第17話 殺意のこもった…
おっさんは急に、目の前に出てきた。俺たちの事を見つけると、特に言葉を交わすことなく、走り去っていった。
それから間もなく、おっさんが来た方行から、熊?のモンスターが現れた。
「フォースベアっぽいな、それにしてもあのおっさん…」
「私たち、囮にされちゃったみたいだね。ん~作戦は…転ばせて、蹴り入れる」
作戦とは一体?とりあえず、俺が先に二足歩行のモンスターの懐に入り、左後ろ足を水面蹴り。
左側に倒れるように体制を崩す、すかさず ガン!!っと音と共に、モンスターが右側に吹っ飛ぶ。遥が、モンスターの左頭部を蹴ったためだ。
まさかとは思ったけど、これで終わりだった。モンスターは魔石になったのだ。
「何か遥の蹴りすごくない?10メートルは飛んでいるんだけど?」
「ゆう君より、魔力の出力を上げているからじゃない?」
「何それ?出力?【攻撃力強化】は【攻撃力強化】じゃないの?レベルが有るの?」
「ちょっと待って。さっきの人が戻ってきた」
周りの様子を見ながら呑気に戻ってきたおっさん。そしてこのおっさんはとんでもない事言いだした。
「おいっおまえら。それ、さっきのモンスターの魔石か?よこせ」
何を言い出すかと思えば、でも小物の言い分が気になったので、黙って聞いていた。
「あれは俺が見つけたの?分かる?勝手に横取りはよくないな」
「討伐依頼できたので、文句があるのであれば、ギルドにお願いします」
「あ~あ、解った解った。見たところ駆け出しだろ?おまえ」
だから何?という捨て台詞で、町の方角へ去っていった。
お互いやれやれっという感じで、町に向かおうとしたら、また誰かが歩いてきた。
何だよもう次から次へと、午後からバイトが有るんですけど?速く終わらせたいんですけど。
「こんにちは。すごい戦いでしたね」
「ミラール!?何でこんなところに、仕事はどうしたの?」
「今日、お休みですよ?二人が町の外に出るのを見たんで、こっそりつけてきたんですよ」
マジか、全然気づかなかった。怖いな記者って…ん?まさか…?
「まさか…記録玉で、撮っていないよね?」
にっこり笑うと、ミラールは何処から取り出したのか?記録玉を見せる。
「大丈夫ですよ。別に記事にする為に、撮っていた訳じゃないので。でも、たぶん役に立つと思いますよ」
何やら含みのある言葉。とりあえずは悪用する、感じはなさそうなのでスルーする。
依頼も終わったしギルドに報告しに行く、何故かミラールも一緒に。
ギルドに着くと、何やら雰囲気がおかしい。周りが俺たちを見る。でもすぐに理由が分かった。
さっきの、おっさんとギルド長がこちらを睨んでいる。
何やら面倒くさいけども、そこを通らなければ受付にたどり着けない。二人に近づくと…。
「こいつらですよ。俺から魔石を奪った、ガキども」
「また君たちか。この男が倒した、フォースベアの魔石を盗ったのか?」
「いいえ違います。自分たちで倒して手に入れました。因みに盗った証拠でもあるんですか?」
「逆に、君たちが討伐した証拠もないが?」
「てめーらFランクは信用されていないんだよ。雑魚はその辺で草むしりでもしてろ」
そう言うと、おっさんは俺の事を突き飛ばした。その反動で尻もちをついてしまった。別に痛くはなかったんだ、でもそういう事じゃなかったんだ遥は…。
俺の背後から殺気が感じた…。そう殺気を向けている先は、おっさんだった。
猛スピードで遥はおっさんに殴りかかる。座り込んでいた俺はすぐに。
バンッ…破裂音が響き渡る。…遥の右ストレートがおっさんの目の前で止まる。正確には、おっさんの顔面スレスレで俺の手で割り込ませることができた。おっさんは、衝撃で尻もちをついた。興奮状態の遥も、我に返る。そして、悲痛な表情を浮かべる。
【防御力強化】かけていた。にもかかわらず、この痛み…本気で殺そうとしたのか?
「ゆう…くん…わっわたし…」
「遥、大丈夫だ。落ち着け…。ふぅ…ギルド長、どうしたら信用してもらえますかね?」
「その女、今殴ろうとしただろ?ふざけんじゃね…表出ろ…先輩として教育してやる」
嘘だろこいつ?今の殺気も、目の前の拳も、お前の中ではその程度なのか?
ダメだ腕の痛みで、考えがまとまらない。そして入口の方から、声が上がった。
「ではこうしませんか?ハルカさんが、ランドさんと決闘という形で彼女たちの力を示す。
ギルド長もランドさんも、彼女たちがフォースベアを倒してと思っていません。
何故なら彼女たちはフォースベアより劣っているから。
フォースベアを一人で倒した、ランドさんを倒せば、彼女たちの言い分が証明される。
できなければ、ランドさん言い分が正しい。そういう事になりませんか?」
「あたりめーだ。Dランクの実力を見せてやる」
助かった。まんまとおっさんが口車に乗せられた。誰だあいつ…仮面をつけている。フードもか被っているし、男か女かもよく分からない。それにミラールの姿が見えない…まさかな。
皆ぞろぞろと、ギルドの正面玄関のところへ見物の為に集まる。物好きな連中め。
「遥…。腕が痛いから肩を貸して」 「ゆう君…。ごめんなさい」
何をそんなに落ち込んでいるのか、いや逆の立場だったら、そうなるかもな。
「10の力を出せるとして、なんぼで殴った?」 「10…」
殺す気満々だった。まあこれも逆の立場だったら、やっぱりそうはなるな。
「怒っていないから、大丈夫だ。それでも気にするんだったら、自制心を鍛えよう。俺も遥も、人を殺してしまう力があるってことを自覚しよう」
とは言いつつも、遥が危険な目に遭ったら、躊躇なく殺すけどな、モンスターやたとえ人間でも。




