1-24.思いやりは、裏腹に
セルガです。
双子の姉妹なんて、近過ぎて、言えなく成る事が山程有ります。
でも今度は、心置き無く、言い合いたい。
間に合うかどうかは、どうでも良いんです。
この機会に、取っ捕まえてやります。
逃がしません事よ!セルナ!!
「此処が、『教会聖魔核の洞』なのですね。
魔力式?の『神官長専用エレベーター』にて、かなり地下深くまで、降りて来た。其処は、東京ドームより、やや小さい広さと高さの洞窟だった。地脈の魔力のせいなのか、天井や地面は仄かに光って居り、暗くは無い。
「はい。ヴォーク神の御導きで地脈を確認し、初代神官長と当時の有能な魔道技師が、聖魔核の位置や魔道式を設計されたそうですは」セルガさんは、伝承の通りに伝える。
「私が天使に天昇する、生前の話なのです。私も詳しくは、把握して居りません」ワードマンさんも、頭を捻る。
「……こちらならば、今朝遭遇した人物の事を、セルガさんに話しても、誰にも聴かれませんね」武良は、青く光る『聖魔核』を眺めながら、セルガさんに伺う。
「え!?」セルガさんは、急な話のフリに、戸惑う。
「此方を、御覧下さい」
ヴン
洞窟の地面に、教会広場のベンチに座る、セルナの静止画像が立ち上がる。
「!!セルナ!!」セルガさんは、一目で、心底驚く。
「こ、この背景は、教会公園の物! セルナが、ここの公園に!?」慌てて武良を振り向き、問うて来る。
「はい。開祖シンと私が、今朝、鍛錬中に急に背後に現れました……それで、セルガさん御自身は、妹さんの行方を、どの様に把握されて居られますか?」武良は、真摯にセルガに問う。
「ゆ、行方!?」セルガはまた、目を泳がせる、狼狽える。
しかし武良は、ゆったりと、セルガが落ち着くのを待つ。
ふっ
落ち着いてきたセルガは、一つ溜め息をつき、ぽつりぽつりと語り始める。
「セルナは幼い頃から、何時も私の後ろを付いて来る、大人しい娘でした。とても愛おしい妹です……15歳で共に成人を迎えた時、私は神官長に、セルナは副司祭として、二人は力を合わせて、この教会を切り盛りし始めました」
遠い目に成る。
「その頃は、先代公爵様でした。先代様は庶民の事を思いやり、王都からの増税要求に教会と共に、抵抗してくれて居たのです。王都の傀儡に成り掛けた、年少の拙い私達おも補佐して頂けて。私が今日あるのは、先代公爵様の御陰様です」
視線が地面に落ちる。
「しかし、四年前の例大祭の最中、忽然とセルナは、姿を消したのです。私は自ら、教会の総員に、細やかな聞き取りを行いました。しかし、窓から抜け出した形跡も無く、自室に入るのを確認されたのを最後に、彼女は、朝靄の様に、消えたのです」
途方に暮れる、表情に成る。
「……セルナは、セルガと異なり、物静かな娘でした。しかし、その胸の内は、激しい怒りの情熱を燃やして居たのです。特に、理不尽な、王侯貴族には」ワードマンさんは、消沈の表情に成る。
「そう言えば、現在の副司祭のメルダと同様に、教会運営に四苦八苦してましたは。無限に湧き出る、困窮する庶民を、どう救済すれば良いのか……妹は、『根元は、王侯貴族にあるのよ。庶民を理不尽から、解放しないと』と、何度も意見してくれましたは……」セルガさんは、寂しそうに微笑む。
セルガさんは、また、遠い目をする。
「ですが、それは、ヤーディン大国全体に、革命を起こす事に成る……革命を成功させるには、どれだけの血が流されるのかしら。そうセルナに、言い聞かせて、自重させて居ました……そして、セルナは……消えました」セルガさんの瞳から、すっと、ひとすじの涙が、こぼれる。
「……成る程、魔王は『セルナさんの深い絶望』に、つけ込んだのですね。そして、セルナさんも、魔王を『絶望の中の希望』として、受け容れたのですね」武良は、沈痛な表情に成る。
「「魔王!?」」セルガさんと、ワードマンさんの驚愕が、ハモる。
