1-49.公認両替商親子
ロムダン公都公認両替商のマク・ロムダンです。
素晴らしい宝珠・宝物・貴金属には、何かしらの王侯貴族達の栄枯盛衰の逸話が、まとわりついて居るモノです。
いつの間にやら、数多くの逸話に、詳しく成ってしまいました。
しかし、宝珠・宝物・貴金属達は、何も悪くないのですよ。
人生の出逢いに、似ていますね。
カポカポカポカポカポ
四頭だての質実剛健な箱馬車が、公都中央部からタイ・クォーン教会への道を、早足で向かう。
「御父様。それで、真の勇者様の御用件は何でしょう?褒章の宝物に、何か不都合がありましたのでしょうか?」
タイ・クォーン公都公認両替商マク・ロムダンの娘、カヤネ・ロムダン十三歳は、右眼は碧眼で左眼は紅眼のオッド・アイを、不安気に父親に向ける。
彼女は、あつらえたばかりの乗馬服風の公認両替商の制服で、艶めく黒髪をキチンとまとめ、身なりを整えて居る。
つつましい姿の美少女の美貌は、二割マシマシである……いささか制服に『着られている』感は御愛嬌だが。
「いや。副司祭メルダ様からは、『お陰様で褒章宝物は、今世一級品を揃えられました。勇者様も感心しきりです。今回はその一級の『鑑定眼』で、『勇者様の世界』の貴金属を鑑定して頂きたいのです』と、具体的な要請を頂いた」
父親のマク・ロムダンは、初々しい制服姿の娘に、上機嫌で答える。彼も長年着慣れた制服姿だ。流石に威風堂々と、着こなして居る。
「まぁ♪あの『聖なる光の剣』の真の勇者様の世界の、貴金属!!どんな宝珠宝物を、拝見出来るのでしょう♪」
カヤネの美貌は、パッと明るい笑顔に成る。なかなか初々しく可愛い♪
「本当だな。こんなに心が踊り、名誉に思う鑑定依頼は、なかなか無いなぁ」マク・ロムダンは、にこにこ顔で娘に同意する。
親子は、心底の驚愕に巻き込まれてしまう事を、知る由もない。
◯ ◯ ◯
カポカポカポカポカポ
馬車は教会神殿の敷地内に入る。
ぞくり
え?なに?
カヤネ・ロムダンの感覚に何かが触れ、背筋に走るものがある。
彼女は美しいオッド・アイを、見えて来た神殿に向ける。
何故だろう。以前の来訪時より……新しくなって無いかしら?!
さらに、周囲を見渡す。
そして……教会敷地内が……いかにも『神域』にふさわしい、清々しい神気が増してない?!
箱馬車は、教会神殿の迎賓館ロータリーに侵入する。
ロムダン両替商親子は、教会神殿迎賓館の玄関前に降り立つ。
え?なに?
カヤネの足は、その場にすくみ上がり、一歩が踏み出せなく成る。
恐怖では無い。
迎賓館の多分奥から感じられる、余りにも神々しい神気に触れて、恐れ多くてすくんでしまったのだ。
「御父様……」彼女は、父親に向けて、情け無い声を出す。
マク・ロムダン、は笑わない。娘の鋭い感性を知っているから。
「だいじょうぶ。さぁ、拝見しに行こう」父は優しく、大きな手を、娘に差し出す。
「はい」カヤネは、大好きな父の手を取る。手の温もりにはげまされ、一歩を踏み出す。
御読みいただき、ありがとうございます。
次回更新投稿は、3月17日(木)を予定して居ります。




