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1-36.公都の台所(4)

ケンダンです。


タイ焼き屋台の店主です。


裏では、反政府組織の、幹部してます。


希望が見えて来ました。

「クソッ!」とある男は、ナイフを突き出して来る。


武良は左手で、男の右手首を掴む。そのまま右肘で、男の右肘を逆方向にへし折る!


ゴキンッ!


「ぐわぁぁあ!」男は地面で、のたうち回る。




有る男は、棍棒を振り下ろして来る。


ぱし。


棍棒の根元を受け、止める。


ゴキッ!


男の膝を、あっさり蹴り折る。


「ぎゃぁあぁぁ!」


折られた男は、そのまま地面で、のたうち回る。


ザッ


クランツの目の前に、立つ。クランツの胸ぐらを左手で掴み、つるし上げる。


「ひぃ!」


ドスン


「ふぐぅ!」


重い右拳を、クランツの腹に、叩き込む。


拳の威力に、クランツの若い身体は、吹き飛ぶ。


ドサッ


「ぐぅぇ! ぐぼぼ」


クランツは、壮絶に吐く。血も交じる。涙も鼻汁も だだ漏れだ。


武良は尚も、クランツに近付く。


「ひぃいい。まて! 待ってくれ!! わ、悪かったよ! 俺がわるかったぁ!」


クランツの、涙声が上がる。


「尋常な勝負を途中で捨てるなら、最初から挑むなっ!! 御前は、取り返しの付かない選択をしたんだ!!!」武良は、かなり怒る。


ブン!


バキッ!


武良はクランツの懇願に構わず、自らを守ろうとして力無く上がって居るクランツの左腕を、右下段蹴りで蹴り飛ばす。


「ふぇぐぁ!!」


クランツは枯れ木の様に、右側に吹き飛ばされ、ごろんごろん転がる。


「……うぁ……」


クランツが反射的に、ふらふらと起き上がると、クランツの左腕は変な方向にひしゃげて居た。


「あ…… いぎゃぁあああぁあぁ!」


脳天にやっと届いた痛みに、のたうち回る。


しかし、ズンズンと武良は、クランツに迫る。


「ひいぃ、やめて来れ! 勘弁して来れ!」クランツは、辛うじて動ける右腕で、わずかに後ずさる。


ぐい


武良は左手で、クランツの胸ぐらを掴んで、高く持ち上げる。


「ひぃいい!」


クランツは、泣き叫ぶ。


ブン!


ガキン!


ケンダンの長剣を、武良は鉄扇で受け止める。


「旦那! 御願いだ! もう、辞めてくれ!!」ケンダンは、叫ぶ。


「ほう。敵対した領軍や国軍に迫られ、剣を突き付けられた最後の時、同様に全員の命乞いをするのか!! それでは遅い!……剣を突き付けられた直後、全員、トドメを刺されて居るだろう!この、実力も伴わない鼻垂れ小僧は、既に死んで居る! 周りの男達もだ!……そんな現実の厳しさを、このクソ小僧に、教えて居ないのか!! 反政府組織とは、戦士にも成り来れて居ない庶民を戦いに巻き込んで、犬死にさせるのか!!」武良はケンダンに、舌鋒(ぜっぽう)鋭く、ぐいぐい迫る。


ケンダンは武良から突き付けられた、『戦士と庶民』の『戦闘力の差』と言う現実に、打ちのめされて動きが止まる。


「特に、この小僧っ子にはだ。『現在の実力』で何が出来るのか、判断する能力が必要だ……出なければ、すぐ死ぬ……受け取れ」


ボロ雑巾の様なクランツを、ケンダンに渡す。


見渡すと、クランツに引き連れられて居た男達は全員、死屍累々に地面に倒れ伏して居る。


「では、治癒魔法を御願い出来ますか?」


「まぁー 派手に暴れられましたわね。でも、丁度良い『御仕置き』かしら♪」セルガさんは、イタズラ坊主達を労わる御上(おかみ)さん風に言い、頭巾のまま、くすりと微笑む。


