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1-12.初めての聖剣

タキタルです。


歴戦で生き残るコツですか?

思い込みを、排除する事でしょうね。

目の前の事実を、有りの儘受け止める事です。

事実を、正確に把握出来れば、最善の対処法が発案出来ます。

バカバカしい発案でも、ちゃんと検討すれば、立派に使えます。


実証ですか?

私が此処に『生き残って居る』のが、実証では(渋く苦笑い)


新参の勇者様ですか?

先ずは、ありのままを拝見したいと思います。


「公爵様は、どうされましたか?」セルガは、ディグリー王都神官長に、密やかに(いぶか)しげに聞く。


「わかりません。ハナマサ勇者局長共々、昨夜から連絡が取れないのですよ」ディグリーもセルガも、都は違えど、ヴォーグ教徒には変わりない。


勇者召喚の儀式の準備を、今朝から共同で、準備して来た。


こっそり武良が、教会聖魔核に魔力を充填して置いてくれたので、ディグリーも『魔力欠乏』には、気が付かない。


「それよりも、セルガ。御気を付けなさい」ディグリーも、声を潜めて、セルガに忠告する。


「ハナマサとタキタルは、式が終われば……公爵(小心者)とハナマサは、巻き込まれ無い様に、行方をくらませて居るのでしょう」 ディグリーは後輩神官を、心配する。


「ありがとうございます。実は、武良勇者様の勧めもありまして、人は増やして有ります」

セルガは、先輩の思い遣り(おもいやり)に、頭を下げる。


確かにディグリーにも、教会衛兵隊やセルガの警護人が、目はしの彼方此方に伺える。


「ならば良いかも知れませんが、退避先等は?」


「はい、既に」


「わかりました。『ヴォーグの祝福』が、あらんことを」ディグリーは、セルガに祝福のサインを送る。


セルガは、素直に、祝福をうける。


ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。


急に『召喚の間』の入り口廊下の方から、大勢の足音が聞こえて来る。


目を合わせた、セルガとディグリーは、眉を同時にひそめる。


教会衛兵隊やセルガの警護人達は、慌ててセルガの周りに集まる。


ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。


『公都』衛兵隊だ。


続々と、召喚の間に入って来る。


ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。


あっという間に召喚の間は、公都衛兵隊達に、ぎっしり埋め尽くされる。


女性警護人ラナは、苦虫を噛み潰した表情をして居る。

流石は歴戦のタキタル衛兵隊長。予想だにしない手を、打って来る。

こちらの、およそ三倍の人数を引き連れて来るとは。



◯ ◯ ◯



教会衛兵隊は全員で、セルガの警護人も3倍にしてあったが、この人数差では、あっという間に押し潰される。

いざという時、セルガを守れない。


タキタル衛兵隊長は、後から、ゆったりと入室して来る。


「ディグリー王都神官長様。此方へ」タキタル衛兵隊長は、平素と変わらぬ態度で、促す。


ディグリーは、セルガを振り返る。


セルガは、少し苦笑いして、ディグリーに頷く。


ディグリーは、セルガに頷き返し、ゆっくりとタキタル衛兵隊長の横に付く。


「……タキタル衛兵隊長。こんなにも引き連れて来られるとは。何に怯えて居られるのです?」セルガは憤慨の気持を抑え、精一杯の笑顔で、皮肉タップリに問う。


「セルガ様の『大勢で御出迎えしましょう』と言う御言葉に、甘えさせて頂きました」セルガの皮肉には、取り合わず。平静に答える。それが、一番の皮肉かも知れ無い。


「……まぁ良いですは。笹木武良勇者様は、既に『真の勇者』かも知れません事よ♪ 呉々(くれぐれ)も、御無礼の無い様に願いますは」セルガは、確信を持って言う。


タキタル衛兵隊長の右眉が、僅かに、ピクリと動く。


しかし、うろたえはしない。


「承りました」と、武人らしく一礼する。


召喚された勇者様は直ぐに審査され、レベルを確認される。


権威あるタイ・クォーン教会で召喚された時点で、公爵に等しい指揮権・発言権が与えられる。


更には、勇者様が『高レベル』な程、此方の世界の『発言権』が増す。


『真の勇者』レベルであれば、一軍の采配権が与えられる。


しかし近年は、『傍若無人』と成る。勇者同士達の諍いが、問題に成って居る。


王都政府や、勇者系譜達は、『手柄を立てられてから、権限を与えてはどうか』との流れを検討して居た。


そこにタイ公爵から、タイ・クォーン教会が、『独断で召喚を開始した』との急報が。


慌てて、タキタルを衛兵隊長に仕立て、新参勇者の主導権を握る為に、多数の衛兵達と急行した。


歴戦のタキタルは、一考する。


過去の勇者の実力を考える。


