1-19.強すぎて
タイ・クォーン教会衛兵隊、隊長コレドと申します。
勇者様の御指導は……驚きの連続です。
私は、ただ単に、あらわれた魔族を退治して居れば、いずれ魔節も終わるだろうと思ってました。
……しかし理屈がまだ、ついて行けない。
武良勇者様の御研究による御指導により、魔節も乗り切れるかも知れません。
わははははは♪
がははははは♪
食堂の楽しそうな響きは、少し離れた貴賓室にも伝わって来る。
迎賓室にはセルガさん、ワードマンさん、コレド隊長、俺が居る。そして。
「ありがとうございます。何から何まで。本来なら此方で宴席を設けなければ成らないのに……」セルガさんが、申し訳なさそうに一礼する。
『まぁまぁ。どの世界でも、死線を潜った後に欲しくなるのは、旨い酒と旨い飯です♪衛兵さん達は、本日頑張られた』
セルガさんの向かいには開祖シンが座り、微笑んで居る。
隼を人体モードに変形させ、そこに開祖シンの映像を乗せた。無線通信よりも、顔を合わせ目を合わせる事で、此方の人間にも会話し易く成った様だ。
「ほう。貴方も軍に?」ワードマンさんが問う。
『はい。誰にも始まりが有ります。私は其処で、色んな事を学びました』
「私もです。現在は此方に、学びに来てます」ちと急いで事態を報告し、検討に入りたいので、開祖シンの答えにあえて乗っかる。思い出話は、後でね。
皆、俺の意図を察し、俺に注目する。
「では、本題に入りましょう。勇者タケヨシ様、どうぞ」セルガさんが、促して来る。
「はい……此の儘では、私が……私『勇者』が、魔族と戦えば戦う程、此方の世界を壊して仕舞います」俺は真顔で、問題発言を議題に載せる。
全員、真顔で押し黙る。
「戦う程?……仰る意味が……理解出来ませんは」セルガさんは眉間に皺を寄せ、声を低く問うて来る。
「私の戦闘エネルギーが強すぎて『次元の歪み』を引き起こして居ます。あぁ。エネルギーと言う意味は『魔力』です。私が『常識はずれの強い魔力』を振るうと、異世界への通り道が出来て仕舞います。例えば……『魔界』とか」
「「「えっ」」」セルガさん、ワードマンさん、コレド隊長の驚きの声がハモる。
「戦闘魔力が、強すぎて?実感出来ません……貴方なら、有り得る話でしょうが」 ワードマンさんも眉間に皺を寄せて、首を捻って居る。
「では、魔力や状況を測定しましたので、それを披露しながら解説致します。隼」
『承りましタ。立体映像デ、再現しまス』
ヴン
武良が大型魔獣にぶちかます前の、コレド隊長の真横に立って居る立体映像が、皆で囲む低めのテーブルの中央に現される。
「ちょ、一寸失礼!今の姿無き声は、どなたです?」コレド隊長は、慌てて俺を見る。そうか、戦術管制AIなんて概念、此処には無いもんね。えーと。
「あぁ。あー……私の、『姿無き、使い魔』です。諸々を記録し、諸々の現象の分析を、手助けをしてくれます」
「はぁ……本当に、勇者様は『何でも有り』何ですね」コレド隊長は、自分の席に脱力する。
「どうも。では、続けますね。隼。先ずは、問題の立体動画を再生」
『始めます』
ヴン
バオオオォオ!
ガァアアァアァアアァ!!
ガロオオォオオン!!
遂に、咆哮と共に、最初より大きな巨大魔獣が続々と街道に出て来た!
『隼。バトルスーツ』
『応!』
シャキーン!
一瞬で武良は、銀色に輝く全身バトルスーツに包まれる。
そこで、映像を止める。
「先ずは、この銀色鎧兜を装着した時の、空間への影響力です」
装着前のシーンに戻り、今度はスロー・モーションで、動きが再開される。
武良が、鎧兜を装着する動きに同期し、青い光の波の揺らぎが見える。
「青い光が、私から漏れて仕舞う、強い魔力です」
もう一度装着前に戻る。再度再生される、装着する動きに同期する青い光の波の揺らぎに合わせて、少し外側の周囲に、赤い光の波が起こる。
「この赤い光の波が、空間の歪みです」
赤い光の波のみを残し、再度再生する。
何も映って居ない映像から、装着する動きに同期して、赤い光の波がジワジワと湧き出す。時折、赤い光の波は、強く輝く事があった。
「この時折強く輝く赤い光は、異空間と言うか、繋がった魔界からの魔力が、直接溢れて来て居る様子です。それを踏まえて、最後まで御鑑賞下さい」
ドンッ!!!
次に、銀色バトルスーツの武良は消える。
ブン!
いきなり分隊の間を、凄まじいダッシュで駆け抜けた。
その間、武良のバトル・スーツの周囲の赤い光の波は、多いに蠢く。
ドガァン!!
一番手前の魔獣に、ぶちかます。
赤い光も、一瞬強く輝く。
ふわっ
ガウ?
