1-45.ヴァーチャル実戦演習
「……脳って、なんですか?」メルダは、問う。
「えーと。頭の骨の中にあります。もちろんセルガ様の頭の中にもありますよ」ファルは、どう言えば理解されやすいか、考えながら答える。
「私が考えたりするのも、脳の働きですの?」
「はい。そうです」
「ふ〜ん、すると……」
「? どうされましたか?」
「武良様の『ちーと』も、脳の能力と言う事ですの?」
「えーと。武良様や開祖シン様が、『ユグドラシル・ネットワーク』のエネルギーを引き込んで、『能力に変換する』回路を脳内に組み上げた……と言う事ですね」
「……ごめんなさい。もう、わからないです(メルダ、涙目;)」
「あ、いや、ごめんなさい!!」ファル、パニック!!
神殿の周囲は晴れ。空も高く、視界は遠くまで見通せる。
攻めるにも、守るにも、絶好の天気だ。
ヴァーチャル内での竜神は、本来の巨体に戻り、教会敷地内を、かなりの高速で飛ぶ。
もう少しで教会神殿に、たどり着つく。
一番、二番、三番砲塔、発射!
メルダはファルに、脳内会話で、無言で発令する。
発射!
ファルは、すかさず発射する。
一拍置いて、ニーグ様の左後方へ、五番砲塔発射!
発射!
メルダとファルは、阿吽の呼吸で砲撃する。
「ぬおっ!」
巨体竜神ニーグヘッズは、四方向からの連携取れた砲撃破壊光線に、やむなく神殿直撃コースを外れる。
竜神はこれで七度目の進行だが、多彩な連携砲撃破壊光線に翻弄され、王手を取れない。
「ぬぅ! 笹木武良の組む『あるごりずむ』は有能だの!」竜神は、苦笑いする。
「いいえ。発射のタイミングを決めるのは、メルダさんです」武良は微笑んで、事実を述べる。
「ぬぅ……しかり」竜神は、しぶしぶメルダを認める。
「では、セルガさん。防衛はメルダさんに任せて、ニーグ様を攻撃して下さい」
「『はいっ!』」
セルガ×ケルシーは、元気に答える。すぐさま『水滴型』の攻撃ドローンが多数、飛翔する竜神ニーズヘッグに向かって、飛び出す。
「メルダさんも、ニーグ様に隙あらば、砲撃する様に!」武良は、指示を飛ばす。
「『はい!』」メルダ×ファルが、答える。
「では、ワシも攻撃して良いかの?」竜神は、微笑む。
「どうぞどうぞ、遠慮無く」武良は、笑顔で勧める。
「では、セルガ! 受けて見よ!!」竜神は、深く息を吸う。
竜神の咆哮!!
ヴァオオオオオオオオオオオン!!!!
ヴァーチャル内の巨体の竜神は、大口を開け、極太の『絶対破壊光線』を発射する。
「「『『防御!!』』」」セルガ×ケルシーとメルダ×ファルは、半透明な盾を多数作り出し、竜神の咆哮に備える。
ドドドドドドド
凄まじい質量とエネルギーが、四人の防御盾を襲う。
「「うぐぐぐぐ!」」きゅうん、と、セルガとメルダの頭痛がして来る。
セルガは破壊光線を受け止めながらも、攻撃ドローンを射角に乗せようと、操作する。
『ケルシー! セルガ様とメルダ様の脳内血圧急上昇! セルガ様に、鎮痛剤と降圧剤を投与!』と、ファルはケルシーに進言し、メルダに薬剤投与する。
『了解!!』ケルシーも、セルガに投薬する。
ファル! ありがとう ♪
メルダは頭痛が収まり、少し視野感覚が、広がる。
メルダの視野感覚に、竜神ニーグヘッズの『呼吸』が、わかる。
もう少しで、竜神の咆哮が終わる!
ファル! 三番砲塔全開発射準備!!
三番砲塔リミッター解除! 全開発射いつでもどうぞ!!
竜神の咆哮が、あと少しで終わる!
いま! 発射!!
メルダは、発令する!
ファルは三番砲塔から、竜神の咆哮に負けないエネルギー破壊光線を放つ。
ドゴンッ!!!