「では、始めますは♪」セルガさんは、頭巾のまま、背筋を伸ばす。


ラ〜♪ ファナワ〜♪ ヒーリ〜♪


セルガさんは、良い声(ソプラノ)で、唱和を始める。


死屍累々に地面に倒れ伏して居る、男達の身体が、ほの青く輝き始める。

勿論、クランツの身体も、青く輝き出す。


「こ、此れは、『ヴォークの癒し』! え! セルガ神官長さま!?」ケンダンは驚愕の表情にで、頭巾の女性を見る。


「では、この頭巾は、要りませんはね♪」


セルガさんは、頭巾を脱ぐ。綺麗な金髪が、キラリと解ける。綺麗な碧眼が、笑う。


「ふぇ、あ、あれ?」ケンダンの腕の中で、ぐったりして居たクランツが、気が付く。


「ケンダン兄……全身の痛みが……消えた……あれ? 左腕は、普通に動く!!」驚いて、自分の脚で、立ち上がる。


死屍累々に地面に倒れ伏して居た男達も、気が付いたのか、次々に立ち上がり始める。


「ケンダン殿。話の続きをしないか?」武良は、ケンダンに話し掛ける。


「ひぃ!」クランツは、武良にビクつき、ケンダンの陰に隠れる。


「その前に……あんたは……誰だ?」ケンダンは、武良に、基本的な事を問う。


「あぁ。失礼」武良は、頭巾を外す。


「……黒髪に黒瞳、か。珍し……! セルガ神官長様と共に有ると言う事は! あんたが『光の聖剣』の主の、『真の勇者』様か!!」ケンダンは、断定する!


「『(さむらい)』笹木武良と、申す。『光の聖剣』? 此れの事かな」


ヴォン


武良は目の前に、『聖光剣』を現す。


ケンダンも、クランツも、男達も、青い優しい輝きを、某然と見詰める。


「もう『名刺』代わりに成っちゃったな。『光の聖剣』ね♪」


ドン!


「うわ! ケンダン兄! 何するんだよ!」クランツは、急に突き飛ばされて、ケンダン兄に文句を言う。


見れば、ケンダンは片膝を付き、上級者に向ける『戦士の礼』を武良に向け、取って居る。


「ケンダン兄!なんだよ! どしたの?!」


事態を把握できないクランツは、兄の態度の急変に、付いて行けない。


「馬鹿野郎!! 皆もだ!! 『真の勇者』様に、礼をとれ!!」


「「「「えっ! げげっ!! この綺麗な光は、あの、大型魔人を一撃した『光の聖剣』なのかっ!!! そしてこちらは、その剣の主の『真の勇者』さまっ!!!! あぁ! タイ・クォーン教会・神官長セルガ様までっ!!!!!」」」」


「ながいよー♪」武良は、こっそりつぶやいて、苦笑する。


「では、話を聞いて貰えるかな?」 かしこまってしまったケンダンに、もう一度話し掛ける。


「喜んで!!」ケンダンは、更に、頭を下げる。



◯ ◯ ◯



「頭巾の件は、ごめんなさいね♪ 笹木武良様の御名前は、暫く伏せるべきと思ったの。『光の聖剣』の件で、市場が暴動に成ると、困ると思ったもので♪」

セルガさんは申し訳なさそうに、ケンダンを始め、男衆全員に頭を下げる。


( たゆん♪ )


