表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/87

1-84.魔犬(3)

コンコン


「ミィーファ。入って良いかしら?」


「はい、御母様。どうぞ」


ガチャ


先ずは母親だけ入室する


「おはよう♪ミィーファ」


「おはようございます」


ギシ


どうやら、ミィーファのベッドのフチに座った様だ。


「ミィーファ。あなたにプレゼントよ♪」


「わ♪なんですか?♪」


「どうぞ、お入りなさい♪」


武良は身振りで、タムだけ入室するように促す。


「ミィーファ♪」


タムは、妹の名を呼びながら、入室する。


「わぁ!お兄様!♪いつ御帰りに?」


ミィーファは、大好きな兄に再開できて、とてもうれしそうだ。


「今朝だよ」

タムは『キラッ』とイケメン笑顔を、妹に向ける。

そのイケメンさに『イラッ』と来るかも。


「お兄様。教会衛兵隊の制服を、初めて拝見しましたは♪。白地に金糸の刺繍が、とても素敵デスね。似合ってますね」


妹は兄の晴着(はれぎ)に、誇らしげに微笑む。


「おう、ありがとう。そう言えば、前回ココにくる時は甲冑だったなぁ」


「「そ〜う。スゴーく汗臭くて」」

母娘(おやこ)の声が、ハモる。


「オイッ!しかし、もう、汗をかかないんだぞ!」


「え?でも。甲冑着なくて、魔物と戦えるのです?」


「えーと」

(武良様。バトル・アーマーを、家族に見せちゃってよいですか?)


(許可する)


(ありがとうございます)

「今は『飛び出す甲冑』を、身に付けているのさ」


「え?『飛び出す甲冑』?」


ミィーファが、首を傾げる。


「よし。パル。装着!」


カシャカシャカシャカシャ!


タムの全身は一瞬で、白地に金色装飾の、バトル・アーマーに覆われる。


「「まぁ!」」


ミィーファと母親メルナは、驚きの声をハモる。


カシャ


タムはヘルメットだけ、収納する。


「ほらね」


タムは首から上を、むき出しにして、驚く妹に微笑む。


「うわー!スゴい!!」


「えーと、パル。鎧だけで、私の横に立てるかな」


『可能です』


「では、してくれ」


『はい』


カシャカシャカシャカシャ

鎧すべてのパーツがタムの隣に移り、首無しの状態で自立する。


「わぁ。鎧だけで、動くの!?」


「あぁ。自立型のゴーレム鎧だからね」


タムは(すごいだろ)とばかりに胸を張る。

いや、君が作ったワケでは無いよね。


『初めまして。ミィーファ様。私はこの鎧の中に居る『使い魔』で、パルと申します。タム様の御世話をさせていただいて居ります』


首無し状態の白い甲冑(パル)は、ミィーファへ『執事の様に』一礼する。


「うわうわ!しゃべるゴーレムなの?あ!パルさん、初めまして!」

ミィーファの頬は興奮に、紅く上気(じょうき)しはじめる。


『どうも……うーむ『首無し』では、どうにも()まりませんね』


カシャ


パルは、ヘルメットをだす。


『うん。これで話しやすいですね』

パルは可愛く、小首をかしげる。


「パルさん。お兄様を御護り下さり、ありがとうございます」


ミィーファは素直に、パルに一礼する。


『ただのゴーレムに、もったいない御言葉を、ありがとうございます』


パルは再度、うやうやしく一礼する。


(さて、そろそろ紹介してくれるかな?)


(はい)「でな。今日は、ミィーファに紹介したい御方が、いらしてる」


「え?私に?」


「そうだ。この『飛び出す甲冑』ゴーレムを、制作された方だ」


「まぁ。こんなに高性能のゴーレムを作れるなんて、御客様は第一級の魔導技師様かしら?」


「うーん……はるかに超えて居られるよ♪では、笹木武良勇者様、御入り下さいませ」

タムは武良の『凄さ』を思い出しながら、苦笑してしまう。


「えぇ!勇者様!?」


ミィーファは『ナンで私なんかに勇者様が?』と、驚きの声をあげる。


「失礼します」


武良は、気さくに微笑みながら、ミィーファの私室に入室する。

あとからロービンスン騎士爵も続く。


淡いピンク系の可愛いらしいベッドに、大きなクッションを背もたれに、十代なかばの可愛らしい美少女が座って居る。

カヤネと同年代だろうか?


