1-75.甘く無い、東郷父
ガキンッ!
キィイン!!
ヒュ!
ドスン!
朝日が昇る直前の暗闇の教会の森に、多数の剣などの金属が打ち合わせされる『戦場音楽』が、響き渡る。
ピキュン、キンッ!
ビュン!ガキン!!
キン、キン、キン!
紅く光る目の、黒いマスクの強化服達は、日本刀の様な刀を振るう。
白地のボディ・アーマーに金色のタイ・クォーン教会の紀章が輝く衛兵隊員達は、標準装備の六尺棒を振るう。
黒と白の人数は同数で、それぞれの武器を振るい、正々堂々と『一対一』で戦って居る。
白い衛兵隊隊員達は、武良の『|サウザンハンズ・システム《無線クラウド的なテレパシー方式》』経由の、『ユグドラシル・ネットワーク』から豊富な『魔力無限供給』を受けて強化されたパワーと、『経験値コピー』からの『歴戦戦士達の、突き詰められた格闘技』に、衛兵隊隊員達自身が受けて来た訓練と経験も掛け合わせられて、多彩な技を繰り出す。
中々互角で拮抗している、面白い戦いと成っている。
少し、白い衛兵隊隊員が多いのだか、余った白い隊員達は少し離れて待機して居る。
黒い強化服達の方だが、強化服の魔力供給は、ベルトの風車を定期的に回し『魔力を発生』させねば成らない。
そうして、ベルトからの身体強化パワーと機動力を活かした技を繰り出す。
そのために、黒い強化服側のベルトの魔力残量が減れば『タイム』を宣言し、白い衛兵隊と戦いを中断し、後方に下がって補給班からエネルギー・チャージを受ける事態におちいって居る。
見れば上空のわずかな風を拾い回転させる大型風車で、強化服の補給用魔力を『発魔?』する『発魔器』が備えられ、黒い強化服達のベルトに有線接続し、『急速魔力チャージ』を次々と行って居る。
白い衛兵隊側のバトル・スーツは、『武良からの魔力の無限供給』を受けているので、戦闘の中断の必要は無い。
が、かまわず、律儀に中断に応じる。
そして魔力補充された黒い強化服と、順番に戦いを再開する。
◯ ◯ ◯
「気にいらないね。白い奴らの『魔力無限供給』て、何だよ(ーー;)」
アメリア司令は、自分のベルトに有線接続し充填中だ。
紅いラインが入ったヘルメットのマスクを外し、仏頂面をあらわにして居る。
「同意します。敵を超える要素を、見出せません。こんな『紐付き』を繰り返さなければならない、長丁場になるなんて!!!」
副官のアライも自分のベルトに有線接続しながら、仏頂面だ。
そう。これまでは多数の敵でも、数分で敵を壊滅させて来た。
しかし今回の白い敵は、こちらの魔力チャージを待つ余裕を、見せ付けてきている。
「……やはり、東郷に期待するしか無いか……」
アメリアは、やや意気消沈な仏頂面に成る。
ヴーォン!ウィンウィンウィンウィンウィンウィン!!
見れば少し先の森の上空に、紅い噴射光を瞬かせ重低音を響かせながら、黒い巨大な大剣の様な飛行体が垂直に上昇して行く。
「!東郷だ!!」
「おぉ!!東郷夫婦の、『クロワシ』が飛ぶぞ!!」
「これで、決めてくれるに違いない!!」
その雄々しい有志に、黒色強化服達は、口々に歓喜をあげる。
東郷夫妻を中心とした『実働部隊』の戦歴は、ハンパない。
親貴族家軍団が、劣勢に陥る時。
『実働部隊』は疾風のように駆け付け、敵軍団を薙ぎ倒し、オセロの様に勝敗をひっくり返す。
初めの『女郎蜘蛛』形態の強化服は、敵が籠城する城壁を駆け上がり、城内の敵を無双し。
次の『韋駄天』形態は、離れて陣取る敵の間を、右へ左へ駆け回り、無双し。
そしてこの『黒鷲旗』形態は、親貴族家軍団の数倍の敵軍に対し、地上スレスレを超低空飛行で音速で飛び、その黒い巨大な大剣の切っ先を振り回し、敵軍を無双した。
「うん『クロワシ』の挙動は安定して居るな。テル!頼むぞ!!夫婦の共同ミッションだ!これで武良勇者を倒し、息子と光子の恥を雪ぎ、堂々と迎えに行こう!」
東郷の息子と光子は、武良勇者に負けた。
この世の習いでは、暗殺に失敗した暗殺者は、ただ消されるのみ。
だが勇者は、殺すまでも無いと、あっさり二人の返還を提示して来る。
しかしそれでは二人は『負けた恥のレッテル』を貼られたまま、生きて行かなくてはならない。
場合によっては非人扱いで、奴隷より辛い立場に落ちる。
だから東郷夫婦は自ら乗り出し、息子達の恥を恥を雪ぎ『名誉』挽回させるべく、武良勇者を打ち倒しに来たのだ。
アメリア司令は親友の東郷照美の、機器整備士とナビと火器管制の腕前を、密かに尊敬して居る。
照美の手にかかれば、どんなにグズる機器も、たちまち従順にかつ最高のパフォーマンスを発揮し出すのだ。
昨夜は息子達の為に、東郷との共同ミッションに燃えていた。
ヴゥーン
「「「「「!!!???」」」」」
その『クロワシ』の反対側に、独特の重低音を響かせながら銀色の禍々しい飛行体が、ゆっくり上昇して来る。
「な!?何だ?ありゃぁ!!」
「あれは、『勇者の飛行体』なのか?」
「なんと禍々しい!『クロワシ』に、対抗出来るのか?」
黒い強化服達は、ザワつく。
「アライ。どう見る?」
「司令と同感です。アレはヤバイ印象です!教会衛兵隊の強化服レベルの飛行体なら、『クロワシ』も強化服と同じ事態に……」
「だよなぁ……」
ドンッ!!
