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1-20.戦力の底上げ

タイ・クォーン教会・第一守護天使ワードマンと申します。


『侍』の御二方には、驚かされっ放しです。


これでも生前は、一角(ひとかど)の軍人と、内心自負して居りましたが……


御二方の戦略眼には、舌を巻きます。


成る程、流石は65億人に、平和布武されて居られる方々です。


何よりも好ましいのは、根底に『慈愛』を感じます。


すべて、お任せ居たそうと、思います。

そうだ。もう一つ、案件が有った。


「もう一つ、提案が有ります」めげる気持ちを奮い立たせて、顔を上げる。


「何でしょう?」セルガさんは、問うて来る。


「戦力の『底上げ』です」


ワードマンさん、セルガさん、コレド隊長は、同時に、あーと言う表情に成る。


「どの様な方法で?」ワードマンさんは、いきなり方策を問うて来る。まぁワードマンさんも、昨今の魔族の増強に言及してたしね。


「バトル・スーツを、守護宣誓した衛兵の中で、適応者に配布しようかと懸案して居ます」


「え?」セルガさんは、驚愕に目を見開く。


「……軍事機密、ですよね?よろしいのですか?」ワードマンさんも、目を見開く。


「えぇ。守護行為に使用限定すれば、悪用され無いでしょう。それぐらい思い切らないと、昨今の魔族からは庶民を守護出来ません。勿論私と同じ様に、過剰魔力を振り回さないか、確認せねば成りませんが」


「ふうーむ」コレド隊長は、勇者様に感心した様な表情で唸る。


「あぁ、そうだ。セルガさん。もう一つ、御確認頂きたい件が」


「はい」微笑んで来る。


「歴代の勇者様方の子孫や、累系様方ですが……御力添えを、仰げませんでしょうか?」


「はぁ。まぁ」セルガさんは、途端に微妙な表情に曇る。


「?……何か、不都合が?」


「はぁ」セルガさんの歯切れが、物凄く悪過ぎる。目も泳ぎっ放しだし。


「タケヨシ殿。まぁ。様々な……経緯と紆余曲折が、長年絡み合って、今日が有るのですよ」ワードマンさんが、苦笑いして弁明して来る。


ワードマンさんを、無言で見返す。今は『猫の手も借りたい』状況何だがなー。


『ふむ。例えば。それぞれの勇者様の望みは、何でしょうかね』不意に、開祖シンの落ち着いた声が斬り込んで来る。相変わらずいい声だね。


『先ずはセルガさん。貴女の望みは?』開祖シンは、セルガさんに微笑み掛ける。


「え?いや。私と、他の勇者様方とを同列にされても」セルガさんは、うろたえる。また、目が泳ぎ始める。


『セルガさん。我々を召喚された理由は、何ですか?』開祖シンの暖かで柔らかな声が、真綿で首を締める様にセルガさんを、追い詰める。


「えぇと。あの」セルガさんは、両手を開いたり握ったりと、わたわた挙動不審な動きが始まる。開祖シン。俺より『核心』突いちゃった様だね。


「セルガ様。もっと、こちらの力関係や状況を、詳しく打ち明けないと、無理ですよ。彼等の……魔族に勝つ目的の為に、軍事機密を明かす果敢な判断力と戦略眼。また、戦闘前や戦闘中、そして戦闘後の『二手三手先を読む手際』を拝見しましたね。この御二方は、数々の実戦で死線を潜り抜けて来られた、真の軍人さん達です。これまでの『元は一般人の、素人勇者様』とは訳が違う……迂闊に対応を誤れば、我々が喰われて仕舞いますよ」ワードマンさんは、諦めた様に顔を横に振り、苦笑いで肩をすくめる。


えと、守護天使様が『喰われる』て。


「でも、(こう)おじいちゃま」セルガさんは、まだ落ち着かない表情で、ワードマンさんを見る。


「「『高祖父(こうそふ)!?』」」開祖シンとコレド隊長と俺は、初耳に声をハモってしまう。へぇ。


「これ。それは聖職者と成った時に、脱ぎ去って来た物の一つですよ」ワードマンさんは苦笑いして、『玄孫(やしゃご)』を嗜める。


「でも。『彼等』の様な末路を、たどらせる訳には」


「だから。『彼等』とは訳が違うと言って居ます。忘れてませんか? 此方の御二方は御自分達の意識で、御自分達の世界に自由に行き来出来るのですよ。望郷の念に駆られる事が無いのです」


セルガさんは、あ! と言う表情に成り、急に顔を赤くする。ガチで忘れてたな。案外彼女、天然だよね。


『セルガさんは、我々の魔力の強さを喜んで居られましたね』

……開祖シンの静かな追求は、続いて居た。


『また、マンドゥリン・バーの旨い酒を、呑みませんか♪ 御希望通りに取り寄せさせますよ』開祖シンは、か弱い獲物を目の前に獅子が舌舐めずりする様に、にっこり笑う。開祖。極道会長が青ざめた時の様に、ガチ怖いでーす。


「ひく」


セルガさんの顔はシンの、ひたひたと迫る落ち着いた声に、強張る。


「開祖。恐れ入りますが、御手柔らかに願います。曽孫も、コレでも案外苦労して居るのです」ワードマンさんも、有能な交渉人の様に、柔らかく微笑みながら二人の会話に斬り込んで来る。


「歴代の勇者様は、『魔族を退治するまで』は良いのです。が、魔節が終わり『御役御免』状態に成りますと……」ワードマンさんは、さみしそうな表情に成る。


「初代勇者様が生存の間は、御互いが助け合った仲間ですから、気心も知れています。また『貴族クラス』扱いされても初代勇者様も、『慎み』を持って過ごされます。が、世代が交代しますと、子孫や累計は『貴族扱いは、当たり前』と、尊大に成って行く確率が、高いです」ワードマンさんは。苦い物を口に入れてしまった表情に成る。


