1-27.迂闊(うかつ)
うわー
600年ぶりに、目覚めたのに。
えー
そんなぁー
聖魔核のケルシーです。
本当に、王侯貴族なんて、600年前から無用の長物ですのよ!
そこら辺、笹木武良勇者様って、お分かりなのかしら?
セルガの額に、金色に輝く、タイ・クォーンの紋章が現れる。
「『さぁ!目覚めなさい!タイ・クォーン!!』」
セルガは天に向かい、両手を勢い良く差し上げる。
(ぶるん!)魔乳が、激しい地殻変動を起こす!!
しーん
「『……あれ?』」両手を上げていたセルガは、戸惑いながら、両手を半分降ろす。
「……やれやれ。竜神様。『初代神官長ケル・シェルフィ』さん『も』、『迂闊』さんでしたか?」武良は、竜神ニーズヘッグに、問う。
「ガーズン。彼女には、『詰めが甘い!』と、何度も小言を言った記憶が……」竜神ニーズヘッグは、情け無い気持ちが蘇ったのか、苦々しい表情で項垂れる。
「ケルシー。私やセルガさんが、何の為に聖魔核の洞に来たと、思うかな?」武良は、やれやれと、ケルシーに問う。
「『えっ。あっ!聖魔核の調整……』」今更、セルガさんの『記憶』を振り返ったのか、わたわた慌て始める。
「そうだ。聖魔核の増強後まで『猫を被って』居れば良かったのにな」残念。と武良は、苦笑いする。
「『どの族』だろうと、常識、魔道武器を放とうとする者は、残存魔力を確かめる物だが……」竜神は、心底呆れる。
「タイ・クォーン教会は、伝統的に『いけいけ性格』の方が、神官長に就任され易いのですか?」竜神に、話を振る。
「テルガンヌ。『とにかく明るい』『前向き』な娘が、選ばれ易かったなぁ」竜神は、苦笑を浮かべ、答える。
「『そ、それは。セルガ様まで、『迂闊』て、事よ! 現在の言動も、セルガ様御自身に記憶が残るのだからね!』」
「では、返しなさい」武良は、キッパリと命ずる。
「『……えー……やだ』」ケルシーは、萎む。
「では、致し方無い。隼」武良は、隼へ発令する。
『はイ』すぐさま、隼の返答がする。
「『えっ!』きゃっ!!」セルガさんは、急にふらつく。
武良は、素早くセルガの肩を支える。
『あれ?セルガ様との同期が強制解除された?え?私の命令が、『神殿武器管制ソフト』に通ら無い!何で!?』ケルシーは、聖魔核の中かで、慌てる。
「……ど、どうせ私は『迂闊』デスわよ……」額に、タイ・クォーン教会の紋章がうかんだままのセルガは、自我を取り戻し、哀しく項垂れる。
「教会運営には、『前向き』な御方が適任ですよ♪『細かい事』は、『周り』に任せて置けば良いのです」武良は、明るく微笑む。
「そ、そうですか?」武良と、顔が近い事に気が付いたセルガは、少し赤くなる。
「副司祭メルダの事かの?うむ。彼女は、 一生懸命ではないか。まぁ、甘え過ぎは宜しく無いが」
竜神は、副司祭メルダの辿々しい竜語を思い出しながら、苦笑する。
『ねぇ!無視しないで!何で急に!!』ケルシーは、聖魔核の中から、喚く。
なんで?と問われても。
『侍』として常に、二手三手先の最悪な事態を想定して行動して居る武良は、このぐらいのトラップは、当たり前なのだが。
「あぁ。隼に『狸寝入り』と『防御』を、指示してたんだ。何が出るか、分からなかったからね」武良は、軽く言う。
「ふぅむ、流石だ。多くの『称号』持だけ有るな。強かな事で、宜しい」竜神は、納得した様に、宣う。
「このまま、セルガさんの管理下に置きたいと思います。宜しいでしょうか」竜神に、確認を取る。
「宜しかろう。『真の勇者』笹木武良殿の御意見を、承った」竜神ニーズヘッグは、自分と余裕を持って戦える武良に敬意を評し、謹んで一礼する。
『えー。そんなぁ』ケルシーは、聖魔核の中でボヤく。
「ありがとうございます。恐縮です」武良は竜神より、敬意を持って、深々と一礼する。
竜神は、笹木武良の深々と行う一礼に、苦笑いする。
確実に武良は、竜神である自分より、はるか〜に強い。
この世界の能力者の上下関係は、弱肉強食が基準だ。
だから上級強者の竜神は、ひろく人民に、竜神様と敬われて居る。
ので、竜神より絶対強者である武良は、自分に尊大な態度を取るのが当たり前なのだ。
が、笹木武良は、深い敬意を持ってくれた。
それだけで竜神は、笹木武良には『心技体で、かなわんな』と納得し、彼を気に入り、好意を持つ。
「笹木武良。気に入ったぞ。はっはっはっは!」竜神は、高笑いする。
「そうでしょう♪ 気持ち良い方でしょう♪」急に、ワードマンさんが、にこにこ笑顔で二人の側に顕現する。
「なんだ、ワードマン。居たのか。ならば先に、止めれば良いだろうに」竜神は、ボヤく。
「竜神様には、『拳の会話』が一番、武良様の御理解が早いと思いまして」ワードマンさんは、にっこり笑う。
竜神は、一瞬放心する。が、直ぐに、ニヤリと笑う。
「違い無い」
竜神ニーズヘッグは、武良を振り向く。
「笹木武良。今後の存念は?」竜神は、認めた武良の、意見を伺う。
「色々『構想』は有ります。そこで、如何でしょう。教会神殿で、私の世界の美味い酒を竜神様に供えさせて頂き、御召し上がりながら、説明させて頂きたいのですが」武良は、微笑みながら、右手で『酒を呑む』動作をする。
「おう♪ 其れは気が利くな。流石歴戦の勇者だ♪」竜神は、ニヤリと微笑む。
「!武良様!『ぶらんでー』とか『わいん』とか、御在ますの♪?」セルガさんの鼻息が、荒くなる。
「はい♪『マンドゥリン・バー』の御酒は、全て召し上がれますよ♪」
「まぁ。もしかして、『かくてる』も!?」
「はい♪」
「わーい♪」
「セルガ殿。勇者殿の世界の酒は、そんなに美味いのか?」竜神は、歓喜するセルガに、問う。
「はい♪ 最高ですは!ねぇ。お料理は、如何かしら♪?」
「振る舞わせて、頂きましょう♪」
「わーい♪ わーい♪」
「……やはり、(セルガさんの明るさは)神官長に適任ですな」武良は、竜神に囁く。
「デルカン♪」竜神ニーズヘッグも、微笑む。
「あぁ。ケルシー。セルガさんのネックレスに成っておくれ」
『ぶぅー。はーい、はい』ケルシーは不貞腐れ、どこか諦めた返答をする。
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