1-13.鳴かぬなら、殺してしまえ
タイ・クォーン教会の、貴賓客付きのメイドの、メルと申します。
良かった。笹木勇者様が優しそうなお方で。
また、所作を拝見して、中々の武技を修得されて居られる様子。
可能ならば、武技の手解き御願い出来たら、嬉しいです。
先ずは、誠心誠意御使えさせて頂き、御疲れを癒して頂かないと。
頑張ります!
勇者召喚の儀式?は、とりあえずひと段落付いたので、全員のんびりと『召喚の間』から出て行く。
「勇者様。御疲れ様です。勇者様の御部屋を御用意させて頂きましたので、御案内致します。どうぞ、そちらで御くつろぎ下さいませ」
いつの間にか、武良の傍に『これぞメイド服』を着こなしたメイドさん?が、すらりと立って居た。
やっぱり金髪碧眼女性に、メイドは似合うねー♪……まぁ、とても残念な事に、ロング・スカートが正式だよねー 完全に隠れて居るけど綺麗な『おみ足』なんだろなぁ~ ぶちぶち。
「あら、メル♪ 何処にしたの?」増員された女性護衛隊に、ビッシリ囲まれたセルガさんは、メイドさんに微笑み掛ける。
副司祭メルダや、ラナやカルナも、初顔合わせの武良にニコニコ顔で黙礼する。
((( イイ♪ じゃない♪)))
先日の籠城メンバーは、イイ声で『期待を裏切らなかった容姿』の武良の、『柔和でも、威風堂々』な武良の所作にも感心する。
「『青葉の間』に、御案内しようかと」メルと呼ばれたメイドさんは、冷静な表情でセルガに答える。
「そうね♪ 森や湖や鍛錬場が見渡せて良いわね♪ あぁ、勇者タケヨシ様。彼女は貴方専属のメイド、メルと申します。何なりとお申し付け下さいませ♪」
「私専属?!」武良の左眉が、怯んだように少し上がる。そりゃぁ家事全般は、人力で賄われて居るんだろうけど。
「身の回りの世話は、メルにお申し付け下さいませ」
メルと呼ばれたメイドさんは、武良に恭しく一礼する。
しかしメルさん貴女。中々の武芸を会得してるよね。所作全般隙が無いのですけど。つまりV.I.Pの護衛の意味も在るだろうけど、反面V.I.Pの監視もあるよね。まぁ24時間、金髪碧眼美女に張り付かれるのは構わないがーこの後の『予定』には、ちと、まずいなぁ……仕方が無いか。
「ワードマンさん。少し御話を致したいのですが、宜しいですか?」
『喜んで』ワードマンさんは、武良のすぐ隣に顕現する。
((( ええっ!第一守護天使様を召喚出来るの!? )))
周りは、一気にザワつく。
しかし皆、武良が『教会防衛陣』を、御辞儀一つで『あっさり破壊』した事を、思い出す。
((( そうだよね。武良勇者様のレベルなら、第一守護天使様を召喚出来るね )))と、納得する。
メイドのメルさんも、急に顕現したワードマンさんに驚いた様に、目を見開く。しかし直ぐに立ち直り、少し離れた壁際に控える。
「ワードマンさん。セルガさん。結局、私の『魔力レベル』は、どう認定されましたか?」
ワードマンさんと、セルガさんは、『あぁ』と同時に目を合わせる。
「『聖剣に魔力を込める』意味は、新たな勇者様が『魔力を扱える方かどうか』を、拝見するのですが……武良勇者様は……」セルガは、苦笑いする。
『扱えるどころでは、ありませんからね』ワードマンさんも、苦笑いする。
「魔力は、『とんでもない』事は、聖句陣突破された事も合わせて、確認させて頂きました。正確に認定は、王都に居られる『真実の瞳』の巫女の審査を受けて頂きます」
「すると、いずれは王都に御伺いする事に成るのですね」武良は、確認を問う。
「えぇ。『良き日良い時』に」セルガさんは微笑む。
今のは、『慣用句』だよな。
そうですネ。『いつか、御飯でも』見たいナ。
武良は、苦笑いするしか無かった。
「では、勇者様。夕食まで御くつろぎ下さいませね♪」セルガさんは、武良に声を掛け、護衛隊と共にゾロゾロ廊下を歩き出す。
召喚の間に居た王都衛兵隊や、召喚の間に居た助手?達も、全員それぞれの目的地に、三三五五に向かう。
武良は、ワードマンさんに向き直る。
「では此れを、御拝見頂きたい」武良は両手手の平を、ワードマンさんに向けて開く。開いた手の平が、ほのかに輝き出す。