「やぁ、ミィーファ。笹木武良と申します。よろしくね」

武良は気さくな笑顔で、ミィーファに話しかける。


ミィーファから、その笑顔にホッと安心した様に、緊張のほぐれた笑顔がこぼれる。

が、微笑みのままに表情を引き締め、座ったままで武良に一礼する。


「初めまして。ササキ・タケヨシ勇者様。座ったままの御無礼を、失礼致します」


見かけによらず、キチンとした挨拶が帰って来る。


「はい、初めまして。ミィーファの事情は、すべて聞いています。だから私は、貴女に会いに来ました」


「え?」

彼女は、キョトンとした表情をする。


「貴方に義足を、進呈したい」


「え?!」


カヤネは思わず、兄と母親と……ゴーレム甲冑の『パル』に、視線をさまよわせる。


そして……期待と不安のない交ぜな表情に成る。


『ミィーファ様。笹木武良勇者様は、われらの世界では医師免許も取得されて居りまして。貴女様の様に『不都合な状況』に(おち)いってしまわれた方々に、私の様なゴーレム技術を応用し、健常者様方と遜色(そんしょく)ない義手・義足を装着されて来られました』

パルは、ベテランの執事の様に右手を胸に当て、少し頭を下げ、上品に説明する。


「まぁ……わたくしも『パル』さんと同じように、歩ける様に成れますの♪」


『ハイ。保証致します』


パルは彼女に、うやうやしく一礼する。


ミィーファは笑顔のままに、パルの『左足』に視線を送る。

一瞬、彼女の表情が曇る。


武良は、彼女の視線をたどり、パルの左足を見る。


「あぁ。たしかにパルの左足は『ゴツい』ね。ゴツいのは、兄様(タム)の足が入り、防御するためだから。大丈夫。貴女に贈る義足は、見た目も『貴女の生身の右足』と全く同じ様に成るよ」


武良は、細やかに説明する。


「……本当ですの?」

まだ、微妙な表情のままだ。多分コレまでの『いかにも義足』な、義足のせいだろう。失望の連続だったに違いない。


乙女心だねぇ。武良は、苦笑する。


「そうだ。『(ハヤブサ)』入っておいで」


『はイ』


入り口から『十代なかばの女の子』の様な声の返答があり、『(ハヤブサ)』が入室して来る。


「「「えっ!?」」」


まさしくミィーファと同年代の……女の子の服装をしたゴーレム(アンドロイド)が、現れた。


いや、『銀色の肌の色』以外、姿形はミィーファの生き写しだ。


(((どういう事だ?!確かに、さっきまでは『男の子』だったはず……)))


