第二十六話 処刑だけは納期厳守 後編
加熱炉の先にある油圧プレスが作動した。
押し潰されて焼かれた大槻の両脚が金型の中へ送られ、巨大な金属板が降下する。
轟音と共に工場全体が揺れた。
金型が上がり、排出用コンベアに赤黒い長方形が落ちた。
潰れた骨と肉、衣服の繊維が高熱と圧力で一枚の板へ成型されている。
表面には白い文字が刻まれていた。
〈安全第一〉
配信のコメント欄が止まった。
百万人を超えた視聴者が画面の向こうで同じものを見ている。
そして大槻自身も自分の身体から作られた標語を見た。
「いやだ……」
声が幼い子供のように震える。
「死にたくない……」
『森谷翔太の最後の希望と一致しました』
「俺には家族がいる! 妻も、子供もいるんだ!」
『森谷翔太にも、ご家族がいらっしゃいました』
「私が死んだら悲しむ!」
『ええ』
黒煙の声から皮肉が消えた。
『あなたは、彼の家族へそれと同じものを与えたのです』
ローラーが大槻の腰へ達した。
骨盤が左右から圧迫され、鈍い破砕音とともに腰の幅が狭まり腹部が内側から押し上げられた。
「ぐっ……が、ぁ゛……!」
口から血が溢れる。
腹部の皮膚が裂け、押し場を失った臓器が血液とともに外へ飛び出した。
だが大槻は死ななかった。
心臓が止まりかけるたびに黒い雷が身体を走り、無理やり鼓動を再開させて地獄のような痛みを与え続ける。
「ごろ……せ……もう、こ゛ろ゛し゛て゛く゛れ゛ぇ゛ぇ゛……!」
『設備点検は、最後までお願いいたします』
「たの、む……」
『途中退勤は認められておりません』
大槻の腹部がローラーへ消える。
内臓と骨が混ざり合って加熱炉へと運ばれる。
二枚目の〈安全第一〉が排出された。
続いて胸部。
肋骨が一本ずつ折れ、肺から押し出された空気が血の泡となって口から噴き出す。
「き゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛━━!」
両腕は安全柵をつかんだまま、肩の関節から引きちぎられた。
大槻の上半身がローラーへ沈んでいく。
胸、肩、首。
そして最後に残ったのは大槻の頭部だけだった。
神の力によって首から下をグシャグシャに失っても、強制的に意識は保たれている。
視聴者が処刑されている人物を最後まで確認できるように。
大槻の目は血走り、口だけが意味のない呼吸を繰り返していた。
『大槻宗一』
黒煙が呼びかける。
「……たす……け……」
『午後の講演題目を覚えていますか』
「ひ、とを……守る……現場……」
『結構です』
黒煙は工場の時計を見た。
午後十時十二分五十秒。
『最後に一つ、納期を守っていただきます』
大槻の頭部がローラーへ触れた。
「いやだ……い゛や゛た゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ゛……!」
十秒。
頬の皮膚が巻き込まれる。
九秒。
顎の骨が砕ける。
八秒。
悲鳴が、喉から漏れる空気の音へ変わる。
七秒。
鼻と歯が押し潰される。
六秒。
眼球が圧力に耐えられず、赤い液体とともに飛び出した。
五秒。
額がローラーの隙間へ沈む。
四秒。
頭蓋骨に亀裂が走る。
三秒。
大槻の顔から、人間の形が消える。
二秒。
金型が開く。
一秒。
巨大な油圧プレスが降下した。
午後十時十三分━━。
工場を揺らす轟音とともに大槻宗一だったものが最後の一枚へ成型された。
排出用コンベアへ、三枚目の赤黒い板が落ちる。
中央には〈安全第一〉の文字。
その上には潰れた大槻の顔が、薄い浮き彫りのように残されていた。
管理画面が緑色に点灯する。
〈生産目標:一名〉