『こ……れは、何と!』ワードマンの顔は、ほのかな光の照り返しにわずかに輝きながら、視線は武良の手の平から動かない。
ワードマンは真剣な表情のまま、案外長く武良の両手を眺めて居た。
『ふぅむ。武良殿は、こんな事も……いやいや。御要望の手配はお任せ頂く』ワードマンさんは、壁際に控えるメルを見る。
『メル。セルガ様に、此れを届けておくれ』ワードマンさんは、手に出したメダリオンを、メルに差し出す。
「えっ? あ、あの。勇者様に専属で御使えする任務を、拝命して居りまして……」メルは狼狽えた様に目を泳がせ、他に御要を受けられる人物を探す。
しかし、既に召喚の間入口周りには、誰も居ない。
『大丈夫だよ、メル。私が『守護天使の御要』の印を出す。あぁ、セルガ様に渡したら、セルガ様の御指示に従う様に』ワードマンさんは、強く申し付ける。
きらきら
メルの胸元に、天使の印の紋章が現れる。
タイ・クォーン教会・第一守護天使として教会を守護し、神官長セルガ様を指導守護する天使様よりの御要だ。教会最上位命令なのだから。速やかに拝命しなくては成らない。
「……承りました」
メルは恐る恐る、ワードマンさんから、メダリオンを両手で押し頂く。
メルは、ワードマンに一礼すると、武良に向く。
「勇者様。この後は、どう為さいますか?」
「そうだね……綺麗な御庭とか、散策させて貰おうかな」
「承知しました。守護天使様の御用が済みましたら、御迎えに上がります」
「え? 神殿の庭って、結構広いよね。捜すのは大変でしょう。待ち合わせ場所とか……」
「神殿の敷地より外に、御出に成らなければ大丈夫です。では、失礼します」メルは武良に一礼し、楚々と廊下を遠ざかる。
「良い子ですね」
『えぇ。良い子です。先の魔節で親兄弟を亡くしましてね。身寄りも無かったので、教会救護院に引き取られました』
「そうでしたか。ならば尚更、遠ざけて置かなければ」
ワードマンさんは、ふふ♪と微笑む。
『武良殿。私は、慈悲あふれる貴方が気に入りました』
「それは、光栄です」武良も、ふふ♪と微笑む。
『では、手配に参ります。どちらで、なさいます?』
「二番目に広い御庭にします。適度に閑散とされてる様で」
『承りました。では後程』ワードマンさんは、軽く会釈する。
武良も、軽い会釈を返す。
ワードマンさんは顕現した時の様に、消える。
武良は迷い無く向き直り、初めて通る廊下を迷い無く歩き始める。
この森は、良いなぁ。
はイ。イオン溢れル、清々しい森ですネ。
下草はちゃんと刈り取られ、芝生は青青と美しい。
生気に溢れ、邪気は微塵も感じられ無い。
キャーキャー♪
せんせー♪こっちだおー♪
武良の世界では幼稚園児位だろうか、30人位の集団が、かなり広い芝生の広場いっぱいに遊んで居る。
芝生の広場の脇を通る小道を、可愛い嬌声に微笑みながら、第二広場に向かう。
ゆったりと、第二広場に入って行く。
青い芝生が広がる第二広場のほぼ中央まで、歩を進める。
此処らで良いな。
武良は、ふわりと拳法の演武に入る。
ゆったりとした動きは、優雅で力強い。
観ているだけで、心が落ち着いて来るリズム。
まるで、優秀な能楽師の舞台を見ている様だ。
ふと武良は、青く、高く、広がる青空を見上げる。
演武を止め、しばし青い空を流れ行く白い雲を眺める。
来たか。
すっと、入って来た第二広場の入口を向く。
いつの間にか、編笠を目深に被った男が、入口直ぐに佇んで居た。
武士か?編笠を取って、髪型がチョンマゲでも違和感無いな。
「御用件は?」武良は、簡素に問う。
「問答無用」以外と渋く低い声で、返答して来る。
男は、ぱっと頭の編笠を投げ捨てる。
そうか。髪型は普通の……ソフト・モヒカン刈りか。
俺より少し年上かな? ストイックに鍛え抜かれた表情が、渋いね。
男は、続く動作でスラリと良い地金の『日本刀』を抜き打ち、上段の構えのまま真っ直ぐ武良に駆け迫る。
「示現流か」武良は、にやりと微笑む。
が、武良は示現流の男の剣が迫るのに任せたまま、両手をダラリと下げた自然体で動かない。
ガッ、キィイーン!!
ドスン!!