「セルナさんと、魔王の発言が混ざりますが……セルナさんの意見です。御聞き下さい。再生します」武良は、眈々と促す。
ヴン
セルナさんの静止画像が、動き出す。
『此の身体は、セルガ姉さんと双子の、妹セルナの身体よ……セルナは自ら進んで、最大最強の魔王と契約を結んだから、私との魂の融合立が高いのよ。だからセルナの記憶も、ほぼ引き継いで居るは』
ヴン
『庶民を、雑草としか考え無い、王侯貴族なぞ、無用だは。王侯貴族の勢力争いの、『手駒』でしか無い勇者や勇者系譜もね。だから魔王の最大最強の力で、全て、すり潰すは。そして庶民を、王侯貴族から、解放するの』セルナは、きっぱり宣言する。
ヴン
(私は庶民の為に、腐敗政治の王族を打ち倒せる強い魔力を望んだの。庶民の為と言いながら、王族も補佐するセルガとは、目指す処は異なるは)
ヴン
セルナさんの動画は、静止する。
「……です」武良は、眈々と、締めくくる。
セルガさんは、某然と、セルナの静止画像を見詰める。
目詰める瞳から、また、ひとすじの涙が、こぼれる。
「ごめんなさい。セルナ……ごめんなさい」セルガは俯き、むせび泣く。
「私は、傀儡とか、表面だけで無く、『真の神官長』に成りたかった。先代公爵様のアドバイス通り、王侯貴族を油断させ、重宝がられる為に、『王侯貴族の子貞の婚約の日取り』とか、くだらない『宣託』まで取り行ったは」彼女の赤くなった碧眼からは、唯々涙が流れ出す。
「そうして、神官としての『実力と、レベルと、したたかさ』を、亀の様に積み上げて行った。いつか、庶民を救いたい、と」
「もっと、貴方に、打ち明ければ良かったのかしら。いいえ。余人に聞かれれば、王侯貴族の耳に入り、教会を追われてしまう」セルガさんは、赤くなった碧眼で、涙を流す。
「そして、やっと。今回の召喚で、大型魔人おも一撃出来る、笹木武良勇者様との御縁を、掴み取れたは。やっと……これで、庶民を救済出来る……愛おしい妹までも、失ってしまったけれど……」さめざめと、瞑目した眦から、涙を流す。
「セルガさん」
「は、はい」
武良は、何処からか取り出した、右手のハンカチをセルガに差し出す。
「あ、ありがとうございます」セルガは、素直にハンカチを受け取り、涙に溢れる碧眼に当てる。
「我々は、セルナさんからの、次の言葉を受取りました。しっかり聴いて下さい」セルガを、強く促す。
「は、はい」セルガは、再度セルナの静止画像を見詰める。
ヴン
セルナの御霊は、ふと武良を無表情に見詰める。
『?何かな?』動画の中の武良は、微笑み返す。
(御二方が庶民の為に、此の世の理を変え、再び私達に合間見えて、私達を倒せたなら……私は、あなた方と組んでも良いは)
ヴン
セルガは某然と、セルナを、見詰める。
ごくり、と、何かを飲み込む。
もう一度、ハンカチで瞳を押さえる。
暫くして顔を上げると、いつものキリッとした、セルガさんの表情に戻って居た。
「……では、泣いて居る暇は、ありませんわね♪」セルガは、武良にハンカチを返しながら、赤い碧眼で、すこし微笑む。
「はい」武良も、微笑み返しながら、ハンカチを受け取る。
セルガは、もう一度、セルナの顔を見詰める。
「待ってなさい! セルナっ!! 再会したら、キツくシゴいて挙げるからねっ!!!」セルガさんは憤怒の表情で、セルナの画像を、姉として叱り付ける。
ぶえっ、くしょん!!
カチャン
と在る部屋の、豪華な椅子に座り、茶を喫していた魔王が、激しいクシャミをする。
手にして居る、カップとソーサーを、取り落としそうにそうに成る。
『な、何? 今の『悪寒』は!?』魔王が、呟く。
(……姉さんに、火を点けたのね・・・私の武良様……♪ )セルナ御霊は、楽しそうに微笑む。
御読み頂き、ありがとうございます。
何度か書き直して、仕舞いました。
次の話も、書き直して居ります。
次回は、1月12日の更新を予定して居ります。
御意見・御乾燥を頂けたら、幸いです。