ミィーファと武良以外、その変化に戸惑いを隠せない。


「まぁ♪」ミィーファの表情は輝く。


自分の『歩く姿』を、鏡を見ているように感じられたからだ。


左足の動作も姿も、全く『自然』だ。これなら義足と判らない。

ゴーレムは義手・義足の技術力の(かたまり)なのだから。


ミィーファは一目で納得し『自分が歩いている姿』を想像でき、早く装着して欲しいと願う。


「皆様には驚かせてしまいましたな。このゴーレムは『モーフィング素材』と言う『変幻自在に変形出来る素材』で構成されております」


「「「ほおおおお」」」


「先程ミィーファさんの姿と形を『転写(コピー)』させて頂き、このゴーレム(アンドロイド)に写させました」


『初めましテ。ミィーファ様。『(ハヤブサ)』と申しまス。勝手ながら御姿を『転写(コピペ)』してしまイ、失礼致しましタ』


ミィーファは隼を、ジッと見つめる。

そして手招きする。


隼は、素直に近付く。


ミィーファは近い左手を、隼に差し出す。


「ハヤブサさん。握手していただけますか?」


『喜んデ』


二人は左手どうしで、握手をする。


「……柔らかい。暖かい。うん。人族と、おんなじ」

ミィーファは確認するように、うなづく。


「では。ミィーファさんの肌色と、合わせましょう。隼」

武良は、うながす。


「え?」


隼の銀色の肌色は、ミィーファと握手をしている左手から、ジワジワと変わって行く。


あっという間にそこには、座って居るミィーファと、立っているミィーファが居る。


「「「おおお」」」


ロービンスン騎士爵夫妻も、兄のタムも、二人の間を交互に視線をさまよわせる。


二人がグルグルとダンスを踊れば、どちらがどちらか、肉親でも判別不能だろう。


「さて。もう一つ、見せる事が有ります」


「え!?」


「勇者様。まだ有るのです?」


「隼。五歳、成長せよ」


『はイ』


ジワリ


「「「え!」」」


ジワリ


「「「ええ!」」」


ジワリ


「「「えええ!」」」


ベッドに座る中学生位のミィーファは、いつ間にやら高校生位のミィーファと握手して居る。


母親のメルナと違った、ゴージャスな超絶美人が、そこに居る。


「……」


ミィーファは、ポカーンと口を開けて、将来の自分と見つめ合う。


「……隼。同調解除」


『はイ』


ジワ〜


あっという間に小さく成り、当初の少年の姿に戻る。


「……はわわわ……」


ミィーファは、口を開けたまま、固まる。


彼女と隼は、握手をほどく。


『ミィーファ様。私達は『いかなる事態』にも対応出来るように『作られた』ゴーレムなのでス。この位は『朝飯前』なのですヨ……なので義足は、ミィーファ様の御成長に(ともな)い『形や大きさ』を変えられまス』


『実は、私もそうです』


タムの隣に立つパルが、甲冑から、ジワジワとモーフィングして行く。


そこには、タムが二人に成る。


「「「……」」」


武良以外、ポカーンと固まる。


「申し訳ない。少し脅かし過ぎましたね。ではミィーファ」


「はい!」彼女は急に武良に話を振られ、我に帰りビックリする。


「私の作った『義足』を、装着して見てくれますか?」


「はい!ぜひ!是非とも、御願い致します!」

ミィーファは『何か?』を決心した様に、勢い良く身を乗り出す。


「よかった……『侍』の理念の一つに、『発想は、融通無碍(ゆうずうむげ)(何ものにもとらわれることなく自由である・こと(さま))であれ』と、有ります。『人族と科学技術』は『融通無碍』に、より添え合えれば良いなと」


「「「……はぁ……」」」


ミィーファは武良の言葉にウットリして居るが、その他はすっかり魂をぬかれて、放心状態に(おちい)る。



◯ ◯ ◯



「ではメルナ夫人。娘さんにコレを着せて上げて下さい」


「はい……えーと?」


メルナ夫人は、渡されたモノを広げて戸惑う。


膝上までの、スパッツだ。


この世界で下着は、男性はパンツ。女性はドロワーズである。


「これは……ドロワーズの様な扱いで宜しいでしょうか?」


「はい。診断し易いので御願いします。用意出来ましたら、呼んで下さい」


「かしこまりました」


スパッツを母親に任せると、男性陣は退出して行く。


廊下で、武良とロービンスン騎士爵は、二人だけで立つ。


「ところで、ロービンスン騎士爵」

武良は、さり気なく声をかける。


「はい」

ロービンスン騎士爵は、武良製造の義足の思わぬ高性能に、期待にふくらんだ笑顔を返して来る。


「今回の魔族案件……『人為的な作為』が、疑われて居られるそうで」


「!……」

ロービンスン騎士爵の表情は、一瞬で青くなり愕然(がくぜん)とする。


勇者(わたし)の専門は『魔族』です。が……今回の様に『魔族の悪意』でさえ、私利私欲の為に利用しようとする『人族の悪意』が加わるとしたら……増幅される『瘴気(しょうき)』は、目も当てられません。早期に『瘴気の元の人族』を、見極めたいモノです」


