1-21早朝鍛錬
王侯貴族も、勇者や勇者系譜も、自分勝手な、輩ばかり。
だから、自分の陣営を有利にする為に、『新たな戦力』として、勇者の召喚合戦に陥って居る。
その合戦に翻弄されて、庶民はすり潰されて行く……
誰も、庶民の事は、考え無い。
身勝手な、支配階級なぞ、無用だ。
ならば私は、最強最大の魔王と契約し、王侯貴族や勇者や勇者系譜を、すり潰してやろう。
庶民の為に。
「はっ」
フヒュ
「ふっ、はっ!」
ヒュボッ
神殿は朝もやに包まれて居るが、朝日が当たる建物は、幻想的な佇まいを見せて居た。
神殿の前の石畳の広場に、体術の型を鍛錬する人影が有った。
運行流水の優雅な動きの中か、時折意表を突く拳や蹴りが放たれる。
「はっ」
武良は右正拳突きを放つと、ふと型を止め、基本姿勢に戻り瞑目する。
「開祖。見て無いで、久々に手ほどきを御願い致します」瞑目しながら、師匠に声を掛ける。
『良かろう』
何処からか、声が響く。方角を掴ませ無い、開祖シンの声だ。
此方からは誰も居ない様に見えた物陰から、隼に映像を重ねたままの開祖シンが、にこにこ笑顔で出て来た。
武良は開祖シンに向き直り、深々と一礼する。
開祖シンは、武良の間合い丁度で足を止めると、彼に深々と一礼する。
ヴァフォ!
前触れもなく開祖シンの右前蹴りが、武良に放たれる。
フシュ!
武良は柳に風の様に、最小限の動きで躱し、カウンターの左正拳突きを放つ。
シンも、一つ肩をすくめるだけで躱す。
ブン
フシュ
ヒュオン
ブオッ
フシュ
パパパン
シュシュシュ
二人とも舞を舞う様に、ゆったりとした動きを交わす。
二人とも、殆んどその場から動いて居無い。
しかし、余人には立ち入れない、目に捕らえられ無い凄まじい攻防を、無限に繰り返して居る。
「素晴らしい」
途端に、開祖シンと武良は二手に分かれ、声の主を囲む。
「うわー。私の従者が申してた通りですね。シャレに成らない強さだ」
二人が鍛錬して居た場所から、すぐ側のベンチに、金髪碧眼で、ちょこんとボブ・カットな髪型の美少年?が座って居た。
しかし、確かに、二人に声が掛かるまでそのベンチには、『誰も』居なかった筈だ。
あれ?何処かで会った様な……
武良の、デジャブ感が強い。
しかし。
「こんなに簡単に、ラスボス級に出逢えるとはね」武良は苦笑いし、構えを下ろす。
見掛けは、儚げな美少年?だが、感じる魔力は最大
「仕方が無いじゃぁ無いですか。ぐっすり眠って居たのに、いきなりカーテンを開けられた様に、物凄い強力な魔力が私の中に差し込んで来たのですから」美少年?は不服装に口を尖らせる。可愛い。
武良は肩をすくめ、美少年?の座るベンチの空いている方へ、気軽に座る。
「それは申し訳ない。強い魔力の件は、此方に来てから気が付いたのでね」武良は、本気で申し訳無さそうに、美少年?に平然と語り掛ける。
「……やはり御二人の魔力は、且つて無い力強さですね。強いだけじゃ無い。しなやかに濃密です。で無きゃ、私の前で平然と過ごせませんよ」
そうだね。今でも足が竦みそうだよ(苦笑)……それで。何の御用かな?」
「竦みそうなのは、御互い様ですよ(苦笑)……出来れば、御二方には手を引いて頂けませんか。この世界を壊したく無いので」美少年?は、切なそうな表情をし、可愛く小首を傾ける。うーん。蠱惑的だ。
『それは、此方が要請したい。セルガさんの要請でもあるし』開祖シンは落ち着いた声で、美少年?に語り掛ける。
美少年?は、じっっと開祖シンを見返す。
「……開祖シン様……貴君は不思議な方ね。『そこ』に居られるのに、世界の源流とも交わって居られる。しかし、『そこ』には居無い?うーん、何処にでも居る。なにこれ?こんな鑑定結果は、初めてですは」美少年?は、本気で困った口調で、開祖シンを見る。流石に鋭く開祖の本質を捉えて来る。
「ほぼ正解だね」武良は、感心する。流石ラスボス級。
「もーう。セルガ姉さんも、とんでもない御方々を召喚されたはね……でも、楽しみだは♪」
「『セルガ姉さん!?』」
マジ!?……言われて見れば、確かにセルガさんの肉親の面影を見て取れる。さっきのデジャヴ感はそれか。でも、ラスボス級魔族が、新官長の肉親なんて。どんだけ人間関係が、こんがらがって居るんだ?
