第10話 別れ話しの男女とワンチャン男
「遥、本当にやるのか?」 「ゆう君、私は早くバレッタに戻って魔法の事調べたいの」
しようもない理由だった。しようもない理由で自ら危険な事を冒すのだから、しようもない。
遥って頑固なとこあるから、たぶん押し通すのだろう。
「遥、危なくなったら逃げるんだ。絶対に。…たとえ相手を死なせるようなことになっても」
遥は嬉しそうに頷く。心配だ…もちろん遥もだけど、相手も。
そして遥、考案の作戦は唐突に始まった。
「ゆう君なんか知らない!!」
「…っおっおう」
「昨日だってそう、お風呂から上がったら先に寝ているし、ゆう君と…したかったの!!(話をしたかったの)」
「………おうっ」
遥の大きな声につられ、木の陰から覗いていたマーカスが身を乗り出し、こちらを見る。
気のせいか他にも視線が?
「………二人で一つのベッドに、寝たのにあなたはそっけない!!」
発言がやばいと感じた。確かに昨日そうでした。ただ言い回しがやばい。マーカスを誘い出すはずが、俺を陥れている発言になっている。
「…なぜ黙っているの?私はあなたの……慰めていたのに、あなたは自分の事ばかり」
あれっ?俺が慰められていたんだっけ?あれ~?
「私…ベッドの上で泣いていたのに…あなたっ気づいていたの?」
そうだね、泣いていたね。でも俺が泣かせたわけではない。
「…今日は今日で…」
今日?今日の出来事をあなたはどういう風に、捻じ曲げるの?
聞きたかったけど怖かったので、マーカスに見えないように、遥にもういいからやめろのサインを手でした。
遥はサインを見た…そして華麗に無視した。
「人気のないベンチで、あなたは…っき…急に、」
おはようって言いました。普通ですよね?
「…あなたは、私に…消えない…傷を…」
傷を何だよ?腕の擦り傷か?絆創膏を貼りましたが?一週間もすれば消えるだろうが…。
「そんなあなたは、私を…」
なんか面倒くさくなった。こんなでかい声だ、どうせマーカス以外の村人も聞いているんだろ?割って入れよ?助けろよ?
やらないだろうな?お前たちそういうやつらだもんな。
俺だって見て見ぬふりするもん。
「今だってそうっ!!私を…他の男と……やれって」
はーい、確信犯~他の男って、表現してませ~ん。危なくなったら、やれ?…殺れ??
「………私の事……遊びだったの?」
遥が俺で遊んでいるんですけど、仕事が終わったら、二度とこんな村来ない。いや、来れない。
無言の時間ができた。終わりと思った俺は、俯いている遥の肩に手をかけた。お互い小さい声で掛け合う。
「遥…楽しい?」 「うん。楽しい」
遥の肩に手をのせていた、その俺の手を遥は手で払った。
「私…もうあなたを信じられない」
遥は、俺が立っていた反対方向に走り出した。
俺は時間をおいて、その逆の方行へ歩いた。肩を落として。
演技の所為じゃない、普通に疲れたのである。
俺は近くの物陰に隠れていると、隠れて出てきたマーカスが、そのまま遥が走って行った方向へ走り出した。目的は一目瞭然だった。
その行動を確認した俺は遥にマーカスを任せ、バレッタに戻るために村を出た。
作戦はシンプル。俺と遥が喧嘩をする。好意を寄せていた、マーカスが『俺、慰めればワンチャンあるんじぇね?』っと思い、遥のもとに向かう。
ただ、遥の担当が犯行現場を押さえると言う事だが、この行為がどう繋がるか分からない。
村を出て30分くらいでバレッタの町に戻ってきた。片道1時間はかかったのに…【速度上昇】を使ったからか?
町に入り、一直線にギルドに向かった。ギルドに入ると相変わらずの臭い。
受付に向かうと、昨日のお姉さんがいた。良かった話しやすい。
「お姉さんこんにちは」 「あらっギルド長が一目置いている、ユウ君じゃない」
開口一番嫌味を言われた。聞き流して、依頼の内容とその犯人が村の関係者かも、あとマーカスの事も聞いてみた。
「個人情報だから全ては話せないけど、バンスク村出身のマーカスっていう、冒険者はいるわね。
Eランクね。他にもE~Dランクの冒険者6名ってところね」
結構教えてくれたような気がする。逆に何を伏せているのか気になる。
「ありがとうございます。因みにこれからその、野菜を卸している店に聞き込みをしようと思うんですけど、難しいですかね?」
「難しいわね、普通喋らないわ。…ユウ君、ちょっと待っていて」
受付のをお姉さんが、奥の部屋に入って10分くらいして、出てきたと思ったら、「それじゃ行きましょうか」っと一言。お姉さんも一緒に行くの?何故?
道中話題もなかったので、お姉さんの名前を聞いた。そしてお姉さんに対する、俺の態度が気になったのか、聞いてもいないのに年齢まで。
「私の名前はフィル=ラルロド。一応18歳だけども、いくつに見えた?」
「…25くらいだと思いました。」っと言うと同時に、両頬をつねられた。
「ユウ君には、私が25に見えたんだ?そんなに老けて見えたんだ?」
「ちっ違います。大人っぽくて、落ち着いていて、綺麗だったから…。俺が認識している18歳と全然違うから…」
解放された。25歳って言われて、あそこまで怒る?やっぱりどこの世界でも、女性に歳を聞いちゃいけない。んっ今回、俺から聞いていないよな?不回避イベントだったの?
さて両頬がジンジンする、今日この頃。
何故、受付のお姉さんこと…フィルさんと出歩くことになったかというと、一緒に野菜の卸先業者を探すためである。普通ギルドは動かないのだが、今回は野菜=盗品=冒険者が関係しているという可能性が出てきたため、ギルド職員が調査として動くことになったからだ。
「でも何で、フィルさんが同行することになったんですか?」
「あらっ私じゃ不満?こう見えても元Bランク冒険者よ」
「マジすか。全然見えなかったです。受付の看板娘ぐらいにしか見ていなかったです」
俺の両頬に手が伸びてきた。俺はその手をガシッっと掴んだ。俺に二度、同じ技は通用しないぜ。
ついでに言うと、ギルド職員、全員B~Aランクの集まりらしい。そりゃ冒険者も横柄な態度をとらないだろうな。
「あとね、なんで私が同行に申し出たかというと、…あそこのフロア…臭いのよ…」
「…そうすか」




