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1-46.王都新官長ディグリーの憂鬱

「新官長に成るまでは、歴代の前任の新官長様方々にあこがれて居りました。もちろん新官長に成れればと、努力して来ました。いざ、新官長に就任してみましたら、いやはや」


王都新官長ディグリーは、やや哀愁の微笑みを浮かべ、遠い目をする。


「人口多い王都では、御陰様で寄付も多く、予算は潤沢でした。が、王侯貴族達を相手にし、裏も表も『水も甘いも』滞りなく差配出来なくては、新官長として立ち行かないのです」


そんな王侯貴族達の中に、笹木武良様を、御迎えしなくては成らないなんて。


まぁ、65億人を差配出来る、超ド級の御金持ちと言う事ですので、お手並み拝見いたすべきかしら。




王都神官長ディグリーは、神殿貴賓棟の喫茶室の片隅のテーブルに、ポツンと一人座り、途方にくれている。


飲みなれたマキ茶の香りを(たの)しみながら、ゆっくり喫しては居たが。


召喚の儀式すぐさま第一守護天使を使役し。光の聖剣で、巨大魔人を一撃した『真の勇者』笹木武良様への実力に、ひっく返りそうな連日の驚きからは、何とか立ち直る。


彼女は、王都神官長でございます!と言う尊大な態度は納め、聖職者らしい落ち着いた佇まいを見せて座っては居る。


が、内心頭を抱えて居る。


どうしよう。このままでは、王都に帰れない。しかし困ったなぁー。当初『王偉』を傘に来て、主導権を握ろうとしたが。現人神位(あらひとがみクラス)の勇者様がお出でになるとは! 現に守護天使様と普通に話してるし。つまり神とも話せちゃう訳で。直接神託を受け取りそうよね。うーん。我々神官要らず……兎に角王命の『王都に早目に御招き』するには、どうすれば良いのだろ。


ガチャリ


喫茶室のドアが開く。


「あ」


ディグリーは、思わずつぶやく。ちょうど懸案対象(けんあんたいしょう)の武良が、ワードマンと話しながら、にぎやかに喫茶室に大勢で入って来たからだ。


「では四獣神の方々も、その種族の中で『徳し』が認められ、昇神されたのですね」武良は、ワードマンに問う。


「はい。勿論私も生前の『徳し』が認められ、昇神出来たのです。元の種族は違えど、神界に置いては神同士なので、意思疎通が出来るのです」ワードマンさんも、うなずき返す。


「ほほーう」武良の目が、キラリと光る。


「何か『悪い事』を、思い付かれましたはね」セルガさんが苦笑しながら、訝しげにタケヨシ殿を横目で見る。


「本当ですね。武良様が目を輝かせる時、何かしら事件を起こします」

メルダは、竜神様に転移陣に引きずりこまれた時、ゼルガと武良に裏切られた事を匂わす。


「笹木武良の発想は、興味深いである」なんと竜神様まで、食堂に入って来る。


「ニーグ様!」ディグリーは、思わず声を出す。


「なんだ、ディグリーも居たのか。息災かの?」竜神様は笑顔で、ディグリーに気やすく声をかけて来る。


「はい。王都神官長就任式以来ですね。ニーグ様も相変わらず興味深い人物には、目が有りません事」ディグリーは、『真の勇者』笹木武良に視線を向けながら、苦笑いする。


「うむ。笹木武良は、おもしろいぞ」竜神は、にこりと笑う。


「そう言えば、ディグリー義姉様。王都は、宜しいのですか?」セルガは自分も神官長なので、その多忙さは実感して居る。


メルダも心配そうに、ディグリーを見つめる。


ディグリーは、セルガの言葉に、身を縮める。

そうなのだ。出来れば本日ただいまからでも帰りたい。

しかし。笹木武良様の王都御訪問の御約束が欲しい。

御見かけするに、話の解らぬ御方では無い様子だし……直球で、王都招待を御願いしても、良いかな?


「えぇと。勇者タケヨシ様」


「はい。ディグリーさん。何でしょう?」武良は、にっこり微笑む。


「タケヨシ様の王都御訪問の御予定を、御伺い出来ませんか? 勝手な申し入れで申し訳ありません。しかし、確約を頂けませんと、戻れないのです……」ディグリーはその笑顔に助けられ、思い切って、武良に投げかける。


「宜しいですよ。王都訪問を、承りました。ただし。公都改善のメドが付いてから、王都にお邪魔させて頂く事で、宜しいですか?」武良は優しく、しかしキッパリ断言する。


「承りました。御待ちして居ります」


ディグリーは、うやうやしく一礼する。そう。彼は『真の勇者』様。公都改善と言う所用があるのだから、王を待たせても構わない。また、飛んで帰ったハナマサ勇者担当局長が、適切に報告するだろう。ともかく、王都来訪を確約出来たので、ディグリーは安堵する。


「しかし、ディグリーさんも大変ですね。あちこちに気を使わなければいけませんし」武良は、ほろ苦く笑う。


「御気使い、ありがとうございます」ディグリーは、一礼する。


ぽっ。


ディグリーは、そのいたわりの言葉と素直な微笑みに、思わず照れる。


「……貴方は、底知れ無い御方。あの様な圧倒的なパワーを御持ちなのに……其れを、振りかざさ無い」


照れてつい、感じたままを、つぶやいてしまう。

 

