1-16. 初魔族
タイ・クォーン教会・衛兵隊隊長、コレドと申します。
いやぁ、タケヨシ勇者様との御動向は、驚きの連続でした。
あの、御本人は至って御気さくな御方です。
しかし、闘いに入ると……
いやぁ、驚きました。
「うわー。神殿の領地自体も、ひっろいのですね!」
少し遠くまで、何かの畑が蓮面と続いて居る。
此処で収穫された作物で、神殿は自給自足して居るそうだ……表向きはね。当初は余剰作物が、各地へ交易品として出荷されて行ってたそうだが。現在では、重要な収入源の一つだ。と、セルガさんが言って居た。
昨日の、半日掛かった魔法と異文化の講習会で、『明日、教会領地の巡視がありますは♪』と、セルガさん情報をくれた。
タイ・クォーン教会衛兵隊のコレド衛兵隊長さんが、騎馬小隊や弓兵隊や神官隊等々、約80名程の騎馬軍団を引き連れて、神殿領地を見回ると言うので、隼バイク・バージョンに跨ってついて来た。
浮かぶバイクの隼は「私が作った、ゴーレムだよ。浮かんでるのも魔法だよ」と、この世界のなるべく近いイメージの表現で答えて見た。
また、周りは重装備の鎧兜なのに、手ぶら+平服でバイク隼に跨る俺は、余りにも不用心に見えたのだろう。
コレド隊長から、「僭越ながら、勇者様の鎧兜や武器は?」と心配そうに聞かれちゃった。苦笑。
「私の鎧兜や武器は、必要な時に勝手に飛び出して来るから、大丈夫ですよ」と、全くの事実を答えて置いたが、その顔は誰も理解出来ていないだろ。
最初は物珍しげな視線が集まったが、歴代勇者様の型破りな魔法武具を、幼い頃から見聞きして居るせいか、まぁ勇者様が仰られる事だから。と、認識された様だ。それで良いのか?……まぁ、いいや。
で、何故こんな大所帯で出張ったかと言うと。何でも先日『作物を魔物らしき動物に荒らされた』と言う農民からの報告が、幾つも陳情された。ので人的被害が出ちゃう前に、魔物討伐隊として出張って来たのだと。
所で、神殿の外壁に沿った街道を回るだけでも、一つの市位あるねー。
「魔物討伐て、良く有るのかい?」隣の騎兵に、気さくに聞いて見た。
「は!?はいっ!勇者様っ!」兜の面頬を慌てて跳ね上げ、裏返った若い声で答えて来る。うわー、若いね。更に何と言うイケメン!君が、こっちの世界に来たらアイドルで天下取れるよ。
「慌てるな、タム。勇者様の言問には、素直に御答えせよ」コレド隊長さんは、苦笑いしながら命令する。
「はい!勇者様。魔節には、良く討伐に出ます」
「タム君は、一人で魔物と戦った事は?」
「……魔犬とは、有ります」
「どうだった?」
「……犬とは思えない動きで、翻弄されました。とても凶暴になり……妹の左脚を齧り、もいで仕舞いました」
「そうか。今、妹さんは?」
「実家に居りますが……自室から、外に出られません……」タムの表情は、曇る。
「ふむ……今度、妹さんに会わせておくれ」
「は?はぁ」
「で、今日は、どんな魔物が予想されるかな?」
「……デカいと思います」
「ふむ。理由は?」
「……ここ最近の闇が、かなり澱んでいます」
「……澱みによって、魔が強く成って居ると」
「はい。魔物は、強い闇を吸い込むほど、強く成ります」
「分かった。ありがとう」武良は、タムに微笑む。
「どっ、どう致しまして」タムは照れたのか、真っ赤に成る。
隼。魔でマップ検索
うワ。瘴気淀みハ、案外多いですヨ。まタ、このまま約30分直進すれバ、この先の森で大型魔獣の群れに遭遇しまス。
……こちらで、どう魔獣を排除するのか、見てみるか。
了解。
魔獣達の潜む森まで、少しずつ近付いて行く。
「!コレド隊長!あの森の中に、魔獣の蠢きがします」女性神官の一人が、急に報告の声を上げる。
隼、彼女の探知距離は?
