1-15.段取り切れなかった、タキタル
「怒らせると、ヤっバイな」
「マジだな!」
「全員が、無双されるかと、覚悟したぞ!」
「あ。王都衛兵隊、一兵卒です」
「あ。(以下同文)今度の勇者様は、普段は和かな方ですが……」
「あ。(以下同文)冷静に『怒られる』って、重苦しい恐怖なんすね」
「御怒りは、全面的にタキタル隊長に向かいましたがー」
「……良かった……」
「「だよね!!」」
「……今度の勇者様の『御怒りのツボ』を、早期に把握しとかないと」
「「だよね!!」」
「王都勇者管理局長のハナマサ様は、どうすんだろ?」
「……管理なんて、無理だろ」
「「だよね!!!」」
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。
タイ・クォーン教会神殿の、メイン回廊を、大勢の公都衛兵隊の隊列が、整然と歩いて行く。
タキタル衛兵隊長は、列の真ん中を歩いて居る。
歩きながら、あれこれ、今後の段取りを思索する。
一度公爵亭に、寄らなければならないか。
ザッ!
不意に、隊列が止まる。
何だ?止まれの指示は、出していないぞ。
答えは、進行方向にあった。
「タキタル隊長」
分かりやすく『止まれ』の指示を出して居る、笹木武良勇者様が、回廊のど真ん中に立って居た。
教会聖句陣を、目前でブチ破った勇者様に、『止まれ』と命ぜられらば、そりゃあ、隊列は止まるしか無いか。
……と言うか、『もう』終わったのか?。
タキタルが手配した『二の手』もブチ破った、『実力を実証された』勇者様に名指しされ、致し方なくタキタルは、隊列の先頭に出る。
「楽しい出迎えの趣向をありがとう。で、この書状を、指定先に届けて欲しい」 勇者様は笑顔で、数通の封書を、手渡して来る。
宛名を確認し、タキタルは『ぎょっ!』と驚く。
今回の『発注先』が、それぞれ正確に書いてある。
視線を上げると、にこやかに微笑む勇者様と、視線が合う。
「今回の件は、不問に伏す事にしたよ♪刺客達の『罪も問わ無い』。其々の里に『黙って引き取る』様に、タキタル隊長から促して欲しい。あぁ。新たな『刺客』とか、『口封じ』は無しで。と、しっかり釘を刺して置く様に。……もし彼等が、今後『不慮の事故』に陥れば」勇者様は、真剣な表情に成る。
「私が直々に、里に出向いて調査する」凄まじい威圧感が、勇者様から発せられる。
身が一瞬で竦む。
「「「「ひ!へぐ!!うううう!」」」」
背後の隊列の彼方此方からも、苦しげな呻き声が立つ。
そうだ、此れは、戦場で散々向けられた、『モノ』だ。
しかし、こんなにも強く、重い『殺気』は……初めてだ。
武人としても、手も足も出ない。少しでも動けば、殺される。
「刺客の一人に、『この世界は『実力主義』で、弱肉強食よ♪』と、教えられたのでね。少しは、私の実力を示たかな?」勇者様は、ニヤリと、悪い笑顔をされる。
詰まり、勇者様は、『全てを知った』上で、要請をされて居る訳だ。
断れ無い。逃げられ無い。
「う、承りました」タキタルは、上ずる声で、やっと返答し、ぎこちなく勇者に一礼する。
ふっ、と、殺気が消える。
「「「「「「はぁ、あぁあ、ぁぁ」」」」」」
ガシャガシャガシャ!
隊列全員が、その場にへたり込む。
「やはり歴戦の戦士は、話が早くて助かるよ。では、宜しく」
勇者様は、現れた時と同様の気さくな笑顔に戻り、回廊から庭に出て行く。
タキタルは、自分の全身がビッショリと、冷や汗に濡れて居る事に気が付く。
しかし、タキタルの胸の希望は、一層強く成った。
お任せしよう。
「良かった。素直に受け取られたのですね」セルガさんは、安堵の笑顔が出る。
『そりゃぁ、絶対強者と証明された勇者様の『殺気』を浴びてたらー、受け取らざるを得ないでしょうね♪』ワードマンさんも、苦笑する。
「まぁ、『殺気』を?」セルガさんは、興味心身で、無邪気に此方を伺って来る。( たゆん♪ )
「まぁ、『虚の攻撃』として混ぜますと、相手を翻弄出来ますしー。何より、諍いの仲介や交渉でも、有効デスしね♪」まぁ、良くある事です、と流す。( たゆん♪ )に惑わされるな!落ち着け!俺。
武良の虚の攻撃と言う言葉に、メイドのメルの瞳は輝く。
表情は、変わらないが。
「セルガさんの方は、如何でしたか?」武良は、にこやかに問う。
「来ませんでした。『今日は』武良様に集中したのでしょうね」ラナさんが重々しく答える。
「そうですね。タキタルさんに関しては、今少し用心ですね」武良は、頷く。
ラナとカルナは、気合を入れ直す。
「それで……御願いが有ります」
「はい。何でしょう?」セルガさんは、問う。
「異世界の衣・食・住の事や、文化を、私に詳しく教えて下さい♪」武良は、頭を下げる。
全員が、キョトンとした表情に成る。
武良は、渋く微笑む。
「今日の刺客さん達との、拳の交流で、微妙に感覚の違いを感じまして」
『拳の交流』の言葉に、メイドのメルの瞳は再度輝く。
やはり表情は、変わらないが。
「感覚の違い、と申されますと?」若い女性警護人カルナは、不思議そうな表情に成る。
「どう説明すれば良いのか……そうですね。私は、私の世界で、『福祉事業』にも関わってますが……」武良は、考え込みながら言う。
「まぁ。武良様も、炊き出し等の御手配を?」副司祭メルダが、反応する。
「えーと。そう言う部所も有りますが。基本は、『本人の資産的自立への、援助と指導』します」 武良は、思い出しながら言う。
「……『稼ぎ方』を指導される、と?。成る程!」副司祭メルダの瞳は、キラリと輝く。
「そうなんですが……福祉事業の根底には『人命尊重』が、有ります。しかし刺客さん達の価値観では、『弱いのが罪』な、印象が」
「……その傾向は否めませんわね。ですが、それは、勇者様や、勇者系譜の、『能力者』同士の間の話ですは。一般庶民には、関係ありませんは」セルガさんは、真剣に述べる。
「良かった。安心しました……では、教会での習わしや、しきたりを、御指導願います」
「承りましたは」セルガさんは、にっこり微笑む。
『では、私は、『祝福』を、授けさせて頂こう』ワードマンさんも、前のめりに宣言してくれる。
つまり『祝福』イコール『魔法』だ♪。
願ったり叶ったりなので、素直に礼を言う。
御読み頂き、ありがとうございます。
明日(12月29日)も、投稿させて頂きます。
年末まで、連続投稿で、書いて見ます。
御楽しみ下さいませ。




