第21話 魔法の構造
ギルド長は生きていた。重体だが命に別状はないというやつだ。
「ハルカさん、おつかれ」
「ミラール、ありがとうね。色々助けてもらちゃって」
「大丈夫よ。でもごめんね、任務に利用した形になっちゃって」
「………」
「…あ!!」
こんな感じでバレたみたいだった。まあ、俺も気づいてはいたけど正体隠していたみたいだし。
そして彼女はAランク冒険者だった。こっちの方が驚きだ。
ギルド長を叩きのめしてから、【古本屋】に行って、買い物して。
俺もバイトから帰ってきて、遥と仮面をつけた人が家にいたから、普通に。
「ただいまー。あっミラール来てたの?」 「何で分かるんですかー!!」
などというやり取りがあった。ただ仮面を付けていただけだから…そりゃねぇ。
今日は、遥がご飯を作ってくれた。遥が料理できた事もだが、煮物が出てきたことが一番嬉しかった。まさかこの世界で、再現できるとは…遥ってすげえよ。そんな感じで、3人で食卓を囲んだ。
そして遥は、魔法の事を語りだす。ミラールもいる前で喋るのか?それなら…。
「ミラール、うまく言えないけど、俺たちこの世界の人間じゃないんだ」
俺は、この世界に来た事、マロウニー村の人間じゃない事、遥の魔法の事を話した。
【世界の理を乱す者】を除いて、自分たちにも解らない事を、相手に説明するのは難しいからだ。
「何か納得しました。普通じゃないですもん、二人の力は」
「遥、先に魔力の出力の上げ方を教えてくれないか?」
そして俺と遥は抱き合った。ミラールに「なっ何してるんですか」っと言われた。
それはそうだ、急に目の前で抱き合ったら、そういう反応になる。
俺の中で時折、激痛が走る。しばらくすると俺は遥から離れる。
「ありがとう遥。この痛みは、使っていくうちに消えるのか?」
「うん。私も出力を上げすぎると、そういう風になる。でも使っていくうちに、段々とコントロールできるようになった」
「あの…。私にもそろそろ説明が欲しいのですが?」
忘れていた訳じゃないが、完全に蚊帳の外だった。
「あっごめん。俺は【炎の魔法】と【3種類のバフ】が使えて、全部遥に教えてもらったんだ。【炎の魔法】は何とか口頭で解ったんだけど、【3種類のバフ】は全然理解できなかった」
「でも、二人の魔法って原理を理解していないと、発動できないんじゃ」
「そう何とか理解したかったけど、解らなかった。それで遥は何故か抱きついてきた。それで自分を通して、俺に魔法を発動させた。俺は感覚で覚え、感覚で【3種類のバフ】を発動しているんだ」
本当は理解したかった。俺の頭が悪かったせいだ。何でもできるって驕っていた自分が情けなかった。遥は喜んでいたけど、でも理解して発動させればもっと喜んでいたのかもしれない。
けれども、馬鹿な俺に時間を割かせるわけにはいかないと思い、今も邪道な方法で【魔力出力】を覚えた。
「ハルカ、私にもお願いできる?」
遥は、ミラールも俺と同様の方法で魔法を伝授。彼女が覚えていない風魔法を遥を通して発動させた。
炎魔法、水魔法を続けて発動させた。ミラールは少し、めまいがしたらしい。
「ごめんなさい。魔力は流れてくる感じはした。でも、微塵も使える気がしなかった。ユウ君は、この方法で魔法が使えるの」
少し休憩をはさんで、遥がこの世界の魔法での違和感について話した。
「私、今日ランドって人の【無数の氷の槍】って魔法を見たんだけど、魔力の形状が球体だったの。魔法の形状は槍だったのに。試しに同じ感じで細い針の氷を出したんだけども、魔法とと魔力の形状が一緒だったの。私とランドの魔法を発動する仕組み自体が、違う感じがした」
ミラールは遥の話が、理解できなかった。それはきっと【魔力視認】の存在が原因だ。
俺は俺なりに説明してみた。理解は出来なかったみたいだけど、納得はしてもらった。
少し考えてみた。そして、ある仮説を立てる。二人を外に連れ出し、遥は何故か楽しそうだった…ホントに好きだよな実験。
ちょっと前に【古本屋】のじいさんに貰った、【魔法の本初級】を借りて、【炎の槍】を出してみた。
そして遥に教えてもらった、炎の魔法(ろうそくの火の形状)を出した。
この実験で俺の中でも、勘違いしていたあることに気づいた。
「初めてこうやって魔法を2つ出すと、同時に出しているんじゃなくて、一つ出して維持、またもう一つ出して維持。これは同時発動じゃないんだな」
「そうだね、水だと分かりやすいかも、水道みたいに流動的だと、出る量を維持するには魔法を発動し続けなければいけないけど、逆に魔力の管とかは物質みたいなイメージは形を維持できるし。現実に維持できるものは、魔法で再現して維持できる。
あの時これで【ウォータカッター】用に極細の管を一つ維持、あとは水と押し出す風で、同時2種類発動」
「遥がやると、簡単に見えるとけど…いや言語化するから難しく感じるのかな?遥に魔法を教えてもらうとつくづく思うよ。体で魔法を覚えているんだ俺は」
「よくわかりませんが、ユウ君の2つの炎の魔法はどういう意味があるんですか?」
【魔力視認】で魔法を見ると、【炎の槍】は見た目は槍、魔力は透明だが小さい球の集まりが槍の形状をしている。遥の魔法は、見た目もろうそくだし、魔力の形状もろうそく。
魔力の小さい球の集まりが無いんだ、魔法の構造に違いがある。
槍の方は、魔力を纏って殴ると弾き飛ばせた。魔力は魔力で触れられる。
遥の魔法は、同じことをすると揺らぐだけで消えない。魔力を纏っているけど、実物の炎みたいに触れられない。
「ゆう君、試しにもう一度、同じく魔法を出してみて?」
遥は、何かの魔法をさっきの2種類の炎の魔法に放った。だが、ろうそくの炎しか消えない。
「今、両方とも炎の周りの空気を抜いた。真空状態にしたんだけど。何故【炎の槍】は消えないの?」
「ミラール、この世界の人って魔法以外で火ってどうやって出しているの?」
「えっ?魔法以外に火って出せるんですか?」




