1-32.『侍』ちーと。
「メルダ様、失礼しまーす」
メイドはそぅっと、メルダの部屋のドアの鍵を開ける。
そぅっと、入室して行く。
薄暗い室内を、寝室へ向かう。
寝室入口から、ベッドを伺う。
メルダは、着の身着のまま、ベッドに倒れ伏して居た。
「ではー。清浄!」
メルダの身体は、薄っすら紅く輝く。
「よし」メイドは一つ頷き、メルダを抱え上げる。
「うわぁ、軽い身体」メイドは、感心する。
手早くベッドの掛布をめくり、素早くメルダをベッドに寝かす。
「よし!……お疲れ様でした」メイドは、メルダに微笑み掛けて、ゆっくり静かに、退出する。
公都魔核は『抑えた』ので、公爵亭の迎賓室で、武良とセルガは、タキタルから振る舞い茶を頂く。
「『武良様って、怖い』」セルガ×ケルシーの、つぶやいた言葉がハモる。
「なんですか!?急に!」武良は、困惑して、セルガ×ケルシーを見る。
「あー……私も、同感ですなぁ」タキタル隊長も、苦笑する。
「あう!タキタル隊長まで!!」武良は、ショックを受ける!
「『でしょう!こんなにも簡単に、公都を制圧するなんて!』」セルガ×ケルシーは、ハモりながら、興奮する。
「ちょっと!『公都を制圧』なんて、人聞きの悪い表現をしないで下さいよ。ちゃんと公爵様に話を通して、ペルガンと『仲良く成っただけ』では無いですか!見てたでしょ!」武良は、セルガ×ケルシーに、意義を唱える。
「『仲良くって、レベルでは有りませんは!石頭のペルガンに、命令権第一位を、あっさり承認させるなんて!……実は、現公爵は、命令権第五位ですのよ』」セルガ×ケルシーは、武良にボヤく。
「五位?」武良の両眉は、疑問形に成る。
「先代様が、四位だそうですは」セルガは、思案顔で述べる。
「成る程!……では、現公爵は、現在六位と言う訳ですね」武良は、納得に頷く。
「そうなりますわね。しかし、こうもあっさりと……」セルガは、まだ、納得行かない顔に成る。
「そりゃぁ、『真の勇者』様ですからねぇ。魔道装置の人工脳からの扱いも、別格扱いですよ」タキタル隊長は、断定的に述べる。
「『真の勇者』様とは言え、此処まで理不尽ですと、納得行かなく成りますは。どんな『ちーと』やらを、使われましたの?」セルガ×ケルシーは、ずい!と、武良に迫る。( たゆん♪ )と、その魔乳が、魅惑的に揺れる。
「『チート』、ですか!?」武良は、視線を必死で、魔乳から外す。
「あぁ。異世界からの勇者様方々は、理不尽な能力を、良く『ちーと』なる御言葉で使われますね。武良様の『ちーと』とは、どんな御能力でしょうか?」タキタル隊長も、もう少し詳しく問うて来る。
「そうですねぇ。『侍』の主な『チート』の一つとして、『念力と念動力』があります。念力は、遠方の物を、『侍』のイメージ通りに動かせます。念動力は、『侍』を動かし、空中飛行が出来ます。
これらは、様々な応用が効くのです。自らに向ければ、無敵の『身体強化』と成りますし。また、外部に放つ波長を調整すれば、『木・火・土・金・水』等『森羅万象』の属性を持たせる事が出来ます。
まぁ、最大のチートは、『魔力切れが無い』事でしょうね。『(仮)ユグドラシル・ネットワーク』からの、『無限の魔力供給』がありますので」
「『え?無限の魔力!?』」セルガ×ケルシーの、驚きの声が、ハモる。
「魔力切れが、無いですとっ!?」タキタル隊長も、改めて驚く。
武良は、右の手の平を、目の前で開く。
小さなペンダント・ヘッド程の『聖光剣』を、中空に表す。
「この聖光剣も、『魔力に光子を乗せて、集約させる』イメージで作ります。『(仮)ユグドラシル・ネットワーク』からの『無限の魔力』が無ければ、作れませんね」武良は、苦笑する。
右手で『聖光剣』を握り、消す。
「『え。あの。それは、機密事項では?』」セルガ×ケルシーは、あっさり明かされる『侍』の概要に、戸惑う様にハモる。
「御二人とも、信頼してますよ♪最も、美味い料理の話をを聞いただけで、美味い料理が再現出来る訳では有りませんからね。また『(仮)ユグドラシル・ネットワーク』は、夜空の無数の星の様に、計り知れませんし。迂闊に手を出すと、『(仮)ユグドラシル・ネットワーク』に、手を出した物は『喰われ』ます」武良は、苦笑いする。
「「『うーん;』」」
セルガ×ケルシーとタキタル隊長は、使用者を滅するかもしれない、得体の知れ無い『(仮)ユグドラシル・ネットワーク』を、平然と活用する笹木武良『真の勇者』様に、得体の知れ無い畏怖を感じる。
「『その……武良様は、その、『(仮)ユグドラシル・ネットワーク』と言う『存在』と共に有る事は、恐ろしくは有りませんの?』」セルガ×ケルシーは、素直に問う。
「成る程。通常の神経では、そうなりますよね」武良は、ほろ苦く微笑む。
カップを取り上げ、ゆっくり茶を喫する。此方の茶は、爽やかな香りと喉越しで、ハーブティーの様だ。
「私は一度、『(仮)ユグドラシル・ネットワーク』の『森羅万象の情報の濁流』に、この魂ごと飛び込んだ事が有ります」懐かしそうな表情に、変わる。
「薄れる意識の中でしたが……何故か、懐かしさを感じて居ました……まるで『母の胎内』に戻れた様な……」遠い目をする。