100メートルってトコでス……魔獣も、此方に気が付いた様子でス。
「よし!対魔獣陣を取れ!物見役出ろ!」コレド隊長が、大声で矢継ぎ早に指示を出す。
「「「はっ!」」」
およそ80の騎馬が、陣形を変えてゆく。
その中から3騎馬が、ギャロップで森に近付いて行く。
マスタ武良。一匹の魔獣が森から出て来まス。魔獣の物見役見たいでス。
物見騎馬と、鉢合わせか?
はイ。危険でス。
「タム。その槍を貸してくれ」
「は?はい!」タムは、慌てて左手の、2メートル以上の長槍を其の儘差し出して来る。
「ありがと」受け取った長槍を、投槍の持ち方に、さり気無く変える。
バオオオォオン!!
森から魔獣の咆哮が聞こえ、急に巨大魔獣が街道に飛び出て来る。騎馬の目の前だ!
騎馬は竦んで仕舞い、動け無い。
武良は隼に跨ったまま、長槍を投げる。
ひゅん
ドカッ!
ガァアアァアァアアァ!!
巨大魔獣の大きな目に、武良の投げた槍が、突き刺さる。
巨大魔獣は痛みの為か、その場でのたうち回る。
金縛りから解けた、物見騎馬は慌てて此方に駆け戻り出す。
「おい。この距離を?投槍が届いた!?」
「この、重さの、長槍だぞ!」
「魔獣の目玉だって、矢を弾く硬さなのはずなのに、しっかり突き刺さって居るぞ!」
「すげぇ。流石は勇者様だ!」
ガァアアァアァアアァ!!
怒り狂う魔獣が、ぐんぐん此方に近付いて来る。
「勇者様への感謝は後だ!勇者様に頂いた反撃の機会を無にするな!!」
「「「「オウッ!!!」」」」
騎馬から降りた盾役達は、大きな盾を寄せ合い、果敢に魔獣にぶつける。
ドッガン!!
魔獣とぶつかった盾が、大きな音を立てる。
魔獣は、その場で止まる。
武良は魔獣の目に刺さったままの長槍を、ひょいとサウザン・ハンドで抜く。
ギャアァアアァ!
痛そうな魔獣は、その場で叫ぶ。
空かさず槍隊が、数本の長槍を魔獣の身体に刺し込む!!
ゴアゥウアアアアアア!!
魔獣は、苦しげに悶絶する。
「はい。ありがとう」サウザン・ハンドで取り戻したタムの長槍を、タムに返す。
目を真ん丸に驚いたタムは、かくかくと頷きながら、長槍を受け取る。
「二番槍!かかれ!!」
所属隊の動きにタム我に帰り、長槍を構え直す。
「うおおおおおおお!!」
タムは雄叫びを上げながら、魔獣に突き掛かって行く。
ガハッ
ドザッ
5回程の槍攻撃で大型魔獣は、やっと地に伏した。
「おい、トトメスに治癒魔法を頼む!」
「おぉい。魔核が有ったぞ!」
「やばい、槍が曲がっちゃったよ」
「盾の、留め金の予備は無いか?」
「鎧が、凹んじまったよ!」
うーん。一匹倒して、大騒ぎだな。
マスタ。マズイでス。魔獣の群本体が、接近して来まス!……今のが、8体来ます!
ありゃ……面倒見るか。
「コレド隊長!大変!他の魔獣が……多数!森から来ます!」別の女性神官さんが、焦る口調で発言する。
「「「「なっ!」」」」
分隊は御釣りも出ない程、全員疲弊し切って居た。皆表情が、引きつっている。
武良は、ずいと立ち上がる。
「コレド隊長。僭越ながら、前に出させて頂けますか」
「ありがとうございます。心苦しいですが、御願い致します」
分隊全員、期待の視線を、武良に集める。
バオオオォオ!
ガァアアァアァアアァ!!
ガロオオォオオン!!
遂に、咆哮と共に、最初より大きな巨大魔獣が続々と街道に出て来た!