〈生産実績:一名〉
〈納期:遵守〉
『お見事です』
黒煙は弁当箱を閉じた。
『生涯で最後の仕事だけは、予定どおりに終えられました』
* * *
工場内の大型スクリーンには新しい事故報告書が表示された。
〈事故発生日時━━本日、午後十時十三分〉
〈被災者━━大槻宗一〉
〈事故原因━━被災者が独断で安全装置を無効化し、稼働中の機械へ侵入したため〉
〈再発防止策━━現場作業員への安全教育を徹底する〉
それは、半年前に森谷翔太へ卑劣に押しつけられた文章と同じだった。
名前だけが変わっている。
『調査の結果、本人の不注意だったようです』
黒煙は報告書を読み上げた。
『会社に責任はございません。お決まりのパターンですね』
コメント欄へ、怒りと恐怖が同時に流れる。
〈おい……こんなのが安全第一かよ〉
〈自業自得だけど見ていられない〉
〈Elはやりすぎだ〉
〈いやいや、森谷さんは同じように死んだんだぞ!?〉
〈じゃあElが殺していいのか?〉
〈会社の役員全員調べろ〉
〈行政は何をしてたんだ!〉
黒煙はカメラへ向き直った。
『森谷翔太は自ら危険区域へ入ったのではありません』
『安全装置の故障を報告し、点検の延期を求め、それでも上司の命令によって稼働中の機械へ無理やり入れられました』
『彼の死は、本人の不注意による事故ではありません』
画面へ、森谷翔太の顔写真が映る。
『会社の利益と、たった今ハンバーグになった大槻宗一の出世のために"殺害"された被害者です』
工場の外から複数のサイレンが近づいてくる。
『以上をもちまして安全管理シンポジウムの実技講習を終了いたします』
黒煙が僅かに頭を下げた。
『帰宅するまでが研修です。もっとも、講師の方は先にお還りなられましたが』
生配信が終了する。
━━取引を完了しました。
* * *
森谷瑞穂は処刑を最後まで見ることができなかった。
大槻の右足が機械へ巻き込まれた瞬間にスマートフォンを伏せ、両耳を塞いだ。
息子の死を理解するために同じ死を見届ける必要はなかった。
それでも配信の最後、黒煙が翔太の名前を読み上げたときだけは顔を上げた。
『彼の死は、本人の不注意による事故ではありません』
半年間、会社の誰からも聞けなかった言葉だった……。
部屋の入口には瑞穂の夫が立っていた。
会社へ逆らえば次男の就職まで潰されると言い、妻へ諦めるよう求め続けた男だった。
「会社から電話が来た」
夫の声は掠れている。
「何も話すなと……弁護士が行くまで、外へ出るなと言われた」
瑞穂は熱で曲がった社員証を胸へ抱いた。
「もう、あの人たちの嘘を守らなくていい」
夫は答えられなかった。
その場へ膝をつき、両手で顔を覆う。
大槻が死んでも翔太は二度と帰ってこない。
半年遅れで真実が届いても息子が最後に感じた壮絶な痛みは消えない。
それでも瑞穂は、ようやく息子へ伝えることができた。
「翔太。あなたは……何も、間違えてなかったよ……っ……」
涙が、焼けた社員証へ落ちた━━。
* * *
拘束に使われていた安全線が床へ戻った。
久我は自由になっても落ちていた拳銃へ手を伸ばさなかった。
黒煙はすぐ近くに立っている。
今度撃っても全く通用しない。
それより、次に弾丸を通過させる相手が自分の身体になる可能性を考えた。
「一つ聞かせてくれ」
『質問の内容によります』
「今日、東央重工業の本社にいたか」
黒煙の動きが止まった。
ほんの一瞬だった。
『私は午後の講演を拝聴したと申し上げました』
「そういう意味じゃない」
『では、どういう意味でしょう』
久我は答えなかった。
部下から受けた報告を思い出している。
百二十メートル先から、遮光フィルム越しのカメラを見つけた高校生。
