1-69.魔式弾丸の実力
タムッ
広場の真ん中にポツンと立てられた、人型の的の眉間のど真ん中に、着弾音と共に一つの弾痕が開く。
タムタムッ
二発の着弾の音がする。しかし、弾痕は増えない。
「なるほど。狙った着弾点から、意識を外さなければ、同点に着弾出来るのか」
スポッターのハリーは、双眼鏡をのぞきながら、感心した声でつぶやく。
「あぁ。吸い込まれて行く。しかも発射振動が無いから、同点に狙いを集中させるのも、たやすいぞ」
スナイパーのラルフも、驚きの効果に、いささか興奮気味に答える。
「これで、数千発撃てるのか……開祖シンは『持ち主のイメージ通りに、撃てる』と言ったよな」
ハリーは、考えを巡らせながら、つぶやく。
「どう言う事だ?」
「……使える武器や用途を、イメージ通りに増やせると言う事だ」
「そうか。では、オジイが話して居た『みさいる』とか、撃てるのか?」
「御前が、イメージ出来ればな」
「うーん。話にしか聞いてないから、わからない」
「御前は座学中、ずっと寝て居たからだろ。そして『ミサイル』は、里の図書館にある、武器辞典に載っているぞ」
「マジかよ……」(=血=;)
「マジよ」(たゆん♪)
「うわ!キャシー!!何だよいきなり」
ラルフの後ろに、いつの間にやらキャシーが立っていた。
「お兄が『魔式弾丸』に夢中に成っちゃって、暇なのよ」
キャシーは、あきらめた様に苦笑する。
「「……だろうね」」
「うん。だから、お兄やハリーは気が付いてるわよね」
「そうだな。『魔式弾丸』で、戦術や戦略が根本的に変わる」
ハリーは、認める。
「今は、想像が付かないけれど、武器は、銃や弾丸で無くても良いわよね」
「そうだね。この金属を身に付ければ、イメージ通りの戦力が持てる」
「……でも、製造や調整は武良様や開祖シン様でしょ。この金属鋳造のノウハウまで、教えてくださるのかしら?」
「「……だよね」」
ハリーとラルフは、不承不承認める。
「……どの道我々の里は、武良様主導のタイ・クォーン教会の、軍門に下るしか無いでしょ」
「まぁ、今更だよね。我々は武良様に負たし。更には、この『禁断の実』に、がっつりかぶり付いてるんだし」
ハリーはサバサバと、割り切った口調で言う。
「私達は、もう理解して居るから良いのよ」
「そうだな。里の長老達に理解して貰えるのが、かなりな手間だな」
ズシン
一回、障壁の向こうから、地響きが
三人は、お互いに目配せする。
「やっぱり来たか」ハリーは、つぶやく。
ズシン ズシン
「デカイのを持ち出したか」
いつの間にかマイクも、三人の横に立っていた。
「思うのだけど。武良様は、里に対して『罠』を仕掛けたよね」
キャシーは、断定する。
「そうだな。『勇者様製造の、半ゴーレム式の新型戦闘甲冑を、衛兵隊に装備させる。3日後に、勇者様自らの演習が、取り行われる』と、先日のミサで情報が流れて居たな。魔族への『聖守護付与された御聖体』を、ありがたく食した教徒達が、かしましく話して居たよ。セルガ様が説法の時『皆様の守り手が、大勢増えますの♪』と、宣伝されたそうだ。そりゃ里にも、武良様が『いつ、どこに』居るのか分かるよな」
ハリーも、やや呆れ気味に、断定する。
「……武良様は、『あからさまな誘いの手』を選ぶのね」
キャシーは、呆れる。
「手っ取り早く、話を進めたいんじゃないか?」
ラルフも、どちらが勝っても構わない態度を取る。
誘う武良様に、武良様を狙う里の面々。
武良様は、魔族対策の為に、一人でも多くの『戦闘スキル持ち』が欲しいのだ。
あらたな里の襲撃などは、戦闘スキル持ちの方から、武良様に近付いて来るのだ。武良様からしたら、ウエルカムであろう。
もちろん、武良様が負ける気配は、一切しないし。
だから、既に武良様に負けた我々は、武良様の手駒扱いである。
しかし武良様は、一度手に入れた手駒は、大事にする方針の様子だ。
この『魔式弾丸』と言い、衛兵隊へのバトル・アーマーと言い。
『絶対に死なせない。捨て駒にし無い』と言わんばかりの、金と手間の掛け方だ。
「……本気で、俺らの命を、大事にしてやがる……」
無口なマイクが、ボソリとつぶやく。
「本当よ……裏切れ無いじゃない」
キャシーも、少し頬を赤らめて、つぶやく。
ズシン ズシン
「激しいな……で、武良様の手駒の俺達は、顔を出さなくて良いのかな?」
ラルフが、ハリーに問う。
「里の襲撃は、武良様が自ら打ち破らねば成らない。『絶対強者に、完膚無きまで敗れた』のでなければ、里のメンツがたたない」
ハリーは首を横に振り、断言する。
「……そうだな」
カチャリ
「手駒らしく、呼ばれるまで、練習を続けるは」
ラルフは納得した様に頷き、銃を取り上げる。
シャキン
ラルフは、何を思ったか、スコープを取り外す。
そのまま少し遠くの人型の的を、左手に持つスコープだけで除く。
パシュ!
右手で片手持ちした、スナイパーライフルを、天に向かって『適当』に撃つ。
「ハリー」
ハリーに、確認する様に促す。
ハリーは、胸にぶら下げている双眼鏡を取り上げ、的を見る。
「的中。マジか」
「……限界が、確認出来無い。この銃は、主人が『的』を認識するだけで、的中出来るのか……」
ラルフは、すっかり戸惑ってしまう。右手の魔式ライフルの、無限の可能性に。
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次回投稿は、6月5日(日)の予定です。
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