示現流の刀の切先は凄まじい金属同士の打撃音と共に、武良の左側の地面に深く食い込んでしまった。此の儘では刀を、上下左右に振れない。
「ぬぅっ!!」
ズボッ
示現流の男は焦る表情で、慌てて身を引きながら刀を地面から抜く。
武良は、いつの間にか右手の鉄扇を示現流の男に向けて、構えて居る。
「ぬぅ? むっ! そうか!! その鉄扇は、鎬( しのぎ )を備えて居るのだな!!!」
「当たり♪ 」武良は再度、にやりと微笑む。
『鎬作り』の刀の断面には、鎬と言う斜めに角度が付いている。
其処を、相手の刃筋の軌道に合わせれば、相手の刃筋の軌道を逸らす事が出来る。
しかし、いくら鎬が付いている鉄扇とは言え、『示現流・初太刀』の凄まじい勢いの刃筋を片手で跳ね返す豪腕と、短い間合いの鉄扇で刃筋を正確に見切れる見切りと、豪胆が必要だ。
武良は、あっけ無く『示現流の初太刀』を、鉄扇一つで捌いてしまったのだ。
示現流の男には、武良の構える鉄扇が、あなどれない白刃に見えて来た。
「うぬっ!」
示現流の男は焦るが、隙一分も無い武良に、迂闊に飛び込め無く成ってしまった。
「……早くしてくれるかな、後がつかえて居るんでね」武良は、示現流の男の左後ろに顎をしゃくる。
「なに?」刀を下段に構え直し、刃先を武良に向けたまま、視野に武良を入れながら左後ろを伺う。
「やっぱり、バレるか」
「流石は、最新の勇者だね♪」
全身頭まで迷彩服姿の、声だけで判断すれば男女が、示現流の背後のブッシュから立ち上がる。この森で、サバゲーでもして居た様な雰囲気だ。
「御用件は?」武良は興味深そうに微笑みながら、二人に問う。
「そこの刺客のお兄さんと同じ目的よ♪ 『新参勇者を暗殺する』と言う用件ね。『勇者召喚』て、珍しい事じゃ無いの。むしろ節操無い位。『これ以上、新たな勇者様は要らない』と考える方々が、以外と多くてね。と言う訳で、召喚早々で申し訳無いけど、死んで貰うわね♪」迷彩の目出し帽を被った多分女は、案外若そうな声で答える。
「分かりやすいねぇ。この世界が、こんなにもアグレッシブだとは、思わなかったよ」武良は、苦笑する。
「そうなの。この世界は『実力主義』で、弱肉強食よ♪」迷彩の目出し帽から見える、灰色の瞳は目で苦笑いする。
いきなり武良は、半歩移動する。
ボスン
武良の背後の芝生に、何か高速の物体が撃ち込まれる。
隼
応!!
いきなり武良の頭上に、バイク形態の隼が現れる。
スコープを、潰せ。
了解!
パス!パス!
隼のカウルから、何かが二発打ち出される。
「うわ!」
「やられた!」
第二広場の中央に佇む、ターゲットの新参の勇者を見通せる、しかし1000メートル程離れた建物の屋上で、スナイパーのスコープとスポッターの双眼鏡のレンズに、真っ赤な粘着塗料がベッタリ貼り付いて居た。
「クソっ!取れない!」
「引くぞ」スポッターが屋上入口に向けて、腰を浮かす。
ヒュン
バガンッ!
入口の扉が吹き飛んだ。
スポッターは、慌てて身を低くする。
「……新参勇者から、ロック・オンされてる。『動くな』と言う事だ」
「タイ・クォーンは、すげえ奴を召喚出来たな」
「あぁ。トウゴウの『示現流』を、軽くいなし。ブッシュ・マスター兄妹の静殺傷法をあっさり見抜き」
「後は……トウゴウの奥の手か?」
『そうなのか?刺客は、後何人なのかな?』
スポッターとスナイパーは、慌てて声の主を見る。
「……天使様?」スポッターが、某然とつぶやく。
目に前に、背中に白い羽を備えた完全武装の『天使』が立っている。
『答えよ。後何人か』
「さあ。何も打ち合わせをして居ませんよ。それなのに新参勇者が召喚される此の日、それぞれの組織から勝手に、名の通った刺客が集まって仕舞居ました」スナイパーは、全体像等わからないと言いたげに、両肩をすくめる。
「個人的意見でも、増え過ぎた勇者達の無用なせめぎ合いは、面白くは在りませんね」スポッターも、不満気に言う。
『あい分かった。ともかくタイ・クォーン教会守護天使ワードマン様が、勇者タケヨシさま要請を受け、そなた達を拘束する。そなた達の装備を片付けよ。そなた達を、勇者タケヨシ様のお側に、転送する』
「何だよ、新参勇者は、天使様も顎で使うのか!!」スナイパーはやや焦った表情でボヤく。
ドガンッ!
第二広場の方向から、大きな衝撃音が届く。
「トウゴウの奥の手が、発動されたか」スポッターは、ニヤリと笑う。
ごめんなさい。
投稿順番を、間違えました。
9話と10話、読み直して頂ければ幸いです。
明日(12月28日)は、先の話を、投稿致したいと思います。
宜しく御願い致します。




