表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/87

1-83.魔犬(2)

「どうぞ、この資金でツェール畑を復旧し、来年もツェール果実水とツェール果実酒作りを、永続させて下さい」


「「「……」」」


?。なぜだろう。ロービンスン騎士爵夫妻と、タムの動きが『(かた)まる』

しかし視線は、六本の金塊(インゴット)から外れない。


コンコン


「……あ。はい、どうぞ」

ロービンスン騎士爵夫人メルナは、反射的に応答する。


ガチャ


『失礼しまス』


入って来た人物を見て、ロービンスン騎士爵夫妻は、再度『固まる』


「あぁ。彼は『(はやぶさ)』と言いまして、私が制作したゴーレムであり、使い魔です」


十歳位の男の子のアンドロイドは、武良の隣まで進み、そこに立つ。


顔はイカにもアンドロイドだが、白い生地のポロシャツと半ズボンに、タイ・クォーン教会の紋章の入ったベストを着せた。


まぁ、教会ではこの位の子供達が、こんな制服を着て、諸々の『手伝い』をして居るからね。この形態なら、警戒心を抱かせないだろう。


「では、ロービンスン騎士爵。お納め下さい」


『隼』に気を取られていたロービンスン騎士爵は、ハッ!と、改めて『金塊(インゴット)』の事を思い出した様子だ。


「「……」」


パクパクと夫妻の口は動くが、言葉は出て来ない無い。


「……あのう」


「?どした、タム」


「……これは、もしかして『金』なのですか?」


「そうだが。『金』を見たことないのか?」


「いや。その〜『金貨』なら、父が『ツェール果実酒』の大取引して居る時に、見たことがあります。が、こんなに『でっかい金』は、生まれて初めてです」


武良が、ロービンスン騎士爵に視線を向けると、夫婦で『うんうん』と、高速に何度もうなずく。


つまり、『あつかった事が無い金額』なのか?

だから、思考停止して居るのかな?

ふぅむ。どうするか。


『武良勇者様』


隣に立つ『隼』が、声をかけて来る。


「うん?」


『お金の事ハ、こちらの専門家に質問されるとよろしいのでハ?』


「そうだな」


鑑定眼を持つカヤネ・ロムダンには、『侍』クラウドとつながるブレスレットを渡してある。

そのブレスレットをイメージし、念話を送る。


『え?え?!この呼び出し音は何?え!?笹木武良勇者様なの?』


「やぁ、カヤネ。笹木武良です。ロムダン殿は近くに居るかな?」


『は、はい!父は書斎に居ります。ちょっとお待ち下さい』


パタパタと廊下を、小走りに移動する音が聞こえる。


トントン


(はい)


御父様(おとうさま)!笹木武良勇者様より、御連絡です!』


(はい?まぁ、入りなさい)


『失礼します』


(ガチャ)