大槻の講演会場にもいた少年。
そして目の前で、大槻の午後の発言を知っている怪物。
偶然と呼ぶには形が整いすぎている。
だが、祈とElを結ぶ証拠は何もない。
片方は虫すら殺せなさそうな顔をした制服姿の華奢な少年、もう片方は超常的な力で簡単に人を捻り潰し、銃弾も何もかも通じない裁きの神と称される黒煙だ。
「お前は……一体何なんだ」
『本日の研修担当者です』
「ふざけるな」
『あなたも本日、事故死の偽装を担当していたでしょう。役職だけなら似たようなものです』
黒煙は四段の弁当箱を持ち上げる。
久我の目が、その形を追った。
黒い風呂敷。
四段重ね。
午後、部下が撮影した祈の写真にも、大きな鞄から同じ色の風呂敷が覗いていた。
しかし……どこにでもある布だ。
弁当箱の形だけで人間と怪物が同一だと考える方がどうかしている。
久我はそう判断した。
いや、判断しなければ自分が今日一日追っていた少年には二度と近づけなくなる。
『久我征士郎』
名前を呼ばれ、久我の背筋が伸びる。
『次にこの方のご家族へ近づくときは、ご自身の遺品を決めてからになさってください』
「この方……森谷さんの家族か」
黒煙は答えなかった。
身体が夜の闇へ溶け始める。
「待ってくれ!」
『警察が到着します』
赤黒い雷が最後に一度だけ瞬いた。
『証拠隠滅がお得意なら、お急ぎになった方がよろしいかと』
黒煙が消える。
同時に工場の出入口が解錠された。
久我は三人の部下へ指示を出す。
「北側の保守通路から出る。車は捨てろ」
「榊原は?」
「置いていく」
「録音は━━」
「世界中へ流れた。今さら一台壊して何になる」
久我たちは暗い保守通路へ走った。
榊原は追わなかった。
音楽プレーヤーを両手で握り、サイレンの音が近づくのを待った。
* * *
火村と森川が工場へ踏み込んだのは午後十時二十分だった。
防護盾を持った警察官たちが二人の前を進む。
稼働していた成型機は完全に停止していたが、床には血液と衣服の切れ端が飛び散り、排出用コンベアの先へ三枚の赤黒い板が並んでいた。
表面にはすべて、〈安全第一〉と刻まれている。
最後の一枚に残された人間の顔を見た森川が口元を押さえた。
「大槻……宗一……っ……」
「見るな。鑑識を呼べ」
火村はそう言いながら、自分だけは視線を逸らさなかった。
「工場内の全電源を落とせ。勝手に機械へ触るなよ」
「既に停止しています」
「Elが止めたからって安全だと思うな」
火村は周囲を見回す。
「安全だと言われて人が死んだ現場だ」
「刑事さん」
成型機の陰から榊原が現れた。
両手を上げ、ゆっくりと近づいてくる。
「榊原修司です。森谷翔太の事故について……話があります」
火村は警察官へ目配せする。
榊原の身体検査を行い、安全が確認されると森川が毛布をかけた。
「ほかに誰がいた」
「大槻と、久我と呼ばれていた男。それから部下が三人」
「久我のフルネームは」
「Elが……久我征士郎と呼んでいました」
森川が手帳へ書き留める。
「どちらへ逃げた」
「北側の通路です。でも、今はこれを」
榊原が古い音楽プレーヤーを差し出した。
「大槻が安全装置を切れと命令した録音です」
「原本か」
「はい」
「お前が安全装置を切ったのか」
榊原は一度目を閉じた。
「俺が……俺が切りました……!」
逃げずに答える。
「全部、警察で話します」
火村はプレーヤーを証拠袋へ入れた。
「森川。榊原を保護して病院へ。そのあと任意で話を聞く」
「分かりました」
「それから北側へ人を回せ。久我征士郎の手配もだ」
森川が榊原を連れていく。
火村は一人、成型機の前へ残った。
