1-73.ブラックバード
「まずい!東郷が孤立してる!『ホーク』D、E、F狙撃班!援護狙撃開始!!」
少し離れた教会公園を見渡せる丘から、双眼鏡で事態の推移を伺って居た、少し年上の女性が発令する。
「はい!『ホーク』DEF班!援護開始!開始!」通信兵が、インカムに向かって叫ぶ。
ドヒュン! ドヒュン!! ドヒュン!!!
『ホーク・アイ』DEF狙撃班それぞれに離れて居る箇所から、次々と発砲が始まる。
ズン! ズゥン!! ズン!!!
武良への射線の間に何か有り、砲弾はそこで止まる。
「ぬ?砲弾が通らない!?何だ?」
女性が覗く双眼鏡の、砲弾が当たった場所の風景の画像一部が、わずかに揺らぐ。
「……こ、光学迷彩?なのか?光学迷彩された何かが、射線を妨げてる!!」
「た、確かに!『何か』が存在します!!……ど、どうしましょう?」
「ぬぅ。斉射三連!!」
「はっ!斉射三連!!」
ドヒュ!ドヒュ!!ドヒュ!!!
ドヒュ!ドヒュ!!ドヒュ!!!
ドヒュ!ドヒュ!!ドヒュ!!!
DEF狙撃班の方向から、凄まじい連射音が聞こえる。
ズン! ズゥン!! ズン!!!
ズン! ズゥン!! ズン!!!
ズン! ズゥン!! ズン!!!
やはり『何か』に、砲弾の火線は、吸収されてしまう。
「ダメです!通りません!!」
「……総員、前進!!」
「え!?撤退では無く?」
「……ここで負ければ、我々は『最初から無かった』存在と見なされる。その『自覚』を持って、ここまで来たんだ。後の事は、何も考え無くて良い。総員、前へ!!」
「くっ!了解!!」
「アメリアだ。総員に告げる。只今より、総力戦に入る。我も今から、修羅に成る!!おのおの、存分に楽しめ!」
ピキュルーン!!
アメリア司令官の腹の、ベルトの風車が回り出し、彼女の全身は輝き出す。
ピキュルーン!!
ピキュルーン!!
ピキュルーン!!
攻め手側のあちこちの森から、変身ベルトの起動音が、一斉に鳴り出す。
◯ ◯ ◯
「……始まったか」東郷は、軽くため息をつく。
「そうね。里の実戦部隊は、全員来たのね」田畑光子は、断言する。
「ほほう。全員が、強化服を扱えるんだね。では、教会衛兵隊との白兵戦が、いよいよ始まるか」開祖シンは、冷静に述べる。
◯ ◯ ◯
『コレド隊長!衛兵隊運用を御願いする!ただし……』
『殺すな、ですね』
『うん。頼む』
『うけたまわりました。総員!六尺棒か四肢で戦え!一対一で、全力で戦え!!』
『『『『『応!!!!!』』』』』
『前進!!』
『あれ〜?『殺すな』は?』
『皆、心得ております。むしろ、正々堂々と戦える事を、嬉しく思います』
『わかった。よろしく頼む。こちらは、もう少しかかりそうだからね』
ガキン!ブブブブブブブブブブブブブブ!!
瑠璃色強化服の高振動ブレードと、武良強化服の持つ三メートルはある、黒光りの六角棒が激しく打ち合い、押し合う。
瑠璃色強化服は、高振動ブレードで切れない六角棒に、驚いて居る様だ。
ブォン!ガキン!
武良は、六角棒の角で高振動ブレードをいなし、六角棒の先端で瑠璃色強化服のヘルメットを狙う。
ブン!ブン!!
瑠璃色強化服は、頭をクルリと回し、六角棒の軌道をよける。よけながら、高振動ブレードで、武良強化服の鳩尾を突く。
ガッ、ブブブブブブブブブブブブブブ!!
武良は、六角棒の手前の端で、高振動ブレードをいなす。
(ふぅむ。こいつの背後には、補給部隊があと三班見て取れる。後三回、付き合わねば成らないか……少し、急ごう)
ガキッ!バキッ!!
武良は、真円流剣術の応用で、六角棒で高振動ブレードを絡め取り、へし折る!!
ダッ!
