせて置けば良かった」


「いえ、その、もう『痒く』無いので大丈夫です」


「良かった。さて、もう少して『浄化』が終わるよ」


ミィーファの左大腿部内部スキャン3D映像では、『聖素』の光がスッポリ覆いかぶさった黒い影は、みるみる小さくなって行く。


『……5、4、3、2、1、浄化終了』


「よし。では、義足を装着しましょう」


「……え?あの……義足はどこですか?」

ミィーファは思わず、手ぶらの武良の周りをうかがう。


「今から『作る』よ」


全員の頭上に、?マークが乱立する。


「すみません、武良様。意味がわからないです」タムが問うて来る。


「えとね。ミィーファの生身の右足のデーターをスキャンして、その右足データーを、反転させて左足義足の参考にするのさ」


しかし全員、武良が『何を言っている』のか、理解出来ていない様子。


「『(ろん)より証拠(しょうこ)』だね。じゃぁ隼、ミィーファ右足データーを、スキャン」


『スキャン・マッピング開始しまス』


ミィーファの右足に、スキャン・マッピングの光の網が広がる。


『スキャン終了』


武良の目の前に、マッピングの網で型どられたミィーファ右足が浮かぶ。


「これが、靴で言えば木型に当たる。では、反転!」


3Dマッピングのミィーファの右足は、クルリとひっくり返り、左足になる。


「さて、ミィーファの左足に着けるよ」


武良は右手で、中に浮かぶ3Dマッピングの左足の映像を、ミィーファの左大腿部に導く。

左足の映像は、彼女の左足へ、ピッタリ収まる。


「「「「ほおおおおお」」」」


武良以外、感心の声をあげる。


「微調整はどうかな?」


『整合性、百パーセント』


「よし。では、レプリケーション(複製)!」


3Dマッピングの左足映像を元に、みるみるミィーファの左足が『再生』されて行く。


レプリケーション(複製)完了』


「「「「おおおおおお」」」」


そこに見た目も『自然な生足』のミィーファの左足が、ある。

たとえ『動かない』義足だとしても、生足の再現度は『最高級品』だろう。


もうロービンスン騎士爵とメルナ夫人の両目は、うれし涙があふれ出そうだ。


「まだです。『最後の仕上げ』が必要です。仕上げに入る前に……メルナ夫人、ミィーファの右手を握って下さい。ロービンスン騎士爵は左手を」


「「は、はい」」

メルナ夫人は、すばやくベッド右側に回る。

夫妻は素直に、ミィーファの両手を、それぞれ握る。


「ミィーファ」


武良は、真剣な表情で、ミィーファに語りかける。


「はい」


「最後に、ミィーファの神経と、新しい左足の神経をつなげる」


「はい」


タム(兄様)の『着る甲冑』とは異なり、義足とは『直接神経を、つなげる』。神経がつながる事により、義足は『本当の足と同様』と成る……しかし『つなげる処置の間』ミィーファの神経は『激痛』を感じる。残念だが、激痛に対して『神経ブロック』をして痛みを消すと、処置後の神経伝達の数値が『よろしくない前例』が多いんだ。よってミィーファには、しばし『激痛』に、耐えてもらう」


ミィーファの唇は、強く引き締まる。


ごくり


ミィーファの喉が、ひとつ鳴る。


こくんと、決心した様に、うなづく。


「さぁ。これを口にくわえて」


武良は、ミィーファの口元、に白いハンカチを差し出す。


彼女は無言のまま、武良の指までかじりそうな勢いで、ハンカチを深く加える。


「御夫妻。しっかりと支えてあげてください」


ロービンスン騎士爵夫妻も、腹を決めた様に、うなづく。


「ミィーファ。私の合図で、処置を始めるよ」


武良は、ミィーファと視線を合わせる。

ミィーファは、強く視線を返してくる。


「『接続』!」


ビクン


んー!