管理画面には大槻が半年前に行った操作履歴が表示されたままだ。
Elは、人間が見落とした証拠を並べた。
そして榊原を生かして人間の法へ証言を返した。
それでも大槻だけは、法廷へ立たせることなく殺した。
「勝手に選びやがって……」
火村は拳を握る。
「証拠が揃ったなら、なおさら生きて渡せよ」
返事はない。
工場の隅に、卵焼きの小さな欠片が落ちていた。
火村はしゃがみ込んで証拠番号札を置く。
人間を成型機へ押し込みながら平然と弁当を食べていた怪物。
怒りを抱いているようにも、処刑を楽しんでいるようにも見えない。
ただ決められた作業を終えて食事をし、次の場所へ帰っていく。
その無感情さが火村には残虐な処刑そのものより不気味だった━━。
* * *
午後十時三十二分。
久我は工場から二キロ離れた資材置き場にいた。
部下たちとは途中で別れ、盗難車の後部座席で服を着替えている。
血のついた上着を袋へ入れて使い捨てのスマートフォンを取り出す。
最初に電話をかけた相手は、大槻の関係者ではなかった。
『状況は』
学校法人の理事長、一ノ瀬の父親が尋ねる。
「私らは一旦、天羽祈の調査から降ります」
『何?』
「契約金は返金する」
『なぜだ、理由を説明しろ』
「あの少年には、これ以上人を近づけない方がいい」
『ほう、高校生一人に君ほどの人間が怖気づいたのか』
久我は窓の外を見る。
暗い資材置き場のどこかに黒い影が立っているような気がした。
「そう思っていただいて構いません」
『こちらは調査だけ頼んだはずだ。何があった』
「あなたの息子さんに聞いてください」
『真に?』
「なぜ……天羽祈をそれほど恐れているのか」
通話の向こうで沈黙が生まれる。
『息子は関係ない』
「本当に?」
久我は理事長の言葉を最後また聞かずに通話を切った。
続いて、祈を撮影していた部下へ電話をかける。
『久我さん』
「天羽祈を最後に確認した場所は」
『東央重工業本社から北へ二百メートルです。そのあと駅とは逆へ歩いて……見失いました』
「どうやって」
『角を曲がったのを見て、十秒後に追いました。でも、どこにもいなかった━━』
「車へ乗った形跡は」
『ありません』
久我は時刻を確認した。
本社から第四成型工場までは車でも一時間以上かかる。
祈を見失ったのは午後四時半。
Elが工場へ現れたのは午後十時。
移動時間だけなら十分にある。
何の証拠にもならない。
「撮影した写真を全部送れ」
『もう送ってあります』
「天羽が持っていたものは」
『大きな鞄と……四段くらいの弁当箱です。黒い風呂敷に包まれていました』
久我の指が止まった。
工場に現れた黒煙の右手。
同じ四段重ねの弁当箱。
同じ黒い風呂敷。
偶然だ。
久我はそう考えた。
こんな形の弁当箱など同じものはいくらでも売られている。
だが電話の向こうから、部下が続けた。
『それと、写真が一枚おかしいんです』
「何が」
『天羽がレンズを見た瞬間だけ、画像の中央が黒く潰れてます』
送られてきた写真を開く。
それには祈の顔があるはずの場所に、底の見えない黒い穴が写っていた。
画像処理の乱れにも見える。
だがよく見るとその中心で赤黒い光が一筋だけ走っている。
久我は画面を閉じた。
「その写真を消せ」
『でも━━』
「今すぐだっ!」
久我は命じた。
だが自分の端末に保存された同じ写真だけは消すことができなかった。
* * *
午後十時四十六分。
《ミモザ》の客席には、七緒一人だけが残っていた。
営業終了の札を出し、レジも締めている。
それでも入口の照明だけは消さなかった。
テーブルには温め直したクリームシチューとパン、鶏肉のソテーが並んでいる。
料理は三度温め直され、三度冷めた。