『おう、カヤネ……で、笹木様の御手紙は?』


『いえ!えーと……このブレスレットから、笹木武良勇者様からの御『声』が聞こえて来るのです!!』


『え?』


「もしもし。ロムダン殿。笹木武良です」


『え!?あ!確かに笹木様の声ですな……笹木様の世界の技術ナノですか?』


「そんなところだ。で、あー。現在の二人の服装は、どんなかな?」


『は?はい。営業時間なので、二人とも制服姿ですが』


「じゃぁ映像を映しても、大丈夫だな。では、隼」


『はイ。立体映像による、相互通信を始めまス』


ヴォン


マクとカヤネの、立体映像が立ち上がる。


カヤネは左手のブレスレットを、父親マクに腕時計を見せるように、上げている。

相変わらずカヤネは、制服には『着られている』様だ。

マクも制服姿で立ち、カヤネの左手の時計を、覗き込むようにして居る。


「こんにちは。マク殿」


『『えっ!?』』


マク・ロムダンとカヤネ・ロムダンは、弾かれた様に、武良を見る。

マクと、ソファーに座っている武良と、目が合う。


『……えと。目の前に存在して居る様に見えますが……?』


マクが、目をパチクリして、うかがって来る。


「そう。立体映像の動画データを『相互通信』して居るんだ。これなら、お互いが遠くに離れて居ても、顔を合わせて話し合いが出来る」


『……はぁ。笹木武良様の世界は、何でもアリなのですね』


「ははは。突然申し訳ない。ちと専門家の知恵を借りたくてね」


『承りましょう』


商売人として、動揺を立ち直らせたマクは、武良に向き直り姿勢を正す。


「ロムダン……公認両替商殿?なのか?」


ロービンスン騎士爵は、急に現れた知り合いに驚き、恐る恐るマクに声をかける。


『これは、ロービンスン騎士爵。メルナ様。笹木武良勇者様と、御知り合いでしたか』


「え。ロービンスン騎士爵とも、顔見知りなのかい。サスがだね」


『はい。商売柄(しょうばいがら)『顔が広い』事が重要です』


「なるほどね。えと。聞きたいのは、ロービンスン騎士爵の『ツェール』畑が、魔物に潰されて、今季の収穫・収入源が無くなってしまったそうなんだ。そこでこのインゴットを渡して援助しようとしてるのだけど、御夫妻は『どうして良いか』わからない様子なので、公認両替商殿に知恵を借りたい」


『あぁ、なるほど』


マクは、テーブルの上の六本のインゴットを見て、納得の表情になる。


『笹木武良勇者様に、少し苦言を提言させていただきます。『金の暴力』は相手を見て行いませんと。その金額はロービンスン騎士爵様が、周りから、強い『嫉妬』を受ける額です。貴族間の『嫉妬』や『足の引っ張り合い』は凄まじいモノがあるのです。ロービンスン騎士爵家の生活基盤を、壊してしまいますよ』


マクの威厳ある言葉と渋い表情が、武良に迫る。


(また、急な大金は、その人を惑わせます)


マクのつぶやきが、武良だけに聞こえて来る。


(そうです。この鑑定眼で観て来た『宝石』の持ち主達は皆……『成金』な方ほど、『大金』に振り回されて……『天国から地獄』へ……)


カヤネの、少し寂しそうなささやきも、聞こえる。


「ありゃぁ。やりすぎたか。申し訳ない」


武良は、あっさり素直に、ロービンスン騎士爵に頭を下げる。


「「えっ!いや!頭を御上げ下さい!もったいない!」」


『では、ロムダン両替商会で預かりましょう。そして『こっそり』ロービンスン騎士爵の帳簿へ回します』


「手数料と、ロービンスン騎士爵の『これまでの負債』は?」


『はい。手数料は、勇者様価格です(ニヤリ)。負債は今回の『融通金』からの相殺でよろしいでしょうか』


「『勇者価格』て。まぁロムダン両替商会に『責任』を回すので、良いかな。よし、承認する」

武良は、苦笑いで了承する。


「「「えっ」」」


ロービンスン騎士爵夫妻とタムは、戸惑(とまど)う。


いきなり負債を『チャラにする』と言われたのだ。


「まぁまぁ。タムから聞きました。なんでもミィーファさんの医療費や薬代。車椅子や義足代等々、なかなかの金額だとか。家族とは言え中々出来ることではありません。ぜひツェール畑復旧の手助を、させてくださいませ」


『はい。何より『ロービンスン』印の『ツェール果実酒』は、存続すべき名産かと。今回の御援助は、笹木武良勇者様の先見の確かさかと』

マクが、武良の援助を『かなり持ち上げて』進言して来る。


(おう。こうやって『無駄な』勇者伝説が、創作(そうさく)されてゆくのだね)

武良は、マクに向かってつぶやく。


(ウソは言って居りませんぞ。誇張(こちょう)が過ぎたやもしれませんが)

マクは苦笑しながら、ささやき返して来る。


「父上、母上。武良勇者様は魔族退治だけでは無く、勇者様の『自費』で、教会救護院の無料診療の再開や、公都の橋や道路整備の公共事業を起こし『失業者対策』を開始されて居られる『慈悲』な方です。ツェール果実酒のためにも、ここは勇者様の慈悲に『甘えさせて頂く』事も必要かと」

タムが真剣に、両親に進言する。


(ほらみろ。ここにも俺の『誇張(こちょう)』された伝説を信じる(タム)が居る)