「幸なのか、不幸なのか。神の采配でも有るのでしょうか……勇者様の基本能力は、代々引継がれて仕舞います。まぁ、個人の鍛錬にも左右される様子ですが」

セルガさんも、やっと会話に参加して来る。


「ははぁ。平和の期間に、『最強兵器』な存在に」そう言う力は、物凄く軋轢を生む存在てヤツでは。俺も渋い表情に成って仕舞う。


「はい。最強で、尊大です……最悪です。軋轢の火種でしか、ありません。理不尽を押し付けられるのは、何時も弱き庶民です……その庶民を守護しようとした、衛兵隊が、どれだけ犠牲に……」セルガさんは、悲しそうな表情に成る。


「あぁ、勿論。初代様が懸命な方で、存命中にキチンと後継者と家訓を残された勇者家系も、幾つも有ります。現在も一軍を担い、守護者として威風を払って居られます。……時には、『堕ちた勇者』を討伐する役目も、請け負う事も」ワードマンさんが、慌ててフォローして来る。


「ほほう。ならば。その現役で『守護者』を担う勇者様なら、御協力願えませんでしょうか?」


「えーと。そのー」また、セルガさんの端切れが、悪く成り始める。


「……一軍を担う集団に成長するには。また、成長したら、何が必要でしょうか?」ワードマンさんが、問題を出す。


「『あぁ』」

開祖と俺は、同時に納得する。そっち方面なら、経験が有り過ぎる。


「?」コレド隊長さんは、首を傾げている。


「開祖。何でしょう?」ワードマンさんが、指名する。


『経費、維持費。詰まり、資金調達が出来なければ』と、答える。


「『タニマチ』とか、『パトロン』とか、出資者を掴まえないと」俺も、口を添える。


『此方の世界では、出資者に成れる『富める者』は、そうは居無いですよね』開祖は、聞いてくる。


「……ならば、『富める者』同士は、ライバルなのですね」成る程、聖職者のセルガさんが言い難い、『様々な経緯と紆余曲折が、長年絡み合った話題』が、ライバル間で存在してる訳だ。


「そうか。ライバル富豪同士が、其々に勇者を呼び合っちゃって来たんですね」


「はい。しかし、一度の魔節に召喚出来る勇者様は、御一人だけです。……ライバル同士は魔節に成れば、召喚合戦に陥ります……凄まじい『足の引っ張り合い』も始まります」


「なんとか召喚した勇者様を、そのまま有力者の傀儡にして、勇者様や子孫は他のライバルを襲うと。しかしそのライバルにも眷属な勇者様が居ると。そりゃあ、勇者様同士、力は拮抗しますね……庶民には、たまらないなぁ」


ワードマンさんは、苦笑いして両手を上げる。


「御二方には降参です。此方の世界は、そのライバル同士の拮抗で、成り立って居るのです」


「そして、そのバランスの煽りを受けて、弱い庶民の命は、すり潰されて行くのです」どこの世も、同じか。


『そりゃあ、怨念も溜まれば、瘴気も濃くなるな』


「魔族より、よっぽどタチが悪いのでは」


セルガさんは眉をひそめ、口を尖らせる。事態を正確に言い当てられたが、しかし、どう答えれば良いのか分からない様だ。


『セルガさん。我々は、貴女の望んだ『かつてない程の強者』な勇者です。折角『召喚合戦』に勝ち抜いた意義を、『教会』や『セルガさん』は、活用せねばなりません』


開祖シンは、もう一度セルガさんを見る


『その上でお聞きします。貴女の望みは何ですか?』


「……『かつてない程の強者』な勇者様。はかない庶民を、御救いください」セルガさんは、決意した様に真剣な表情で宣言する。


「『承りました』」


開祖シンと俺は、自然に同時に、セルガさんに頭を下げる。


「……では。手始めに『果たし状』を、歴代勇者様の各子孫に叩きつけましょう。方はしから、折伏しましょう」


「「えっ」」セルガさんとコレド隊長の、驚く声がハモる。


「はっはっはっは!」ワードマンさんが、高笑いを始める。


「なんですの?」セルガさんは、高祖父(ワードマン)を見る。


「御二方は、『テルガンの実』を、あえて採取してくれるそうですよ♪」


テルガンの実?。


……ちとデカイ、食虫植物みたいでス。その実は、花の中心部に出来る見たいですガ……『火中の栗』の様な、『実行が困難な行為』の慣用句では。


成る程。後で確認して見るよ。


「『力押し』が得意な方々には、此方も最大の『力押し』で対応しましょう。中途半端が一番いけません。掻き回すなら、徹底的に掻き回さないと♪」俺は、朗らかな笑顔で、言う。


『そうだな。拳での会話が、一番手っ取り早いな』開祖も乗っかる。


「……隼、王都の瘴気が、一番深いのかな?」


『はイ。真っ黒でス』


『うん。王様王族も巻き込もう。一番淀んだ膿を、搾り出さないと』


「膿を搾り出せたら、深い闇も解消し易くなり、魔族の暗躍も調伏し易く成るでしょう」


「と言う事で、セルガさん。ちと、ひと暴れして来ますね」呆気に取られる彼女に、にっこり微笑む。


「あー、えー、宜しく御願い致します!」セルガさんの頬に、赤味が刺してくる。


「そうだ、ワードマンさん」


「はい?」


「『テルガンの実』って、何ですか?」


御読み頂き、ありがとうございます。

年始連続投稿、進行中です。

御楽しみ頂ければ、幸いです。


……眠い。


寝正月の、後遺症かと。

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