「「『………』」」セルガ×ケルシーとタキタル隊長は武良の、安らいだ表情に、感じ入る。
『其れこそ、正に、『ユグドラシル』だの』急に、セルガ×ケルシーのペンダント・ヘッドから、竜神ニーズヘッグの声がする。
「ははぁ。ケルシー経由で、聞かれてましたか。ニーグ様の御墨付きを頂けた事で、(仮)を削除しようかな♪」武良は、何事も無い様に、微笑む。
『おう。『ユグドラシル』は『森羅万象』の『母胎』じゃし。御主の感覚は、正しい。また、聞いて居て気が付いた。御主の使い魔の『隼』は、笹木武良の『脳髄』の中に居るな』竜神は、断定する。
「「『脳髄の中に?』」」
セルガ×ケルシーとタキタル隊長は、今一つピンと来ない。
「わかりますか♪人族の脳髄は生涯で通常、三割しか使われません。残り7割を仮想『生体頭脳』として、隼を住まわせても問題ありません」武良は、にこりと微笑む。
『笹木武良と隼と『ユグドラシル』は、相互に影響し合い、同期して居る。それも、自然発生の様に、見事に調和して居るわ。……我には、ここまでの調和は出来ぬ』呆れた様な、声を出す。
「ありがとうございます。隼の基本は、我が師の『開祖シン』が、組みました♪また……隼の『動き』の大半は、『侍』クラウドに有りますので、脳髄の負担は軽いですよ」武良は、朗らかに述べる。
『成る程。外部にも、『働き』を置くか。勉学に成るの♪主の師匠とも、意見交換して見たいのぉ♪よし!笹木武良。礼をするぞ』竜神ニーグは、宣言する。
「は?いやいや、何もして居りませんよ!」武良は、恐縮する。
『礼は、我の『竜眼』じゃ。『ユグドラシル』の『森羅万象』も『活用』して居る。元来『ユグドラシル』を活用して居った、笹木武良にも『竜眼』を、活用出来るじゃろ♪』
『!……此れハ!『検索の深度』ガ、べらぼうに深く成りましタ!! AR(拡張現実)表示内容ガ、詳しく成りましタ!! 更にハ、知識・記憶・イメージ伝達が可能デ、『初見なのニ、相手を知って居る』状態まで、知る事が出来まス!!』隼が、叫ぶように報告して来る。
「うわぁ♪……恐縮です。ありがとうございます」武良は、嬉しそうに、見えない竜神に一礼する。
『うむ。笹木武良との仕事は面白い。よし! メルダ! 再開するぞ♪』
『えぇぇー。もう少し、休ませて下さいましー』副司祭メルダの、弱弱しい声も聞こえて来る。
ヤバい!!
武良とセルガ×ケルシーの思考が、シンクロする。
ケルシー、メルダさんの健康状態!!
えー。身体体調は低め安定して居りますが、精神的負荷は、かなり……
「えーと。竜神様。メルダさんは、か弱い人族女性です……もう少し休息させてあげないと、メルダさんの脳髄の働きは、低下してしまうかと・・・」武良は、申し入れる。
『うーん。もう少しで、メルダと同期出来る魔核の『芯』が出来るのじゃが…』竜神は、残念がる。
「えーと。では、隼に「仮想人族脳波」のプログラムを提供させます。メルダさんの脳波を仮想出来ます。それで、同期調整は如何でしょうか」提案する。
『ほほう♪面白い。渡してくれ♪』竜神は、喜ぶ。
「では、隼。ケルシー経由で、渡してくれおくれ」隼に、促す。
『でハ、ケルシー。こちらでス』隼は、ケルシーに、パスを回す。
『は、はい。まぁ。へえぇー』受け取ったケルシーは、データに感心する。
『これ、ケルシー。早く回せ!』竜神は、諌める。
『あ、はいはい』ケルシーは、我に帰り、データを竜神に回す。
『よし。ほほぅ。成る程……笹木武良。本当に、主は面白い♪』竜神は、最新のオモチャを受け取った子供の様に、喜ぶ。
「ありがとうございます。では、メルダさんを一度、自室で休ませて宜しいでしょうか?」再度、促す。
『おう! いかん。よしメルダ。大義であったの』竜神は、メルダを労わる。
『は、はぁひ』メルダは、弱弱しい声で答える。
「ケルシー。メルダさんを、自室に転移出来るかな?」
『承り♪ では、メルダ様、送りますよ』
『はぁいぃ』
『……はい♪ ベッドの目前に送りましたは。・・・いま、横に成られました』
「ケルシー。メルダにメイドを向わせて」セルガさんは、心配そうに命ずる。
『承り♪ 発令しました♪』
『では、笹木武良。調整を続ける。又の!』
竜神との通話は、終わる。
「・・・えーと。武良様」セルガは、不安そうに問うて来る。
「はい」武良は、セルガに向く。
「私もケルシーと無言念話してますけど、私の脳内に、ケルシーが居りますの?」不安そうに、問うて来る。
「いえ。ケルシーとの相性が良いのです。ケルシーは、聖魔核の人工脳の中に居ます。ただ、セルガさんとケルシーの波長が、ピッタリ合って居るので、時間差無く脳内無言会話が出来るのです」武良は、笑顔で答える。
「まぁ♪」ホッと、セルガさんは、安堵する。
「やっぱり、いけいけ×どんどんで、息もピッタリなんでしょう♪」ニヤリと、微笑む。
「『えぇー』」セルガ×ケルシーの、抗議の声が、ハモる。
御読み頂き、ありがとうございます。
次回投稿は、1月28日(木)と成ります。
宜しく御願い致します。




