1-58.使い魔の名は
えーと。わたしの名は『パル』だそうです。
タム様の、バトルアーマーの戦術管制AIです。
装着者タム様の思考制御で、戦闘を補佐致します。
タム様の、思考パターンが蓄積されますと、先読戦闘も可能です。
いろいろ、諸々、便利デスよ♪
タムとカムランは、二人の相部屋に向かって歩く。
「なぁ、タム」カムランが、つぶやく様に、声を掛けて来る。
「おう、なんだ?」
「……正直、俺は、戸惑って居る。突然に、魔族を倒せる聖剣を持たされた様な……」カムランの視線は、下を向く。
「いやいや、聖剣とは訳が違うぞ。聖剣には所有者に『勇者』の称号が必要だ。だがタケヨシ様は、一から教えて下さるとおっしゃった。有能な『執事』?を付けても下さる……多分、新人衛兵でも、勇者並に強くして下さるんじゃないか?」タムは、断言する。
「……ずいぶん勇者様を信用しているんだな」
「あぁ。信用している。タケヨシ様は、有言実行だからだ」
「……そうか……そうだな」
「今少し、タケヨシ様に御任せしてみて良いのじゃないかな?……多分、使い物に成らなければ、ハッキリ断言して下さるさ」
「おう。そうだ。その通りだな」
「そうだ。だからカムランも、今は何も考えるな。先ずは『てきせいけんさ』?を、受け止めようぜ」
「そうだな。タム、ありがとう……御前には励まされてばかりだ」
「いや、俺も『御前の疑問』を考え話すと、考えが整理されるんだ。俺も助かって居るさ。気にするな」
「……そうか。じゃ、俺はどんどん疑問を『ボヤけ』ば良いんだな?」
「そうだ」
「そうか」
二人の相部屋に、たどり着く。
ガチャ
タムのベッドやベッド周りは、キチンと整理整頓されているが、カムランのベッドは……
「……先ずは、寝そべられる様に、片付けよう」
「す、すまん」
◯ ◯ ◯
「ふぅ。終わった」タムは、一息付く。
ギギギ、バチン
「よし!閉まった」
カムランは何かで一杯の、扉付きの枕元上の収納を、無理矢理閉じる。
「……その扉、カギ掛けとけ。『てきせいけんさ』中に雪崩を起こしたら、目も当てられん」タムは断言する。
「そ、そうだな……えーと……カギは……」カムランは、周りを見渡す。
ガチャリ
タムは、難無くカムランのカギを拾い上げ、カギを掛ける。そのままカムランの小箱に入れる。
「すまんなぁ。孤児の俺は、片付けに疎くてな……」
「御前も、ヤバもロムレスも、ここの孤児院出身だろ?」タムは、苦笑する。
「うぬ。付き合い長いと、言い訳がきかんな」カムランは、悪びれず、苦笑いする。
「ふ。今さらさ。さぁ、横に成ろうぜ」タムは、冷静にうながす。
「やれやれ。勇者に成るのも、大変だ」カムランは、ボヤきながらベッドに横に成る。
◯ ◯ ◯
(よーし。全員横に成ったな。では、それぞれの使い魔の、インフォメーションが始まる。気楽に聞いてくれ)
タケヨシ様の声が、タムの脳内に響く。
「うおぉ〜。どきどきする〜!」
カムランが、自分のベッドで、身悶える。
(カムラン、力抜けー)タケヨシ様の、苦笑する声が響く。
((((わはははははは))))他の衛兵達の、爆笑する念話が、伝わって来る。
ぴんぽーん
こんにちは。タム様。初めまして。私は、タム様専属の、戦略管制AIです。宜しく御願い致します。
落ち着いた女性の声が、タムの脳内に聞こえる。
お、おぅ。宜しく。
女性なる存在とは、母や妹としか気楽に話した事が無い。正直、苦手だ。セルガ様やメルダ様とは、命令を承るだけなので、会話したとは言えない。そんな、無駄にイケメン君である。
ありがとうございます。宜しければ、私に、名前をくださいませんか?
なまえ!?
朴念仁な自分が、女性に名前なんて!!
あはは。御気軽にどうぞー(とりあえず)で、良いですよ♪
じゃ(とりあえず)パルで。
あら♪(とりあえず)とは言え、嬉しい名前ですは♪
じゃ、パルで。
ありがとうございます。私は『パル』です。
よろしく、パル。では、いろいろ教えておくれ。
はい。早速ですが、鎧を装着致します。
ぶわっ、と身体の周囲に何かが現れ、全身が覆われ始める。
「うわ!」
カシャカシャカシャカシャ
天井に視線を向けたまま、視界の淵に、いつまにやらヘルメットが現れる。
では、面頬を閉めます。タム様の視界に、戦術情報が表示されます。その解説を致します。
あぁ
パシュン
ヴォン
「あれ?」
タムがシールド越しに見える視界には、真っ白い世界が広がっている。
御読みいただき、ありがとうございます。
次回は、4月7日(木)を予定して居ります。




