第20話 仮面の策士
仮面をつけた人は誰にも聞こえないように笑った。
遥に対してヤジが飛び騒然としていた。そして皆に聞こえるよう、静まり返るよう手を叩いた。
「おまえら馬鹿なのかー-!!」
さっきまでの口調とは裏腹に、突然叫びだした。仮面をつけた人はこの状況を待っていたかのように捲し立てる。
「さて、腕っぷしの無い、頭の無い冒険者たちに解りやーすく、ランドの矛盾を伝えます。グラン(ギルド長)あなたにも、言っているのですからね。
『抵抗はしたんですが、二人とあってか歯が立ちませんでした。情けない話ですFランク相手に』…ランドが言った言葉です。矛盾が2つありますが、どうせ分からないですよね?ランドさんも自分の言動…おかしいと思いませんよね?」
周りはもちろん、ギルド長もランドも分かっていない。遥は仮面をつけた人に、ゆうの存在を感じた。
「ギルド長は『イカロスの翼』が今回の件に関わっていると知ったのは、ランドが抗議している時、ギルドに入ってきた彼女たちを指して、あなたは知った。
『てめーらFランクは信用されていないんだよ』っとそのあと、ランドはこう言った。
ギルド長にパーティー名はおろか、個人の名前も伝えられないのに何故、彼女たちがFランクだと分かったんですかね?
次に、さっきランドは『抵抗はしたんですが、二人とあってか歯が立ちませんでした』と魔石を奪われた時の事をこう話しましたが、『そこのガキがやるのか?それとも小娘がやるのか?二人、まとめてでも良いがな』っとこの場で戦う前にこう発言しました。こいつ何言ってるんだ?と私は思いましたが、そういう人間なんですね」
そして、極めつけの記録玉を出す。過去の映像と共に。
「まぁ、たぶんこの記録玉を見て、遥さん以外は分からないでしょ?あっ愚か者のランドさんも分かりますよね?
『イカロスの翼』がFランクの依頼受けるところから、1件目を終えて2件目まで尾行して、そして彼女たちよりも先にフォースベアを見つけ、彼女たちのところまで、誘導そして囮にして去った。しばらく待機していた、ランドは頃合いを見測り現場に戻る」
ランドは、Fランク、Eランクの冒険者を狙い同様の手口で魔石を横取りしていた。
その中で、女性で構成されているEランク冒険者パーティーが相談に来て調査していたらしい。
「こんな感じですね。どうですかランドさん、反論有りますか?無いですよね?一応、もう謝罪は受け入れないと思われた方が良いですよ。嘘に嘘を重ね、ここまで来たのです。ついでにあなたは2度命拾いしているんですから」
そして最後にギルド長に、とんでもない取引をした。
「それでグラン、どうするんですか?よく調べもせずに冤罪を作り、犯罪者をかばった事について」
「申し訳な…」
軽く頭を下げるギルド長、謝罪もするところだったが、食い気味に。
「まさか?頭を下げて謝罪で終わらす訳ないですよね?彼女たちに依頼を2度と受けさせない発言、そして犯罪者を野放し、新たに被害者を生んでいた可能性。あなたの軽い頭をいくら下げても何の価値もないんですけど?」
「それじゃどうすれば良い?何をしたら満足なんだ」
「そういう考えを持っているから、謝罪はいらないんですよ。この記録玉を記者に売り飛ばします」
「…!?…何をすればいい?」
さすがに立場が危ういと感じたが、半ば条件に乗るギルド長。完全に蚊帳の外の遥。
「さっきのハルカさんのパンチを、あなたが受けてください。一発です。防いでも構いません。ですがその攻撃をもし食らって死んでしまっても、甚大な怪我をしても、ハルカさんに罪は問わないと記録玉に証言してください」
「何故、俺が彼女の攻撃を受けなきゃいけない?明確な理由があるのか」
「どうしたんですか?怖いんですか?たかだかFランクの小娘のパンチが?
理由は2つあります。まずあなたは犯人を擁護した。よく調べもせずに。
そしてもう一つ、ランドさんは2回命拾いした。そして彼は、誰に助けられたのか?何をもって命の危機に瀕していたのか解っていません。それをあなたが体を張って証明するのです。
何故かって、あなたは犯人を擁護したのだから」
「分かった。一発だな?」
そして、グランは遥の罪に問わない事を記録玉に宣言した。仮面をつけた人は、遥に『どこでも良いから一発だけ殴ってもいい、出来るだけ殺さないように』っとギルド長に聞こえるように説明した。
「ランドさん、私があなた達の戦いに割り込んだのが一回目、そしてもう一つはそれよりも前でギルドの中…あなたの前で拳を繰り出した女の子と拳を抑え込んだ男の子。あの時の威力を今見てほしいの…あなたが侮ったFランクの力」
ランドは覚悟決めていた。独房に入る覚悟、もう2度と冒険者として働けない覚悟。それでも生きている。何故、女の拳で命を落とすのか?覚悟の中に疑問があった。
そして、お互い20メートル位間隔を開ける。構えるギルド長と上の空の遥。
遥はあまりにも放置されていたため、これが終わったら何しようと考えていた。
お互いの距離から中間の所に、仮面をつけた人が立っていた。
「ハルカさーんもういいわよ」
「え…あっそれじゃ。いきまーす」
「一発だ…たった一発防げば。………きっ消えた?後ろかっ」 ガン!!!ドゴン!!
誰も視線を外さなかった。彼女からは…でも突然消えた。仮面をつけた人も目で追えなかった。ただ遥が立っていた場所から遥が消えた。普通にグランの方に向かったと考える。
だからグランに目を向けた。遥はグランの頭上にいた…そして頭頂部に拳を振り下ろした。
グランの顔面は地面にめり込んだ。頭の悪い冒険者でもさすがにわかった。そしてランドの疑問も晴れた。『ハルカ=オーズに手を出すな』という共通認識がバレッタの冒険者の中で生まれ始まった。
「あれ?抑えたのに、死んじゃったかな?」