武良は、にっこり笑う。


「強要した敬意は、性に合いません」


ディグリーは、爽やかな風を受け取った気分に成る。


真横の竜神も、ほう、と言う表情に成る。


ワードマンは、にっこり笑う。


セルガさんは、にやりと笑う。


メルダも、優しく微笑む。


「まぁ必要な時に、強大な勇者の力は、存分に振るいます。また、その準備も怠らぬ所存です」武良は、微笑んだまま答える。


「誰の為に?」ディグリーは、禅問答の様に問う。


「それは……振るうべき時に、解ります」武良は、静かにディグリーを見詰める。


「振るうべき時に?」ディグリーは、困惑顔に成る。


「はい。誰の為に振るうべきは、その時その場でハッキリと解ります。其の為に心持ちは、『雲行流水(うんこうりゅうすい)』でありたいと願って居ます……其の様に、王に御伝え願います」武良は、にこりと笑う。


ディグリーは、はっとする。ワードマンを見る。


ワードマンは、ディグリーを見返し、微笑む。

「武良殿は、我々の『ありのまま』を受け止め様とされて居る。だから我々は、彼を奪い合う必要が無いのですよ」


竜神は、うんうんと、うなづく。


ディグリーは背筋を伸ばし、深く武良に首を下げる。

「改めて、我の未熟を感じました・・・ありがとうございます」

顔をあげると、肩の荷が下りた様な晴やかな笑顔を浮かべる。


「私も、未熟ですはね。申し訳ありませんでした、ディグリー義姉様」

セルガさんも、ディグリーの笑顔にホッとした表情で微笑み、彼女

に首を下げる。


是迄(これまで)としませんか?もう、恥ずかしゅう御座います。セルガもね」ディグリーは苦笑いし、右手を軽く振る。


ディグリーはふと、竜神を見る。


「ニーグ殿。勇者様が王都に御出でに成るまで、勇者様に付いて頂けますか。王都でも、多くの海千山千が存在します故に」彼女は、微笑みながら言う。


「おう? おう。かまわぬぞ。今少し、笹木武良を楽しみたいでな」竜神は、あっけなく受ける。


「宜しくお願い致します」ディグリーは、竜神にうやうやしく一礼する。


「笹木武良様に拝謁出来て幸いです。それでは、王都に戻ります。失礼致します」武良にも、一礼する。


「セルガ。美味しい御茶でしたは。今度は貴女も王都に居らしてね。王都新作スイーツを用意しておくは」最後にセルガにも、声を掛ける。


「はい。義姉様。必ず」セルガも、嬉しそうに笑う。


「義姉様と呼ばれてましたが、セルガさんとは、縁者さんなのですか?」武良が、ディグリーに、素直に問う。


「あぁ。教会に修行見習いとして入信時、先輩神官の一人と、専任指導係としてペアを組むのです。後輩の『見習い』が取れるまで、24時間寝食修行を共にします。その際、気心が合ったりすれば、神前で義姉妹の契りを結ぶ場合が多いのです。セルガの見習いの頃は、それはもーう可愛くて♪ 彼女の指導係は、取り合いに成りましたは」ディグリーは、懐かしそうに遠い目をして、微笑む。


「へぇ。セルガさんの見習い時代ねぇ。どんな、見習い生でいらっしゃいましたか?」武良は、セルガを横目で見ながら問う。


「はい。それはそれは、見かけとは裏腹に、能動的な信徒でしたは。ある日、(センベ)のヒナが、地に落ちて居りました。セルガは遮二無二(しゃにむに)高い木の上の巣まで登り、見事に巣に戻しました。所が、そのママ降りられ無く成って。急いで、里が木こりの神官様が呼ばれて、降ろされて居りましたはねー」ディグリーは、懐かしそうな、遠い目をする。


はわわわ!「義姉様!!勘弁して!!!」セルガは真っ赤になり、両手を振り(たゆん♪ たゆん♪)、ディグリーの発言を必死で妨害する。


「へぇ。セルガさんは、怒られましたか?」武良は、素直な疑問を述べる。


「いいえ。『弱きモノを助けよう』と言う志は尊い事です。が、この場合は『自らが出来る事、出来無い事を、見極める事です』と、当時の神官長様の訓示を頂いてました。具体的な方策として、『ヒナは毛布でくるみ保温し、木登りが出来る神官を呼んで来る』でしたね」


「わはははは。しかり。セルガは、良い(はぐく)みを受けたのであるな」竜神は、嬉しそうに微笑む。


「もうもう、勘弁してくださいましー!」セルガさんは、真っ赤にのぼせた顔を、両手でかくす。


「では、セルガ。王都で、思い出話が出来る事を、楽しみにしてますよ♪」ディグリーは、セルガの肩に手を置く。


「義姉様」

セルガは、手をおろし、ディグリー義姉の手に自分の手を重ねる。


二人は頷きあい、手を離す。


ディグリーは、無言で全員に黙礼し、ゆっくりと喫茶室から退出する。





「では、メルダさん。御茶会しながら、教会会計の概要を教えていただきましょうか」武良は、メルダに提案する。


御読み頂き、ありがとうございます。


楽しんで、いただけてますか?


御意見・御感想・御指摘をいただければ、幸いです。


次回投稿は、3月10日(木)を予定して居ります。

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