『クロワシ』が、突っ込む!!
銀色の飛行体は、滑らかな動きで、ヒョイとよける。
「うぬ!やはり。我らより数段上の『おーばー・てくのろじー』が使われて居ります!」
「……手助けは……出来ないか」
アメリア司令は、唇を噛む。
「見守るだけ、かと」
副官アライも、渋い表情をす。
『クロワシ』は、スラスターの噴射で、ぎこちなくも素早く方向転換して居る。
比べて銀色の飛行体は、正面をピタリと『クロワシ』に向け、滑らかに飛び回る。
どう言う飛行方式なのだろうか?
と、いう間に、『クロワシ』と銀色飛行体は、背後の取り合いに突入する。
「『ウロボロスの輪』か!高Gが!!照美!!!」
アメリア司令は、心配そうにつぶやく。
高速での縦回旋は、高Gが操縦者とナビ管制員に襲い掛かる。
東郷はともかく、女性の照美の身体が耐えられるのか、心配だ。
ヒュン!
急に銀色飛行体がウロボロスの輪から消え、瑠璃色強化服からほど近い所に出現する。
『クロワシ』は、一瞬きりもみ状態におちいるが、すぐさまスラスターを吹かしながら、体制を整える。
ドンッ!
『クロワシ』はすぐ、銀色飛行体に向かって、まっすぐ飛ぶ。
バサバサッ!!
その時急に、白い衛兵隊の三体が天使の翼を広げ、天高く飛び上がる。
ドシュン!!
どう言う事なのか、『クロワシ』の後席の管制席が、唐突に『脱出射出』されてしまう!!
「どうした!?照美!!」
思わずアメリアは、叫ぶ。
いま飛び立った、教会衛兵隊三体は、パラシュートで降下して行く『グッタリと動かない』照美を、優しく確保する。
ギュウウウゥウーン!
『クロワシ』は、なす術無く、四人の周りを周回する。
三体の衛兵隊員は、ゆっくりととある地点に、降下して行く。
「……あそこは……『クロワシ』の上昇地点ですね。!そうか!天使達は、照美さんを、補給班に渡そうとして居るのでは!?」
副官アライは、期待をこめた表情をする。
「それなら、ありがたいが……」
バサッ!
三体の衛兵隊天使が、再び飛び去るのが見える。
『東郷!!照美は無事だ!!ブラックアウトしてるだけだ!!』
程なくして、ドクターが叫ぶ声が、共通無線バンドに飛び込んで来る。
「はぁあぁ〜」アメリア司令は、安堵のため息が出てしまう。
ヴィンヴィンヴュィン
おや?勇者の銀色飛行体は、ゆっくりと降下して行く。
いつもの芝生広場のど真中まで降りると、銀色飛行体は脱着され、転送されて消えて行く。
広場に、勇者が銀色のバトル・アーマーのまま、ポツンとたたずむ。
「……東郷に、『一対一で戦え』と言うのか?ふん。勇者、甘いぞ」
アメリアは、東郷を武装解除させる前に、無防備に成った勇者をとがめる。
プシュー!!
東郷は『クロワシ』のスラスターを吹かし、巨大悪魔の戦斧の様な機首を、無防備にたたずむ勇者に向ける。
「ほらみろ。東郷は甘くないゾ♪……やれやれ。これで『恥を雪げる』かな?」
アメリア司令は、ニヤリと微笑む。
ヴォン!!ドンッ!!!
アフターバーナーを全開にし、『クロワシ』は無防備にたたずむ勇者に向かい、突進する!!
御読みいただき、誠にありがとうございます。
次回投稿は、7月17日を予定しております。