ぶちかまされた魔獣は、巨体の自分が宙に浮く感覚に、戸惑う。ボーリングのピンの様に、魔獣達は街道に転がされる。
ガロオオォオオン!!
いち早く、その巨体を立て直した魔獣が、武良のバトルスーツに飛び掛かる。その顎の牙を、バトルスーツの頭に向ける。
ガシッ!
バトルスーツは、その牙を無造作につかむ。
ガ、ガルッ!?
急に頭を動かせ無く成った魔獣は、戸惑う。
ブゥン
バトルスーツの両拳が、強く青く輝く。
赤い光も再度、強く輝き出す。
ドンッ!
グシャッ!
巨大魔獣の頭が、バトルスーツの両手の輝きに、簡単に潰される!
赤い光の波も、武良の両手に強く絡む。
映像が、切り替わる。
きらり
もう、青く輝く光の双刃剣が、武良の右手にる。
が、その光の双刃剣の周りには、青い光に混ざろうと、赤い光が凄まじい勢いで集約されて行く。
ドゴーン!
また、揺れる。
『行け』
ふっ。と、光の双刃剣は、消える。
次の瞬間大型魔人の目の前で、光の双刃剣は、青く強く輝いて居る。
赤い光も、双刃剣に吸い込まれる様に、急激に集約されて行く。
『ふははははは!こんな小剣で、我を倒すと言うのか?片腹痛いは!!』
ズドンッ!
『ぐはっ!』
光の双刃剣は、呆気なく大型魔人の鳩尾に突き刺さる!
キカッ!
青と赤の光が、破裂する。
『ぐああぁあぁぁ!まさか!これ程までの……』
ふぁさっ。
もう、魔人の巨体は、跡形無く消えて居た。
そして、聖湖水面の真ん中から、天まで届く聖柱が、青く優しい輝きを煌めかせながら建って居た。
『再生終了致しました』
隼の宣言で、立体映像は消える。
「数値で見れば、魔力攻撃で、二乗倍以上魔力は増幅されて仕舞います」俺は、あえて冷静な声で述べる。
「!? 二倍では無くて、二乗倍!?」冷静な筈のワードマンさんは、狼狽えた声を出す。
「はい。魔力攻撃は、最小限の出力でも二乗倍されてしまい……空間を歪ませます……恐らくは……」
『恐らくは?何だ?』
「歴代勇者様方の頃から、空間の歪は、始まっていたでしょう」
「「「え?!」」」
「歴代の魔王と勇者様の戦史跡全ての、空間の歪を調べる必要がありますね。魔界と繋がって仕舞った空間の歪から、魔界瘴気がだだ漏れでしょう」
「それで、季節を重ねる度に、魔族が強力に……」
「人間界でも、諍いが増えて来ましたね」
「相乗効果で、魔族はどんどん強力に」
うーん。と全員で唸って仕舞った。
『対策は?』と、開祖シン。
「先ずは空間の歪が確認された戦史跡全てに、その聖湖の様な『聖柱』を立て、歪みが塞がる様に促進しましょう。『聖柱』は、空間の歪を癒し、繕います。それで流入する魔力は、激減する筈です」
『ふむ』
「彼方此方の瘴気溜まりを、払いましょう」
『そして』
「人間界の諍いを、止めましょう」
『で』
「現存の魔族を、片付けます」
『……セルガさん、今の流れは如何でしょうか?』
「えっ!?えっ?」セルガさんは急に意見を求められて、戸惑う。話の急展開に理解が付いて行けない様だ。まぁ、科学実験の概念が異なるから致し方無いが。
「セルガ様。勇者様方は、現実的な方策を積み重ねて提案されて居られます。又、今後、例え状況が急展開を起こしても、御二人なら直様修正案を出されるでしょう」ワードマンさんは、穏やかにセルガさんに『肯定』を促す。
「承りました。勇者様、よろしくお願い申し上げます」セルガさんは、ホッとした様に微笑み、頭を下げる。
『ふぅむ……しかし、中級魔人を一撃出来るのに、『光の剣』系統が禁じ手に入るのは、勿体無いなぁ』開祖シンが、不満げに呟く。
「はい。そこら辺は、隼が一考してくれました」
『ほう』
「隼」
『はイ。魔力制御も『出来る事』を、重ねて見ましタ』
ヴン
先程の標準の銀色バトル・スーツの、立体映像が立ち上がる。
『このスーツでは二乗倍の魔力の制御力が、足りませン。そこデ、抑えられる容量の制御回路を、増設して見ましタ』
標準のバトル・スーツの隣に、像並の、巨体バトル・スーツの立体映像が立ち上がる。
「「「おぉ」」」此方の世界の人間が、感嘆する。
「マジか、隼」流石の武良も、困惑顔に成る。
『空間の歪みを極力最小限にすル、制御数値を基準にしましたら……こうなりまス』
「マジかー……そうだよな。数値を見ると……そうだよなー」俺は初めて、皆に弱音を吐いているかもしれない。
御読み頂き、ありがとうございます。
鋭意、寝正月を満喫中です。
明日も、投稿させて頂きます。
連続投稿が、いつまで出来るか不明ですが、頑張ります。