「ふごっ!」
竜神は、妙な声をあげる。
砲塔破壊光線は見事に、竜神の咆哮を吐き切った間を突いた。
竜神の翼の付け根の脇腹の柔らかい所に、クリティカル・ヒットする。
そう言えば生身の設定は、竜神だけだった。
仮想空間とは言え、五感もリンクしてたから、仮想竜神にヒットすれば、痛みを感じるよね。
ぐぉお〜ん
竜神の巨体は、みるみる教会敷地を離れ、そばの森に向かって、墜落の轟音を上げながら、落下を始める。
「ドローン三体、追跡!」セルガさんが墜落体制の竜神を、ドローンに追わせる。
ズシイィイイィン!!
地響きを立てて、竜神は、森に墜落する。
「勝負あり! 教会防衛側の勝ちですね」武良は、判定する。
「ぬぅ! もう一度だ!」わき腹を押さえた竜神は、くやしそうに再戦を主張する。
「ニーグ様。このままでは、結果はそう変わりませんよ」
「何故か?」
「ニーグ様と対等に戦闘出来る標的が、これまで見受けられなかったので、ニーグ様の戦法が『力押し』のワンパターンに見受けられます。しばし、戦略を練られた方が、よろしいかと」武良は、冷静に寸表する。
「……むう。しかりである。ならば、隼の戦略あるごりずむの『こぴー』を所望する。自主練をしたいぞ」やっと、わき腹の痛みが引いたのか、背筋を伸ばして要請する。
「承りました」武良は、にこやかに一礼する。
次に武良は、セルガとメルダに向き直る。
「メルダさん。ニーグ様の咆哮が途切れる瞬間の、全開砲撃は御見事でした。セルガさん。ニーグ様の墜落に油断なくドローンを追随させた判断は、御見事です。教会側の勝利、おめでとうございます」武良は寸表と共に、勝利の祝を述べる。
「はぁ、はぁ。ありがとうございます。はぁ。凄まじい緊張感の継続を、はぁ、よ、要求されるのですね! はぁ。ファルの助けがあっても、頭痛がして来ましたは。はぁ、はぁ」メルダさんは、椅子にへばりながら、息も絶え絶えに答える。
「本当ですはね! 頭の中が『ぼーん!』と割り開かれる感じで、破裂しそうな感じに成りますはね!」セルガも、椅子にへばりながら、両手で両側の側頭部を揉む。
「お疲れ様でした。初めて、『使った事が無い』脳の部分まで使わせましたからね。直ぐに、なれますよ。なれましたら、御茶会しながら、複数の戦闘ドローンを操作出来る様になります♪」武良は、にこやかに、なぐさめる。
「え?。『使った事が無い』脳の部分って、どう言う意味ですの?」セルガは疑問を述べる。
「われらの身体で、主に感情や思考をつかさどる臓器が、脳です。しかし、生涯で三割しか使いません。『侍』は、未使用の七割の脳を『生体量子コンピュータ』とみなして活用します」武良は、なるべくわかりやすく、解説する。
「申し訳ありません。武良様の世界の科学技術や、先進医学理論は、理解し切れませんは。でも……『理屈はわからない』けど、ケルシーやファルの補佐の御陰様で、私やメルダがニーグ様に勝利できたのは、事実ですはね」
セルガは、理解できないが、認めようと心に決めた。
「武良様のおっしゃる理屈は、ちっとも理解できませんは。でも、活用させて頂きます。使いこなせる様に、努力致します」セルガは、きっぱり断言する。
「はい。皆様は、スタートラインに付かれました。これからですよ」武良は、セルガに、うなずき返す。
「では、皆さん。上に戻り、休息しませんか。あぁ、メルダさん。寄付の具体的な話を決めましょう」武良は、メルダに話しかける。
「ありがとうございます」メルダは、疲労の表情で、笑顔を返す。
御読み頂き、ありがとうございます。
総話数変更になりましたが、「読みやすさ」のために改稿して見ました。
他に「ここも、読みにくいよ」があれば、御感想にて御指摘下さいませ。
次回投稿は、3月8日(火)を予定して居ります。