隼、後で相関図を作ろう。
了解しましタ。
「此の身体は、セルガ姉さんと双子の、妹セルナの身体よ……セルナは自ら進んで、最大最強の魔王と契約を結んだから、私との魂の融合立が高いのよ。だからセルナの記憶も、ほぼ引き継いで居るは」
「自ら進んで魔王と契約!?……ほう。其処までして、貴女が、強い魔力を欲しかったのは、何故かな?」
「庶民を、雑草としか考え無い、王侯貴族なぞ、無用だは。王侯貴族の勢力争いの、『手駒』でしか無い勇者や勇者系譜もね。だから魔王の最大最強の力で、すり潰すは」セルナは、きっぱり宣言する。
隼。彼女の姿を記録したか?後でセルガさんにも確認頂こう。
はイ。声を掛けられる前かラ、記録出来て居まス。声が掛かる瞬間に、実体化されましタ。
「……うーん。貴君方の『見えない使い魔』は、優秀ね。入り込む隙間も無いは」また、蠱惑的に首をかしげる。
「まぁ自信作だからね」
其処まで判るか。武良は苦笑するしかない。
「それに、『無限な魔力』て、非常識な……しかも、二人も(契約先を間違えたかしら)え!?なによセルナ、今更!」
「今からでも、乗り換えるかい♪」武良は微笑む。
(……いえ、あなた方は既にセルガと結ばれし者。袂を分けたセルガとは、共に歩め無いは)
目の前のセルナの御霊は、残念そうに首を降る。
「それは残念」武良は、ほろ苦い表情になる。
「我々『侍』は、交渉人や仲介人と言う『間を取り持つ』一面も持つんだ。セルナさんが魔王と出逢う前に、我々と話し合えたらね」武良は、残念そうに苦笑いする。
(私は庶民の為に、腐敗政治の王侯貴族を打ち倒せる強い魔力を望んだの。庶民の為と言いながら、王侯貴族も補佐するセルガとは、目指す処は異なるは)
『ふむ……庶民を憂う気持ちは、姉妹とも同じでは?二人の登る道は異なるが、頂上は一つだ』開祖シンは、断定する。
「そうだよ。タイ公爵や、勇者管理局・局長との、丁々発止を見せたかったな。セルガさんの『王侯貴族なぞ、何するものぞ!』と論破する所は、快哉だよ♪」
(………)セルナの本音は、押し黙る。
「うーむ。あんなに絶望して居たセルナの魂を、言葉だけで揺るがせるなんて。困ったはね、私との同調率が落ちちゃう」魔王は、可愛く苦笑する。
「其処までさり気無く、真率な言葉を紡げるなんて。あなた方はどんな『死線』や『修羅場』をくぐって来たの?」魔王は、セルナの大きな目を見開いて、問うて来る。
「言う程でも無いよ。まぁ、努力は陰でする方針でね」軽く肩を竦めて、受け流す。
『ならバ、今死ネ!』
セルナの胸部辺りの空間から、ずるどい爪が伸びた魔王の腕が、武良の心臓目掛けて突き出されて来る。
キィイイイン
涼やかな『鈴』の音が、教会公園に、響く。
『グハァアァアァァア!』
魔王は、セルナの美しい顔を歪めてしまう。
突き出された魔王の爪は、いつの間にか武良が構えた、刃筋や刃紋の美しい大刀に受け止められて居る。
「流石、魔王らしい流儀だね」武良は、苦笑するしかない。
ピキピキ
魔王の腕は、見る間に石化して行く。
パキッ! バラバラバラ
跡形も無く、砕け散る。
(無駄な事は、慎みなさい。御蔭で魔族の弱点が一つ、知られて仕舞ったじゃない)セルナの御霊は、魔王の短絡的な行動に、呆れた表情になる。
『何ダ?其ノ業物ハ?』ギッ!と魔王は、武良を睨む。
(綺麗な刀ね♪)セルナの御霊は、刀の地金の照りの美しさに魅入られた目をする。
「銀鈴鬼と、言うんだ。数打ちの古刀だったが、縁があってね。打ち直したら良い響をしてくれる」武良は、解説する。
(『破魔の響』の刀じゃないの!尽くずく厄介な方々ね……不意打ちも効かない戦士だし!)セルナの御霊は、ボヤく。
「いやいや。我々に気取られる事無く、此処まで近付かれた御方は、初めてだよ。声を掛けてくれなきゃ、背中を刺されて居たでしょ」武良は苦笑いする。
「(無理よ。何人も、貴方がた不意を突け無いは)」セルナの御霊と魔王は、両手を挙げて、お手上げのポーズを取る。
魔王と、セルナの御霊は、ベンチから立ち上がる。
「(好敵手と判ったのは、収穫かもね)」魔王と、セルナの御霊の言霊が、ハモる。
セルナの御霊は、ふと武良を無表情に見詰める。
「?何かな?」武良は、微笑み返す。
(御二方が庶民の為に此の世の理を変え、再び私達に合間見えて、私達を倒せたなら。私は、あなた方と組んでも良いは)
「ふむ」武良はセルナの御霊から、すっと、視線を外す。
やや日が登り、樹々の蒼さがハッキリして来て、美しい。
「美しいな」武良は、微笑む。
(……えぇ)セルナの御霊も風景を眺め、薄く微笑む。
「我々『侍』は、守るべきモノを、護る」遠い目をする。
(……)セルナの御霊は、武良の横顔を、見つめ直す。
「守るべきモノは、護るべき時に判る」武良はセルナの瞳を、を見つめ返す。
ぶるっ
セルナの身体が、小さく震える。
(……そう言う視点が欲しかった……早く、逢いたかったは)セルナの御霊は、切なく微笑む。
(でも、もう賽は投げられてしまったの)
「その様だね」武良は、哀愁に微笑む。
(では、行くは……再開を楽しみにして居ます)皇女の風格を供えた微笑みで、二人に頷く。
「……相応の饗応を、させて頂こう』魔王は真摯な表情で、『侍」の二人に深く一礼する。
現れた時と同じように、不意に消える。
『……実験処では無いな』開祖シンは、切なく微笑む。
「そうですね」武良は見事な風景に、もう一度視線を向ける。
バサバサバサ
葵森から、一羽の鳥が飛び立って行く。
御読み頂き、ありがとうございます。
あう。
今日から、仕事始めですね。
寝正月を決めて居た私は、心身ともにダルダルです。
正直、今週一杯まで、休みたいです。
何なら、毎年仕事始めは、『1月の第二月曜日から』にしてほしいうき。
『執筆の進捗』も頑張りますー
明日も投稿致します。
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宜しく御願い致します。