瑠璃色強化服は、慌てて後方に飛び去る。
そして、右手の折れた高振動ブレードを見る。
ぽい、と捨て、後方の森に飛び込む。
戦略管制ディスプレイに映る、敵補給部隊が動く。
(うん?補給の三班が、瑠璃色強化服へと集結して行くぞ。流石の強化服部隊だから、移動が早いね!)
ついに、瑠璃色強化服と、補給三班が合流する。
補給部隊三班が、大あわてで瑠璃色強化服に、それぞれの装備を装着して行く。
ヴーォン!ウィンウィンウィンウィンウィンウィン!!
そして、ある形態に装着完了すると、けたたましい駆動音と共に森の上空へと、ゆっくり垂直上昇を始める。
(うぇっ!?アメリカ空軍・超音速・高高度戦略偵察機、ロッキードSR-71の形態か!!……本物より、小さいか。て事は、次は|航空戦闘機同士の格闘戦か!! )
「セルガさん!今度は、空中での高速機動戦闘に成りそうです!教会敷地上空目一杯まで、障壁を上に拡張して下さい!!」
と、同時に、セルガに|航空戦闘機同士の格闘戦のイメージと、音速突破時の衝撃波による建築物の破壊のイメージを送る。
『!まぁ、大変!はい!障壁拡張!!!』
セルガは、音速突破時の衝撃波による建築物の破壊のイメージを元に、衝撃波を打ち消せる障壁の形態に変化させ、タイ・クォーン教会敷地全域に障壁を張る。
たちどころに、半透明の障壁がグングン上空に伸びる。
「障壁ハ、教会敷地をカバーしましタ」隼が報告する。
「よし!俺も、高速機動形態に装備換装だ!!」
バシュ!!
禍々しく長い四肢が外れ、転送されて消えて行く。
ヴォン
次に高速機動ユニットが転送されて来て装着され、某アニメの、モビル・アーマーっぽい形態に成る。
ヴゥーン
独特の重低音を響かせて、武良のモビル・アーマーは、上昇して行く。
ドンッ!!
ロッキードSR-71っぽい瑠璃色強化服は、双発の魔式ジェットエンジンから強力なアフターバーナーを吹き上げ、簡単に音速の壁を破る。
そしてその両刃の剣の様な先端を、武良のモビル・アーマーに突き刺そうとして、突っ込んで来る。
武美は、ヒョイとよける。
ギューン!ドゴゴゴゴゴ!!
見れば、ロッキードSR-71の筐体あちこちに、多数の姿勢制御スラスターが装備されていて、UFOの様なトリッキーな運動性能で、突き掛かって来る。
しかし武良は、紙一重でよける。
ヒュン!
武良モビル・アーマーは、ノーリアクションでロッキードSR-71形態の瑠璃色強化に迫る。
ギュン!ズドドドドドド!!
ロッキードSR-71形態の瑠璃色強化服は、機体を『きりもみ反転』させ、武良モビル・アーマーから距離を置く。
ヒュゥウウウン!
しかし武良は、瑠璃色強化服の背後を取る。
瑠璃色強化服は負けじと機体をひるがえし、武良の背後を取ろうとする。
ヒュィィイイイン!!
ギュイィィイイン!!
『ペルガン!空中戦闘が、公都上空に及ぶかもしれない!衝撃波対策障壁を張れ!!』
武良は、余裕で命じる。
『了解しました』ペルガンの返事と同時に、公都全域が、障壁におおわれる。
ヒュィィイイイン!!
ギュイィィイイン!!
互いの背後の取り合いは、終わらない。
ヒュィィイイイン!!
ギュイィィイイン!!
◯ ◯ ◯
「うへぇ。二匹の龍が、お互いのシッポを喰おうとして居る様だ!」
ラルフは、驚愕に興奮した声を出す。
「「ウロボロスの輪、か……」」
マイクとハリーは、同じ言葉を同時につぶやいてしまう。
「なんだい?ウロボロスって」
ラルフは素直な疑問から、オウム返しに問う。
「二匹の蛇が、相手のシッポを食い合うイメージなの。『無限』とかの意味合いもあるけど、この場合は『どこまでも消耗戦』よね。って、これも里の書庫に載ってるわよ」
キャシーは、ラルフをジト目で、冷ややかに見る。
ラルフの目は、途端に泳ぎ出す。
御読みいただき、ありがとうございます。
次回は、7月3日(日)を、予定しております。




