1-35.公都の台所(3)
「タイ・クォーン教会・衛兵隊の、タムです」
「無力感とは、こう言うことなのかなと、思いました」
「でも、かれは、いつでも何かを考えてるんですよ」
「……そう、いつも未来を、考えてるんです」
「どこに、導かれるんでしょうかね……できる限り、付いて行ければ……」
「そこの頭巾男! 顔を見せろ。名を名乗れ!!」警護人を任せている、衛兵隊タム位の年齢だろうか、何処と無くケンダンに似ている様な。
「ケンダン殿 ……『筋脳』っぽい彼は、何者かな?」武良は小僧っ子を無視して、渋い表情の、ケンダンに聞いてみる。
「……末の弟だ。後先考え無しでな」ケンダンは、渋い表情のままだ。
「全く。私もケンダン殿も『反政府組織』の言葉を、なるべく使わずに、『根回し』をしようと、気を配って居たのに……わざわざ取り囲んで、『反政府組織』で御座います、と宣言した様なものではないか……肉親の迂闊者か……ケンダン殿も、苦労させられてるね」武良は、ほろ苦く微笑む。
「……長兄の人生なんぞ、そんなもんだ……しかし、何で、反政府組織だと、分かったのかな?」ケンダンは、仏頂面のままだ。
「ケンダン兄! 何を悠長に話しているんだ! ちょいと痛めつければ、口も軽くなるさ!!」
「「黙れっ!!」」武良と、ケンダンの声が、ハモる。
ケンダンの末弟と言う筋脳小僧っ子は、気迫ある二人の叱責に、思わず身をすくめる。
武良とケンダンは、思わず目を合わせる。
武良は、『どうぞ』と、右手を上げてケンダンに譲る。
「……末弟よ。タイ公爵と、同類に堕ちてどうする!!」ケンダンは、戦場音楽溢れる中でも、通る声で大叱責する!
「け、ケンダン兄……悪かったよぉ。そんなに怒らないでくれよぉ」末弟と呼ばれた男や、周りの野郎共は、ケンダンの凄まじい叱責に狼狽える……そりゃぁ、怖いね。
「ケンダン兄、待ってくれ。今は大事な時の前だ。こんな不審な野郎は、放って置けない。尋問はすべきだ」
反対側の集団の中央に立って居る、長身の青年が、野太い声を上げる……君も、ケンダンの弟か。ケンダンを少し若返らせると、渋いイケメンになるんだね。
「変わった旦那。やっぱり、御伺いするしか有りませんな。どう言う目的か、話して頂きましょう」
「えーと。『不当に搾取した、税収と収穫物を返したい』てのと。『前公爵様の様な統治に戻す』。だね。だから君ら『反政府組織』には、『怒りを鎮めて、鉾先を収めて貰いたい』。と言う目的だが」武良は、なるべく正直に話す。
「いや。何故、そうしようと言う理由ですよ」ケンダンは、微妙に噛み合わない話に、眉を顰める。
「……庶民の為、だけど」当たり前の事を、聞かれても、な表情に成る。
「……いや。あんた自身の『目的』を、聞きたいんです」やはり、噛み合わない!
「え? 私自身の目的?……って、何の事?」武良も、疑問の表情に成る。
「……えー、何と言ったら良いんだ? あー……あ。あんた自身の『利益』は何だ? 何か『利益』に成るカラクリが、有るんだろ」これでどうだ? と、問う。
「あー! 成る程! 私自身の利益ね」思わず、セルガさんを見る。
セルガさんの口元も、苦笑いして居る。
これは、理解されないなぁ。利益無視の行いだもんなぁ……セルガさん、どうしましょうかね。
はい♪ 此れはもう、正体を明かした方が、宜しいかと思いますは。
そうしますか。
ヒュン
ガキン!
「クランツ! 何をする!!」
武良の頭に、いきなり振り下ろされた棍棒を、無意識に右手に構えた鉄扇で、受けとめる。
「ケンダン兄! コイツは公爵の犬だ!! 俺たちを騙そうとして、耳心地良い話で、釣る気だ!!! 騙されるな!!」
「馬鹿者!!! そんな決め付けこそ、タイ公爵のやり口ではないかっ! 棒を下ろせ!」
やれやれー。この坊やは、教育し無くては成りませんねぇ。
致し方在りませんわねー。
武良は、ずいと立ち上がる。中々上背が有るので、衛兵隊やケンダン以外、頭一つ高く成る。そして……
武良から、一瞬で湧き上がる凄まじい気が、重苦しく周囲を圧倒する。
ケンダン、クランツ、ケンダン次弟や、周りの男達の顔色が、青く成る。
勿論、警護に付いていた面々も、初めての武良の迫力に、驚愕する。
なんだ? この猛獣の様な、武良様の圧倒的な気迫は?!……これは、勇者様の殺気か!!!
鼻垂れ小僧のクランツ。軽率な御前は、武人に武具を向けた意味が、わかって居るのか? 戦いを挑まれたからには、私は堂々と受けて立つ!
武良の鋭い眼光がクランツを射抜き、静かに重い声が、クランツの身を縛る。
「あ、え、その……」クランツは、圧倒的で濃密な武良の『殺気』に、ガチガチ歯を鳴らし、すくみ上がる。こんな『恐怖』は、初めてだ……
先程の威勢はどうした! ケンダン兄が居なければ、喚けないのか! 後戻り出来無い、尋常な勝負を、覚悟せよ!。
「まってくれ! 旦那!」ケンダンは、フォローし様とする。
ドン! バキン!!
「うわっ!」
クランツの棍棒に、武良の重い右拳が、鋭く入る!!
クランツの棍棒は、呆気なく砕け散り、クランツの身体は、後方に吹き飛ばされる。後方に立って居た男たちも、吹き飛ばされる。
武良は、ずいと前に進む。
「きえい!」
「くぉら、この!!」
ブン!
「「うわぁ!」」
釣られて武良に殴り掛かった迂闊な男二人は、武良の身振り一つで、左右に吹き飛ばされる。
武良は、ずんずん、クランツに近付く。
「「「うおおおおお!」」」
慌てた男達は、釣られて、武良に一斉に襲い掛かる。
が、男達の攻撃は、武良の体捌きに、カスリもしない。
武良は、優雅に舞う様な拳舞で、男達の攻撃をかいくぐる。
ドン!
武良が有る男の懐に、背中から入る。すぐさま男は、武良の『背中』に、吹き飛ばされる。
男達は武良の身体の何処かに触れると、次々と吹き飛ばされ、遠くにごろごろ転がる。
「武良様って……」カムランが、ポカンとした表情で、つぶやく。
「人間同士の体術でも、ごっつい達人なんだ……」タムも、ポカンとつぶやく。
「うわぁ。ますます、人間じゃ無い……」ヤバも、つぶやく。
武良は、するすると動く体捌きの中、ヤバをちらりと睨む。
「ヤバい!地獄耳だぞ!!」ロムレスは、肩をすくめる。
御読み頂き、ありがとうございます。
殺陣と言うか、格闘技のリアル感は、出てますでしょうか?。
次回投稿は、2月4日(木)を予定して居ます。
宜しく御願い致します。