(タム殿の申された事は、掛け値なしの事実ではないですか)


「タム、わかった。笹木武良勇者様。ありがとうございます」

ロービンスン騎士爵は椅子から立ち上がり、はにかみながら武良に騎士の礼をする。


武良も立ち上がり、騎士の礼を返す。


ロービンスン騎士爵も武良も頭をあげ、握手を交わし、微笑み合う。


「ありがとうございます」

メルナ夫人も立ち上がり、武良に一礼する。


「ロービンスン騎士爵。タム君と言う立派な後継者がが居られて、御家は繁栄されますな」


「あ、その……」

ロービンスン騎士爵は、握手をほどきながら、少し戸惑う。


「あ。武良様。実は私の実母メルナは、平民出身の側室でして。私に『ロービンスン騎士爵家』の継承権は無いのです。つまり私は『平民』です。ロービンスン騎士爵家は正妻兄の、メイサーが継承して居ります」


「これは失礼致しました。継承権に口出しする意図は、一切御座いません」

武良は、真摯(しんし)に頭を下げる。


「いえいえ。御気になさらず」

ロービンスン騎士爵は鷹揚(おうよう)に、答える。


全員、再度座る。


(ロービンスン騎士爵家は、順当に発展繁栄にしておりますからな……そして、それを『おもしろくない』と、妬む勢力が存在するのも、この世の()らいでして)


(どこまで、つかんでいるのかな?)


(勇者様は、話が早くて助かります。ロムダン両替商会と懇意(こんい)の魔導師の意見では、『この地に、こんなに強力な『瘴気溜(しょうきだまり)』ができるのは、不可能です』とのこと。畑を潰した『魔物』もしかり)


(……タム君の、妹さんの件は?)


(当時対応した、冒険者パーティーの魔導師も『ここで、普通の犬が魔犬化は、あり得ない』と、聞き取りました。容疑者は……タム殿兄妹の母上のメルナ様を巡り、ロービンスン騎士爵と『恋の鞘(こいのさや)当て』した相手の様で……)


(そこから『元を()た』ねば、終わらないか)


(はい。『ロービンスン印のツェール果実酒』のためにも)


(……そこは、ブレ無いのだね)


(はい。来春の『初ツェール』を楽しみして居りましたのに……実に許し(がた)い……ブツブツ)


(申し訳ありません。父は、上級ソムリエの一人でして……)


(激しく了解。食物の恨みは……いや、相応に対応しよう)


(御願い致します)『では、後程商会の者を、ロービンスン騎士爵御邸宅にお邪魔させて頂きます』

マク・ロムダン公認両替商は、うやうやしく一礼する。


「助かる。よろしく頼む」

ロービンスン騎士爵夫妻は、目に見えて安堵する。


「おぉ。そうだ。是非とも、当家自慢のツェール果実酒を召しあがりくだされ」

ロービンスン騎士爵は、突然気が付いた様に、武良に勧めて来る。


「おっと。志しはありがたいですが、診察前に酒は控えさせていただきたいのです。御嬢様に義足を装着し、再び歩かれた時、祝杯として御相伴いただきたいと思います」


「たしかに。診察前に失礼しました。では、娘の部屋に案内致しましょう」


「あ。その際母上殿と、御嬢様が慣れておられるメイドも、同行願います」


「承りました」

ロービンスン騎士爵の…側室さん?

えーと。

タム兄妹の実母のメルナさんは、『恋の鞘当て』の原因の美貌で微笑みながら、席を立つ。

たゆん♪

なにげに、ナイスバディだし。


タムも一応武良(オレ)の護衛なので、立ち上がる。


うんタム。超イケメン君は、御母さんソックリだ。


「?武良様、何か?」

武良の視線に気が付いたタムは、問うてくる。


「いやぁ。『御母さんソックリだなぁ』と」


タムの顔は『ボン』と、赤くなる。


「……すまん。ツボだったか」


「……えー、勇者様。こちらへ」


タムの母親メルナは、苦笑いで先に部屋を出る。



御読み頂き、ありがとうございます。


次回投稿は、10月10日(月)の予定です。


よろしく御願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