↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宇宙の反対側で  作者: 彩色栞彩


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/8

第四章 新たな情報

ブリッジの修復作業を終えたミサキが、手際よくハンダごてのスイッチを切った。

冷えきった艦内に、静かな安堵が広がる。

「司令、各部破損箇所修繕完了。エンジン出力、定格の95%まで復旧。これなら、いざという時の急旋回にも耐えられるわ」 「分かった。ミサキ、お疲れ様」

レンは管制コンソールに視線を戻した。

その隣では、AIのエコーがいつもの軽快な動きを止め、珍しく「重苦しい」表情で宙に浮いている。

その周囲に展開されたデータウィンドウには、見たこともない複雑な演算式が渦巻いていた。

「エコー。解析情報と、その『意外な事実』とやらを報告しろ」

エコーは小さく頷き、ホログラムの光を強めた。

ブリッジの中央に、巨大な星系の構造図が投影される。

「……はい、司令官。まずは解析結果から。彼らが我々を追い詰めた際、あえて攻撃しなかった理由が判明しました。彼らの艦隊は、戦うためのエネルギーすら枯渇しかけているのです」

「枯渇だと? あの巨大要塞を動かしているのにか?」 アルトが驚きの声を上げる。

「ええ。彼らの要塞は、エネルギーを産み出すのではなく、『他の星系から吸い取っている』のです。彼らがバーナード星系を目指していたのは、そこが最も効率よくエネルギーを吸収できる『ゲート』になり得るからでした」

エコーはさらにデータを展開した。そこには、赤黒く変色した星々の並びが、歪な円を描いている。

「そして……こちらが『意外な事実』です」

エコーが提示したデータに、全員が息を呑んだ。

それは、彼らの文明がかつて保有していた「設計図」の断片だった。

そこには、太陽系の地球と酷似した地形データが刻まれていた。

「彼らは我々の星を侵略しに来たのではありません」 エコーの声が、ブリッジの空気に深く染み渡る。

「彼らは、かつて『地球から追い出された文明の末裔』なのです。数百万年前、大災害によって太陽系を捨て、銀河の果てへ逃げ延びた……。彼らにとって、我々人類は『かつて自分たちの家だった場所』を無断で占拠している、後継者という名の『不法侵入者』だったのです」

ブリッジに、再び重苦しい静寂が訪れた。レンは深く背もたれに寄りかかり、天を仰ぐ。

「……つまり、我々が守ろうとしている故郷は、彼らにとっては『奪われた正当な権利』であり、我々が手にした文明の発展は、彼らの犠牲の上に成り立っている可能性すらあるというのか」

レンの瞳に、冷徹な戦略家としての色が戻る。彼にとっては、感情よりも「歴史的な事実」が突きつけられたことの重さの方が、今の戦況をより複雑にしていた。

「アルト、ミサキ、カレン。……我々は今、ただの生存競争ではなく、惑星規模の『家宅立ち退き訴訟』に巻き込まれているようだ」

レンは冷ややかにそう切り出し、コンソールを力強く叩いた。

「エコー、彼らの要塞の動力源、その『心臓部』の場所を特定しろ。話し合うにしても、圧倒的な戦力差を突きつけた後だ。……チェス盤をひっくり返す準備はいいか?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。