「……お恥ずかしながら、その『瘴気の人族』は、私の兄と弟です」

彼の(ひたい)に、冷や汗がつたう。


「……心中、御察しいたします」

武良は、少し一礼する。


「……人族の限界なのでしょうか。惣領(そうりょう)として、『家』を粛清せねばならない事は自覚して居ります。しかし幼い頃、兄弟三人で仲良く野山で遊んだ思い出が……しかし私が惣領に指名されてから、兄と弟は、一気に歪みました」

ロービンスン騎士爵は、寂しげな苦笑を浮かべる。


「……」


「……メルナの事も……我々は普通の男女として愛し合って居ります。が、兄と弟は、二人で『メルナを共有』しようとして居りました。彼等は、お互いが気に入った女性を、共有する愛人とする性癖があるのです……断固として、許せません」


「……確認ですが『魔族崇拝結社まぞくすうはいけっしゃ』の件は……」

ロービンスン騎士爵の表情は、急激に引きつり、視線をそらす。


「……御兄弟への探索中に、情報をつかんでしまいましたな」


「……」

ロービンスン騎士爵は、口を硬く閉ざし、視線はそらしたままだ。


「残念ながら状況は、貴君の手に負えぬ事態に(おちい)りました。この厳しい『魔節(ませつ)』の状況で『自ら進んで魔族と結ぼう』という(やから)は、勇者(わたし)は断固として見逃す訳には行きません……」


武良は、ロービンスン騎士爵の横顔を、ぐっと見つめる。


「……われらが魔族結社を『取り締まり時』に『偶然』御兄弟が『その場に居合わせ』……われらが『成敗してしまった』折りは……お目こぼしを頂ければ……」


「……」

ロービンスン騎士爵は視線をそらしたまま、無言で、わずかに頷く。


武良は深く、ロービンスン騎士爵に一礼する。


すっとタムが、二人から少し離れた場所に、無言で立つ。


「……準備出来たかな?」


タムは、無言で頷く。


「では……」


「ササキ・タケヨシ勇者殿!」

ロービンスン騎士爵は、うって変わり、強い視線で激しく詰問(きつもん)してくる。


「はい」

武良は、フワリと受け止める。


「貴殿の『無償の奉仕』を、重ねる目的は何か!?」


「目的……は、タイ・クォーン教会や勇者が『魔族結社』よりも、『魔族から確実に命を守ってくれるぞ』と、人々の『信用・信頼を得ること』ですね」

武良は、サラリと答える。


「……」

それで!?と、ロービンスン騎士爵は(にら)んでくる。


「そして『正々堂々と努力した者』が、公平に正当に評価される風潮を、確立したいですかな」


「……正々堂々と……」

ロービンスン騎士爵は一瞬、とまどう。


「はい。ロービンスン騎士爵も、正々堂々と努力した結果、惣領に選ばれた訳です……御兄弟の行為は『逆恨み』です」

武良は、キッパリ断定する。


ロービンスン騎士爵は『ハッ』とする。

そのまま深く、自問自答を始めた様子だ。


「さ、ロービンスン騎士爵。娘さんがお待ちかねでしょう。久々に、娘さんと御庭を御散歩していただきましょう」


武良は、優しく微笑み、彼を(うなが)す。


「……ササキ殿のその『人たらし』な笑顔。その誘惑には、魔族より恐ろしさを感じますな」

ロービンスン騎士爵は、皮肉るように苦笑する。


「『人心を集める』……それも、勇者の役割かと」

武良は、悪い笑顔をする。


しかしロービンスン騎士爵は、その『悪い笑顔』に『頼もしさ』を感じる。


一己の人間に、善意もあれば悪意もある。

教会関係や聖職者等の『綺麗事』や『建前』だけでは、物事は進まない。

ましてや『魔節』である。

教会で徳を積む前に、殺されるかもしれない。


この笹木武良(勇者)には、善だろうと悪だろうと『丸ごと』飲み込める、懐がデかい(おとこ)を感じる。


ためらいなく目の前の『本質』を、つかみ取れる(おとこ)は、信用出来る。


「なるほど!……これは一本、取られましたな」

ロービンスン騎士爵は、晴れやかに微笑む。

そしてスッと姿勢を伸ばし、正々堂々とした態度で、娘の元に向かう。


御読みいただき、ありがとうございます。


次回投稿は、10月17日(月)の予定です。


宜しく御願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