それが、今回投入した衛兵隊の人数とした。



◯ ◯ ◯



『セルガさん』


しばし睨み合う中、メダリオンから良い響きの男性の声がして、召喚の間に響く。


「はい♪ 勇者様。今からお出でになりますか?」セルガは、声を高くして答える。


『はい。ゲートを……あー召喚式を始めて下さいませ』


「承りました」


セルガ殿は、舞台歌手の様に、良い美声で『召喚式』を唱和する。


いよいよか。


タキタルは、少し緊張し、集中する。


突然。教会聖句陣のど真中に、大きな丸い鏡の様な物体が現れる。


鏡の真ん中が更に薄く成り。湖畔の青い水面の様に、異世界の向こうが伺える。


異世界の向こうに、黒髪長身の男性が立って居る。


「ななな、何が? どうなって?」セルガ殿が、慌てて居る。


なんだ? 歴代勇者様が、時折つぶやく『ちーと』成る、特異能力の影響か?


『すみません。魔改造しちゃいました♪ 転送先の状況も確認したいですし』


改造?異世界から、セルガ殿の召喚式を改造したと言うのか?可能なのか?


黒髪長身の男は、微笑みながら一歩進み、その水面に身を通し、くぐって来る。


何だ? 平服に手ぶらか?! 何か、軽薄な男では無いのか? タキタルは、(いぶか)しむ。


彼は、後ろを振り返り、仲間らしき男女に、手を振っている。


異世界側での、勇者様の友人や同僚なのか? やたら、部屋の壁がチカチカ光って居るが……機会あれば、異世界へ御伺いして見たいものだ。


新参勇者様が、くぐって来た鏡が、急に消える。


彼は、微笑みながら召喚の間の彼方此方を、眺められて居る。


しかし彼は、この人数の衛兵隊なのに、気にならないのか?にこにこと平然と立っている。


「ディグリー王都神官長。タキタル衛兵隊長。わかりましたか? 紳士的な勇者様ですは」セルガ殿が、語り掛けて来る。


「その様ですな。では勇者様。此方へ」私は、打ち合わせ通り、勇者様を促す。



◯ ◯ ◯




何と、タイ・クォーン教会・第一守護天使様を使役出来るとは!


……これは、『二の手』を発動せねば。


さり気無く、部下に合図を送る。



何!? 神殿聖句陣を、あっさり打ち破っただと!……本人は、平然として居るのに……


此れは、昨今の魔物を折伏出来る勇者様の、可能性が……


おすがり、すべきか。『二の手』を、取り消すか……



いや。あえて、ぶつけてみよう。はっきりさせた方が良い。


タキタルの、腹は決まった。




◯ ◯ ◯




大勢の公都衛兵隊だが、すっかり勇者劇場の、ギャラリーに成ってしまって居る。


アウェイなはずだが、セルガはすっかり元気を取り戻す。


「では、この聖剣に魔力を籠めて見て下さいませ」いつの間にかセルガさんが、見事な刃筋を持つ両手剣を、柄を此方に捧げ持つ。


武良は素直に受け取る。しかし見事な業物だな。


「魔力を籠める、とは?」


「勇者様を御招きした時の慣例なのですが、失礼ですが命預ける方の御力を測らせて頂きますは♪」



「さっきので、良いんじゃね」

「あぁ。神殿聖句陣を、簡単に突破されちゃったんだし」

「……あの聖剣、大丈夫かな?」

「……ヤバいにエード一杯!」

「俺も、ヤバいだ」

「ヤバいと思う」

「……賭けに、成らねーよ」


衛兵達の囁きが止まらない。



期待に応えて破壊するまで魔力?を()めても良いんだが、折角の業物だしなぁ。

隼、『オーラ』の調整はどうかな?

まダ、此方で『オーラ』を発動して居りませんのデ、基準値を定めて頂かないト……

そうだよね。じゃぁ最小『オーラ』を、流してみよう。

了解。


「あ、セルガさん。一応、もう一度聖句陣(防御バリア)を、私の周囲に御願い出来ますか」


「あ、そ、そうですはね!」セルガさんが、慌てて聖句を唱え始める。


直ぐに、武良を中心に聖句陣が床に現れる。



ヴォン!!!



武良の回りの空間に、立体的なカウンター表示が、いくつか浮かび上がる。


そして、それぞれのカウンターの意味する表記が、


「ステータス」


「装備」


「魔法」


「スキル」


そして、


「称号」


ふうん。まるで、ゲームメニューだな。


「では、始めます」


武良は、見事に輝く聖剣を右手に持ち、『オーラ』を流す。


ヴォン!!!


「ステータス」


「装備」


「魔法」


「スキル」


の、格カウンターは、狂った様に激しく回り出す。


そして、


「称号」の表示には、ものすごい早さで、文字の縦スクロールが始まる。


あまりに早いスクロールで、一つ一つの「称号」を、読み上げることは出来ない。



ポン



……ついに聖剣は、シャンパンを抜いた時の様な音を立て、砕けて仕舞った。



バシッ!!!



……聖句陣は消え去り、立体映像の格カウンターも消え去り、召喚の間は薄暗く成る。



其れを目撃した神々や、人々の目は、又もや点に成る。


おいっ、隼?!