ハンカチの中での絶叫とともに、ミィーファの身体は強く緊張する。


んー!


彼女はハンカチを強く噛み締め、痛みに耐える。

しかし激しく、もだえる。

彼女の全身は、一気に冷や汗が吹き出る。

両親の手を握る両手も、思いがけなく強く握る。


『神経シンクロ進捗(しんちょく)五十八%。順調にシンクロ中』


んー!


マスター。ミィーファ様に失禁(しっきん)兆候(ちょうこう)あリ。


隼が、他者に聞こえない、脳内会話で報告してくる。


さっきの御聖体で『侍』クラウドと、彼女(ミィーファ)はリンクできてるよな?尿はすぐ転送せよ。


んー!


転送終了。失禁回避(しっきんかいひ)


継続観察(けいぞくかんさつ)で、彼女の生理現象に、適宜(てきぎ)対応せよ。


了解『神経シンクロ進捗八十九%』


全員が認識出来る様に音声に切り替えた隼は、報告してくる。


『十、九、八、七、六、五、四、三、二、一、シンクロ百%!』


はぁ


ガクン


急に激痛がおさまったミィーファの上半身は、彼女のため息と共に、操り人形(あやつりにんぎょう)の糸が切れた様に倒れこむ。


両親はあわてて両側から、娘を支える。


ミィーファに握られて居た二人の手には、ミィーファの爪痕から、紅い血が、ひとすじ流れて居た。


タムがすばやく近寄り、覚えたての『治癒魔法』を、両親の傷にかけて行く。


「はぁ、はぁ、はぁあぁぁぁ〜痛かったあああぁ。御母様〜」

ミィーファは思わず、傷の治癒した母親に、すがりつく。


「ミィーファ」

ロービンスン騎士爵は、何かに気が付き、思わずつぶやく。


「まぁ!ミィーファ!」

メルナ夫人も、夫の視線の先の意味に、気が付く。


ミィーファの新たな左足は、ミィーファの身体の動きに合わせて、膝や足首や指の関節が『自然』に動いたのだ。


「うん。動きは良いね。末梢神経まで、問題無くつながりました」

武良は満足気(まんぞくげ)に微笑む。


ミィーファは思わず、左手を左膝に当てる。

「……感じる……左足で……左手が左膝に当たってるのが、わかる……」


汗だくの中、ミィーファは泣きながら、微笑む。


「そうだ。ミィーファに紹介しないと」


「えぇ〜。また新たな紹介者ですかぁ〜。本日はもうカンベンしてくださいましー。もうヘロヘロですぅ〜」

新たな左足が再生した件は嬉しいが、激しい痛みの本流に体力も気力も使い切ったテイのミィーファは、母親にグッタリ寄りかかったまま答える。


「それは大変。だけど、もうミィーファの側に居るよ」

武良は、イタズラ小僧っぽく微笑む。


「!」

賢いミィーファは、兄様のパルや武良勇者様のハヤブサの、使い魔達の事が、脳裏に(ひらめ)く。


「では、この左足にも使い魔が?」


「うん」


『初めまして。ミィーファ様』

ミィーファ様にしか聞こえない、脳内会話も出来ますよ♪


音声の挨拶に続いて、秘め事をささやく(おさな)げな女の子の声が、ミィーファの脳内に響く。


「まぁ♪この左足の中に、居るのね」

秘密(しみつ)の脳内会話!それは……嬉しいかも♪


『それでミィーファ様。私にはまだ、名がありません。名付けていただけませんか?』


「え!私が?」

ミィーファは、思わず武良を見る。


武良は微笑みながら、頷き返す。


「えー♪どうしましょ。えーと(!)じゃぁ……」

ミィーファは、何か思い付いた様に、表情を引き締める。


「『ミクリエ』と、名付けますは」


「「「!」」」

両親と兄の表情は、一気に引き締まる。


「……タム。なぜ緊張を?」


「……ミィーファの、左足を食い千切った『魔犬の名』です」

タムは、やや渋い表情で答える。

魔犬に『刺した感覚』も、思い出したのだろう。


御兄様(おにいさま)。確かにミクリエは、魔犬に成ってしまいましたが、それはミクリエのせいではなくて『瘴気溜まり(しょうきだまり)魔素(まそ)のせいだ』と、おっしゃいましたよね。あの後、御兄様は、そう慰めて下さいましたは」