頭を下げた事に寄り、その『魔乳』が揺らぎ♪その深い峡谷がー♪


男衆全員の、目が泳ぎ、視線をそらす。全員が、真っ赤に火照る。


「いやいやいやいや! 滅相もありません!! その御判断は納得です」ケンダンは、片膝を付きながら、恐縮する。


クランツを始め男衆も、膝を付きながら一斉に、うんうんと同意の頷きをする。


「ありがとうございます♪」セルガさんは、ぱぁっと、花が咲いた様な笑顔を魅せる。


男衆も、ほうっと、その笑顔に魅せられた、幸せな笑顔を浮かべる。


セルガさんは、その美貌の笑顔と、( たゆん♪ )で、絶大な人気を誇る様だ。教会のミサでも、セルガさんの説法の順番では、野郎共で、大混雑に成るそうだ。


「ごめんなさい!! 教会の炊き出しを、頂いた事が有るのに。大恩ある教会に、無礼を働きました!! 」

クランツは、当初の尊大な態度は何処に行ったのか、五体投地しかねない程、キチンと頭を下げる。


「そうだね。私の頭を叩く前に、もう少し『敵』を観察しないとね」武良は、クランツに微笑む。


「ひぃ! は、はい! 肝に命じますっ!!!」クランツは、また頭を下げる。


「御節介を、もう一つ焼こう。私が、クランツと戦う事を判断したのは、何処だと思うかな?」微笑む。


「え?……えっ!?」クランツは、突然の禅問答に戸惑う。


「確実に『勝てる』からだよ♪」武良は、にやりと笑う。


「へ? は、はぁ」クランツは、拍子抜けした表情に成る。


「その見極めを会得出来なければ、クランツ。君はこの魔節を、生き抜くのは難しく成るだろう」武良は、ほろ苦い表情に成る。


「へ! ふぐっ」クランツの喉から、妙な音が出る。


「ゆ、勇者様! 私は、ど、どうすれば、宜しいでしょうか?!」クランツは、何とか立ち直り、問うて来る。


「真似をすることだ。尊敬出来る相手を、徹底的にパクれ」真面目な表情で、断定する。


「へ?」クランツはまた、拍子抜けた顔をする。


「真似て居る際に、『何故この判断をしたのか?』と、色んな方向から、考えて見なさい」にこりと、笑う。


おおお。


男衆から、納得の声が漏れる。


「クランツ。君の尊敬する人物は、誰かな?」問う。


「へ? は、はい。えー。父と……ケンダン兄です!」胸を張って、断言する。


「丁度良かった。父上や、兄上の指揮した過去の作戦でも良い。何故そう言う判断をしたのか。色々と想定して考えて見る事だ。そして、考えて考えて分からなければ、ケンダン兄に聞いて見るんだ。そうすれば、見えて来ると思う」和やかに、述べる。


「……はい」クランツの瞳に、仄かに、火が灯る。


ケンダンは、無言で、深々と武良に一礼する。


「さて、ケンダン殿。此方に座って貰おう。そして、軍議をしようか♪」


「は!」すっかり戦士の顔に戻ったケンダンは、素早くテーブルに座る。


「もう一つ、情報を乗せよう。公都魔核は、教会(セルガ)(勇者)が押さえたよ。現侯爵も、黙らせた。だから、さっきの条件は、確定だね」ごろりと、事実を披露する。


「え!」ケンダンは、驚愕に固まる。


「どうだろう。一度、矛先を収めて貰えないだろうか?」武良は、真摯に要請する。


「………命令では、無いのですね」ケンダンは、伺う。


「『怒り』は、命令では、和らがないよ……おこがましいが、信頼を、お互いに再構築させて貰うしか無い。先代様の様な、信頼を」


ケンダンも、セルガさんも、男衆も、懐かしさに遠い目をする。


「………分かりました。『今回』は、様子を、見させていただきましょう」


「ありがとう♪」武良は、恭しく、首を垂れる。


ざわり


男衆が、ざわめく。


「? 何かな?」


「……驚いて居るのです。勇者様が、頭を下げた事を」タムがつぶやく。


「え? 拳を交えた拳友に、礼を払うのは、当たり前だろう?」武良は、驚く。


男衆も、また驚く。


「やっぱり、おかしな旦那だね♪」ケンダンは、『しょうがないなぁ』とばかりに、気さくに苦笑する。


「え? 私、おかしいですか?」セルガさんに、伺う。


「そうですはね。こちらでは、貴人は庶民の『生殺与奪』を握って居りますので、言動は一方的に成りますは。ので、貴人な武良様が頭を下げるのは、驚きと感じますはね。武良様は、御嫌いそうですはね♪」