いやいやいヤ! 最小オーラで流しましたヨ!!


武良も、柄だけに成って仕舞った聖剣を手に、目が点になる。


取り敢えず、破裂した刀身の破片は、サウザン・ハンズ・フィールドで全て捕まえてあり、破片のまま中に浮いて居る。


……隼 とりあえず、レプリケートで誤魔化そう!

ハイ! 成る程!聖剣の諸元データは押さえて有りまス!


武良の右手の刀身が無くなった柄から、聖なる青い光が伸びる。光に向かって、バラバラに成った聖剣の破片が集まって行く。


青い光が収まると、聖剣は見事に復活して居た。いや、薄っすらと青く発光して居る。


ヒュン


武良は苦笑で誤魔化しながら、柄を格好良く返して、セルガさんに捧げる。


「えーと、セルガさん。これで良いですか?」


「あ!失礼しました!」


ぽかんとして居たセルガさんは我に帰り、そのまま聖剣を受け取る。


ズシリ


「なに?! 聖剣が重いですは!!」


聖剣を受け取ったセルガさんの顔が、驚愕に引きつる。

そして聖剣のその重さに、セルガさんの足元がふらつく。


すかさず、彼女の脇に顕現して立って居た守護天使ワードマンさんが、聖剣に右手を添える。


ぶわっ


守護天使ワードマンさんの全身が、聖剣に触れた瞬間に、聖剣の放つ優しい聖なる光に包まれる。


瞬間に、ワードマンさんの装備が、完全武装らしき装備に変わる!


「うわ!此れは……見た事が無い装備だ。しかしこれまでの鎧の数倍、攻撃力も防衛力も強行だ!」ワードマンさんは、目を向く。


その鎧は、白銀に優しく輝き、彼の逞しい身体の動きを邪魔しない様な滑らかな形状に成って居る。しかし、何と言う雄々しい武者姿だ。


更に彼の右手の聖剣の拵えも、鎧に合わせて変わって居る。彼はそのまま右手の聖剣を掲げ、刃筋を見聞し始める。


全体の印象ハ、異世界の衣装に沿ってはいますガ、あちこち『侍』ノ、標準装甲装備の形状が見受けられますネ。


……そうか。この異世界では、オーラは、俺のイメージ通りに具現化するんだな。ワードマンさんの神像が完全武装っぽいから、俺ならどの様にデザインを編み上げるか、さっき頭の片隅で考えちゃってたから……


シャキン


ワードマンさんは右手の聖剣を優雅な動作で、これまた見事な拵えの腰の鞘に収める。そのまま、武良に向かって片膝を付いて武人の礼を取る。両手を武良に向けて感謝の形に組む。


「笹木武良殿。早速の御力を感謝する」彼は顔だけ武良に向け、嬉しそうに微笑む。そして、すっくと立ち上がる。


「正直、昨今の魔族の強さに、閉口して居たのです。しかしこの神聖剣と、白銀の聖鎧の強さなら……守護天使として、存分に働ける」にっこり、一笑破顔する。


「ありがとうございます」ワードマンさんは、改めて武良に感謝に頭を下げる。


見ると、セルガさんや四獣神や、更には衛兵達全員が額づいていた。


えーと。結果オーライて事かな?

状況に同意しまス。皆さん最大限の感謝の意ヲ、表されて居られますネ……多分、マスタからの返答無けれバ、彼等はこのままかト。

そだね!では……


「皆さん。顔を挙げて下さい」武良は、落ち着く柔らかな声で述べる。


ワードマンさんやセルガさんが、微笑みの顔を挙げる。


四獣神も、にこにこ顏で武良を見詰める。


タキタル衛兵隊長を始め、王都衛兵達も畏怖の眼差しで、武良を見上げる。


「私は、ここに呼ばれた意味を、しっかり受け止めたいと思います。しかし、私も人間です。知らない事には対処出来ません。この世界の事を諸々教えて下さい。宜しく御指導の程を、願います」円形ステージな状況で全員に囲まれて居るが、守護天使ワードマンさんと神官長セルガさんが居る位置を上座と決め、武人の一人として背筋を伸ばし、優雅に二人に一礼する。


召喚の間は、武良の武人らしい所作に、清々しい雰囲気に包まれる。


◯ ◯ ◯



……新参勇者様は、剣さばきや所作を御伺いして、かなりの腕前に違いない……そして、自ら首を下げられ、教えを請う態度。セルガ殿の申す通りのお方の様だ……ならば、何方に赴きを図るか、見極めねば。


タキタルは、胸に灯った『希望』を、大事にしようと、決めた。

ひやあぁあぁああ!


申し訳ありません。

予定して居た話の『順番』を、前後間違えました!


ごめんなさい。

投稿し直しますので、読み直して頂ければ幸いです。


そして、明日の投稿分も、本日投稿致します。


明日は先の話を、投稿致します。


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