「……まぁ、そうだが……」

タムは、妹の鋭い指摘に、シブシブ同意する。


「じゃぁ、ミィーファ。ミクリエの姿形を、覚えているかな?」

武良は、問いかける。


「はい」

ミィーファは反射的に、ミクリエの愛らしい姿や仕草を思い出す。


『ミィーファ様』


ミィーファの座っているベッドの上に、テディベアとトイプードルを合わせた様な『可愛い仔犬(こいぬ)』が、ちょこんと現れる。


「「「え!?」」」

両親とタムは、急に現れた仔犬に戸惑う。


「ミクリエ!」

しかしミィーファは、すぐさま抱き上げる。


「あぁ、ミクリエなのね!」

愛おしそうに、ほおずりする。


『はい、ミィーファ様』

仔犬らしく、ペロリと彼女の頬を、ひと舐めする。


「えと。ミクリエがしゃべってると言う事は、左足の中の『使い魔』さんが、しゃべって居ると言う事かしら?」


『はい。タム様(おにいさま)の『飛び出す甲冑(パル)』と同じです。御邪魔(おじゃま)な時は、いつでも(かく)れます』


「だめ!ずっと側にいて!」

再度、抱きしめる。


『ぐふっ……み、ミィーファ様の、思召(おぼしめし)のままに♪』

強く抱きしめられて、肺から息を押し出されながら、ミクリエは答える。


「ロービンスン騎士爵」

武良は、嬉しさに放心して居る彼に、話かける。


「は、はい?」

突然な話しかけに、彼は涙で赤い目のまま返答する。


「御約束を果たしましょう」


武良は、ベッド下にある可愛いスリッパをだす。

多分、ミィーファのものだろう。


「さ、ミィーファ。ミクリエを下ろして、立ってごらん」


「え?あ!はい!」

ミィーファはあわてて、かつ、そっとミクリをベッド上に下ろす。

そして彼女は、恐る恐る左足から両足を下ろし、スリッパに両足を入れる。


そのまま、ゆっくりと両足に体重をかける。


不安げに父を見上げ、左手を差し出す。


ロービンスン騎士爵は、目を潤ませながら、娘の手を取る。


「えいっ」


ミィーファは、父に支えられた左手を頼りに、一気に立ち上がる。

彼女は……まっすぐ、立ち上が……れた!


「……立った……ミィーファが、立った!」

ベッド向こうで、メルナ夫人は喜びの嗚咽(おえつ)を漏らす。


「……御父様(おとうさま)

ミィーファは微笑み、目線が上の父を見上げ、見つめる。

彼女の宝石の様に美しい両碧眼から、涙があふれる。


「ミィーファ……こんなに背が伸びたのだな……」

ロービンスン騎士爵も、娘の上に流れた(とき)を思い、両目から涙を流す。


「御父様!」

ミィーファは、自分から父に抱きつく。


「ミィーファ!」

ロービンスン騎士爵も、成長した娘を抱き締め返す。


「ミィーファ!」

ベッド向こうから回って来たメルナ夫人は、夫の手の上から、娘を抱きしめる。


御母様(おかあさま)

ミィーファも泣きながら、背中の母のぬくもりに返答する。


ふと見ると、タムも碧眼の両目から、涙を流している。


武良は、見て見ぬふりを決めた。


見捨てずに御読みいただき、ありがとうございます。


次回は、10月24日に投稿予定です。


宜しく御願いいたします。

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