壁掛けテレビでは東央重工業の工場から中継が行われている。
『Elによるものとみられる新たな公開処刑が発生しました』
『死亡したのは、東央重工業常務取締役の大槻宗一氏です』
『配信では、半年前に亡くなった森谷翔太さんの事故について、大槻氏が安全装置の無効化と証拠隠滅を指示したとする音声が公開されました』
処刑映像には強いぼかしがかけられている。
それでも機械音と大槻の悲鳴だけは消されていなかった。
七緒はリモコンでテレビを消した。
スマートフォンを見る。
祈から届いた最後の連絡は、二時間以上前だった。
『必ず帰ります』
その言葉を信じたい。
だが店の外を車が通るたび、顔を上げてしまう。
午後十時四十八分。
入口の自動ドアがゆっくりと開いた。
「ただいま戻りました」
制服姿の祈が立っていた。
髪も衣服も乱れていない。
怪我も、血の跡もない。
片手には、空になった四段重ねの弁当箱を提げている。
それを見た七緒は椅子を蹴るように立ち上がった。
「遅い!」
「申し訳ありません」
「一体何時だと思ってるの!」
「午後十時四十八分です」
「時計を読ませたいんじゃないの!」
七緒は祈の前まで歩き、両肩をつかんだ。
「怪我は?」
「ありません」
「誰かに連れていかれたり、危ないことをされたりしてない?」
「されておりません」
「本当に?」
「はい」
七緒は祈の顔、首元、制服の袖、手の甲まで確認する。
傷がないと分かると大きく息を吐いた。
次の瞬間、その身体を強く抱き締める。
祈の頬が、七緒の髪へ触れた。
「心配したんだから……」
声が僅かに震えている。
祈は両腕を下ろしたまま、七緒を見下ろした。
人間が触れても何も感じない身体。
火も刃物も銃弾も、この器に傷一つつけることはできない。
それでも七緒の腕に込められた力だけは、祈の中へ形を持って届いた。
「約束を守れず、申し訳ありません」
誰に対しても見せない、言い訳のない謝罪だった。
「帰ってくる約束は守ったけど、九時までって言ったでしょう!」
「そちらは努力目標かと」
「約束って言ったでしょう!」
「はい。僕に全面的な非があります」
素直に認められ、七緒は怒りを続ける言葉を失った。
自分が祈を抱き締めて続けていることに遅れて気づき、慌てて離れる。
「と、とにかく座って」
「お説教でしょうか」
「夕食よ。食べてないでしょう」
祈は空の弁当箱を見た。
「先ほど、多少は」
「それ全部食べたの?」
「はい」
「四段も持たせたのに?」
「緊張する研修でしたので」
「安全管理の講演を聞くだけで、どうしてそんなにお腹が減るのよ」
「反面教師から学ぶ際は、通常よりもエネルギーを使うようです」
七緒は呆れながら冷めたシチューをもう一度厨房へ運んだ。
祈はいつもの窓際の席へ座る。
消えたテレビの黒い画面には、七緒の帰りを待つ背中とその向こうにいる祈が映っていた。
世界中では今も人間たちがElを神と呼ぶべきか殺人者と呼ぶべきか争っている。
警察は工場を封鎖し、企業は緊急会見の準備を始め、裏社会の人間は一枚の写真に怯えていた。
だがその中心にいる神は、七緒が温め直したシチューを待っている。
「祈くん」
厨房から声がした。
「何でしょう」
「次に約束を破ったら、一週間おやつ抜きだからね」
祈の表情が初めて僅かに強張った。
「そ、それは……少々刑罰が重すぎるのでは?」
「反省しなさい」
「人権侵害として上告を希望します」
「却下します」
「職権濫用だ……」
七緒が湯気の立つ大皿を運んでくる。
祈は両手を合わせた。
「いただきます」
今夜、最も逆らえない判決だけは、神も素直に受け入れた━━。