「えっ、そんなに?」
「うそっ。は、8体!?」
「……もう一度、レニーの手作りのシチューが、喰いたかったな」
「ポロン……」
皆、魔獣達の数と迫力に、現実逃避が始まって仕舞った。
「コレド隊長。皆に、道を開けてくれる様に、指示を願います」
「はっ!おい!勇者様が前に出られる!分隊ごとに左右に別れよ!」
何とか、指示どうりに左右に移動する。
ガロオオォオオン!!
どんどん、近付いて来る。
隼。バトルスーツ。
応!
シャキーン!
一瞬で武良は、銀色に輝く全身バトルスーツに包まれる。
分隊全員、一瞬での装着に、目を真ん丸に驚愕に息を飲む。
「そう言えば出立時、『私の鎧兜や武器は、必要な時に勝手に飛び出して来るから、大丈夫ですよ』て、仰られてたよな」
「……本当だったんだ」
皆、ぽかんと口を開けて、銀色の全身鎧を見上げる。
ドンッ!!!
次に、銀色バトルスーツの武良は消える。
ブン!
いきなり分隊の間を、凄まじいダッシュで駆け抜けた。
「「「「うわ!」」」」
一陣の突風が、分隊を突き抜ける。
ドガァン!!
一番手前の魔獣に、ぶちかます。
ふわっ
ガウ?
ぶちかまされた魔獣は、巨体の自分が宙に浮く感覚に、戸惑う。ボーリングのピンの様に、魔獣達は街道に転がされる。
「え?」
「あの巨体が、吹き飛んだ?」盾役達が、某然として居る。
ガロオオォオオン!!
いち早く、その巨体を立て直した魔獣が、武良のバトルスーツに飛び掛かる。その顎の牙を、バトルスーツの頭に向ける。
ガシッ!
バトルスーツは、その牙を無造作につかむ。
ガ、ガルッ!?
急に頭を動かせ無く成った魔獣は、戸惑う。
ブゥン
バトルスーツの両拳が、強く青く輝く。
ドンッ!
グシャッ!
巨大魔獣の頭が、バトルスーツの両手の輝きに、簡単に潰される!
ブン!
動かなくなった魔獣の巨体を、他の魔獣に投げ付ける。
ドカンッ!
他の魔獣の巨体が、軽く吹き飛ぶ。
他の魔獣は、銀色に輝くバトルスーツの、出会った事が無い圧倒的なパワーに戸惑う。
「すげぇ」
「おい、一方的じゃぁないか」
「今度の勇者様は、桁違いだぜ」
分隊達に、安堵の笑顔が拡がる。
隼。スタン用意。一匹は、サンプルで生け捕りたいな。
スタン準備完了。
発車!
ズバン!
スーツの額から、小さな電球が飛び出る。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
あれ?隼?
エ?ちょちょちョ、一寸待って下さイ!
電球は、思いの外ぐんぐん大きくなる。
電球はそのまま、魔獣全てを巻き込んだ。
キカッ!
隼!シールド!
爆心地を囲みます!爆風は上へ!
ドドーン
はるか上空へ、キノコ雲が沸き起こる。
「おおぃ。魔核はあったか?」
「ちょっと、待て。よし、取れた」
真っ黒に焦げた巨体の奥から、ズッシリと重い魔核を取り上げる。
「しかし、こんなにデカい魔核は、珍しいな」
「今回の魔節は、キツイのかなー。魔物のレベルが高いよ」
「全くだ……勇者様が御同行して下さらなかったら」
「あぁ……帰れなかったな」
「コレド隊長。魔核を全て集めました」
「御苦労。怪我人の様子はどうか?」
「神官様に治癒魔法を頂き、怪我人は居りません♪」
「よし。では出立するか」
一度神殿に戻り、諸々報告する事にした。
隼ー。さっきの検証だ。
えー。私ハ、設定頂いた通りにしカ、行動出来ませんヨ。
嘘つけ。
でもでモ、スタンの数値ハ、設定通りでしたヨ。
うーむ。そうなんだよな。数値通りに発射……ん?発射してからの、数値の変化はどうだ?
なるほド。表にしましょウ。
あノ。これハ。
そうだな。相談しよう。
御読み頂き、ありがとうございます。
御楽しみ頂いてますでしょうか。
御手数ですが、御感想を頂ければ幸いです。
明日(12月31日)大晦日も、投稿させて頂きます。
宜しくお願い致します。