「うん。真っ平御免だね」武良は、憮然と不満げだ。


男衆の何人かは武良の、ざっくばらんな言動に、にやりとわらう。


「まぁいいや。じゃ、ケンダン殿。これを収めていただこう」武良は、一枚の用紙を、ケンダンに示す。


「ほう……おう!」


ケンダンは、読み進める内に、驚愕に変わる。先程話した内容の箇条書きが記載されて居た。最後に、タイ・クォーン教会の紋章も入って居る。その下に笹木武良と、神官長セルガさんのサイン入りだ。

この用紙は、タイ・クォーン教会が公文書に使用する用紙だ。

つまり、先程の口頭の条件が、明文化された訳だ。

もし不履行で、ケンダン側がこの『覚書』を盾に、公的に訴えれば、ケンダン側が100%勝訴する。


「それを、君達の幹部連中に回覧して欲しい。その上で、延期を検討して欲しい」


「旦那。一つ足り無いのでは?」


「? 何だろう?」


「我々への、武装解除ですよ。現侯爵は、先ずそれを持ち出します」


「そんな無茶なー。武装は『現侯爵が恐い』からだし。武装解除は、この内容が履行された後に、検討して貰えばいいよ」


「……良いんですか?」


「物質が約束通りに返納されて、安心安全が確立して、信頼が再構築出来れば、自然と武器から手を離すよ。何より、生産物の世話に集中したいだろうし」


ほぉぉ


男衆は、ケンダンの後ろで武良の意見に、いちいち頷き、納得する。


「……まったく。かわった旦那だね。我々の心情・事情を、理解し過ぎてるし」


うんうん 。 また。男衆が頷く。



「どの世界だろうと、『衣食足りて、礼節を知る』だよね」武良は、言う。


「違いない」ケンダンは、感心する。


「理解して貰えて、嬉しいよ。では、ケンダン殿。これを所持して」と、タイ・クォーン教会紋章入りの、通話メダリオンを渡す。


「うぇ! こんな高価な物を!」


「物質引き渡しは、準備出来次第出立するけど、突発的な諍いを防ぐ為に、双方向で『打ち合わせ』しないと。絶対に、お互いに、死傷者を出してはいけない」武良は、ピシリと述べる。


「……確かに」ケンダンと男衆は、うんうんと、頷く。


「と言う訳で、御仲間から何か質問・疑問等が出たら、メダリオンで24時間遠慮無く連絡して。私の使い魔が、先ず取り次ぐから。打ち合わせが出来次第、物質を送り出すから」


「了解した!」ケンダンは、背筋を伸ばして、嬉しそうに承諾する。


男衆も、にこにこ安堵の表情だ。


「あぁ! そうだ。公都の病人とか負傷者等の状況は、どうだろう?。セルガさん。前公爵様の時は、どうされてましたか?」


「緊急救急等、教会救護院で受け付けて居ました。前公爵様も、予算を組んで頂きましたは……現侯爵は、『無駄だ!』と、予算をバッサリ……」


「早期に再開しましょう。ケンダン殿。自ら移動出来る病人は、救護院へ向かわせて。動けない。移動出来ない方々を発見したら、やはりメダリオンで知らせて。救急搬送隊を差し向けるよ」

武良は、サクサク決断して行く。ケンダンに渡した覚書を、一度戻して貰い、追加で口頭内容を、書き加える。


余りにも早い決裁に、ケンダンと男衆は、目を白黒させる。


「あとはー……何か……あるかな?」武良は、ケンダンとセルガさんを見比べる。


「んー。無い事も無いですは♪」セルガさんは、立ち上がる。


「炊き出しを、見に行きましょう」


御読み頂き、ありがとうございます。


殺陣は、難しい。


リアリティ、出てもすか?


次回投稿は、2月7日(日)です♪


宜しくお願い致します。



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