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復讐はフリマアプリで落札される ~冤罪で家族と幼馴染を奪われ海へ沈められた少年は、神となって悪人を処刑する~  作者: くじけ


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第十七話 神にも単位が必要 前編


 黒瀬莉愛の首が生配信の中で胴体から離れてから九時間後。


 朝の情報番組はどの局も同じ黒い影を映していた。


 透明な電車。

 顔の代わりにカメラを載せた乗客。

 そして、白いジャケットを着た女の背後に立つ人型の黒煙。


 処刑そのものには強いぼかしがかけられている。

 それでも映像が切り替わる直前、出演者たちの悲鳴とスタジオに戻ったアナウンサーの青ざめた顔が何が起きたのかを十分に伝えていた。


『制裁者Elによる殺人は、これで確認されているだけでも三件目となります』


 画面の右上には赤い文字で大きく表示されていた。


〈裁定の神か、連続殺人犯か〉


 和泉家のダイニングで七緒はリモコンを持ったまま顔をしかめた。


「はぁ、またこんなのを朝から……」


「昨夜の夕食時には無修正で放送していました。時間帯への配慮は一応しているようですね」


 祈は茶碗へ白米を山盛りによそいながら答えた。


 テーブルには七緒が用意した朝食が並んでいる。

 焼き鯖が二尾、だし巻き卵が一本、鶏肉と大根の煮物と豚汁に納豆。

 さらに昨夜の残りの唐揚げと炊飯器一台分の白米。


 七緒の分を除けばほぼすべてが祈の胃へ収まる予定だった。


 そんな大量の料理の前に佇むテレビでは、司会者を挟んで二人の専門家が向かい合っている。


 一人は犯罪被害者支援を行う女性弁護士。


 もう一人は、刑事法を専門とする大学教授だった。


『黒瀬莉愛氏が行ったことは決して許されません。高梨直人さんを犯罪者へ仕立て上げ、死後もご遺族を攻撃させた。公開された資料が事実であれば極めて悪質です』


 教授はそこで言葉を区切った。


『しかし、それとElによる殺人は分けて考えなければなりません。どれほど被害者を救ったように見えても、法的手続きを経ず個人が人間を処刑する行為は断じて正義ではない』


『では法的手続きの途中で高梨さんが亡くなり、妻と五歳の娘まで追い詰められていた事実はどう考えますか』


『司法に不備があったなら、司法の中で改善すべきです』


『その改善を待つ間、遺族には耐え続けろと?』


『だからといって殺人を認めれば、社会は法治ではなく恐怖によって支配されます』


 画面の下では、視聴者アンケートの数字が動いていた。


〈Elの行動を支持する 六十一パーセント〉


〈支持しない 三十二パーセント〉


〈分からない 七パーセント〉


「六十一パーセント……」


 七緒が呟いた。


「三人もあんな殺され方をしてるのに、支持する人の方が多いのね」


「おそらく、Elが好かれているのではありません」


 祈は二杯目の白米へ箸を伸ばした。


「逃げ切った人間が、それ以上に嫌われているのでしょう」


「祈くんは、どっちなの?」


「どちらとは?」


「Elを支持するか、しないか」


 祈は少しだけ考えた。


「あんな簡単に首をふっ飛ばす方は、殺人よりも精肉店の方が向いていると思います」


「真面目に聞いてるの」


「僕も真面目です、肉は生活の根幹ですので。おっと……AB◯MAに出てたヴィーガンが来たようだ━━」


「もう……」


 七緒は呆れたように息を吐いた。


 画面が切り替わる。

 今度は中央駅前で黒瀬の配信を止めた制服姿の少年が映った。


 投稿者によって拡大された祈の顔には一応ぼかしがかけられている。

 だが黒髪や制服、片手に下げたコンビニ袋までは隠されていなかった。


『また、事件直前に黒瀬氏の配信に映り、痴漢の捏造を指摘した高校生にも注目が集まっています』


〈謎の美少年〉


〈私人逮捕配信者を完全論破〉


〈話題のファミレスの店員と同一人物か〉


〈ネットで人気急上昇〉


 画面に祈の切り抜き動画につけられた見出しが次々と並ぶ。

 その再生回数は一晩で八百万回を超えていた。


 七緒がゆっくりテレビから祈へ顔を向ける。


「祈くん」


「はい」


「昨日、駅で何をしてたの?」


「買い食いです」


「その途中でまた事件に巻き込まれたのよね?」


「いえ、正確には食後でした」


「そこはどうでもいいの!」


 七緒は両手で頭を抱えた。


「ああぁ……どうして祈くんが外に出るたび誰かが生配信で死ぬのよ……!」


「どうしてでしょう。あっ、しょうもないインフルエンサーが増えすぎなのでは?」


「そういう問題!?」


「大学を卒業出来なかった人間が他人の学歴バカにしたり、弱者男性を叩いておけば誰でも有名になれる時代です」


 祈は焼き鯖の身を綺麗に骨から外した。


「でもそうなった結果、AEDより動画の撮影ボタンを押す人が増えました」


「他人事みたいに……これ学校でも絶対に騒ぎになるわよ」


「授業が動画鑑賞へ変更されるなら助かります。体育より消費カロリーが少ないので」


「……体育があるの?」


「一、二時間目です」


 七緒は祈の前に積まれた空の茶碗を数えた。


「まさか……これだけ食べても足りない!?」


「体育とは恐ろしい授業です……走っても砂埃しか生み出しません。それに、育ち盛りの高校生だとこの量じゃ全然足りません」


「普通の高校生は朝からご飯をどんぶり六杯も食べないの!」


「僕は普通を目指して努力しております」


「それならまず、業務用の炊飯器を空にしないところから始めて」


 祈は七杯目をよそう手を止めた。


 七緒の懇願があまりにも切実だったため、残りは大きな弁当箱へ詰めて持っていくことにした。



 *      *      *



 校門前にはいつもの倍近い生徒が集まっていた。

 ただし、登校時間が重なったわけではない━━。


 一年生の女子たちは校門の脇でスマートフォンを手に落ち着きなく周囲を見回している。

 三年生の女子生徒まで昇降口へ入らず、友人同士で囁きながら誰かを待っていた。


「来た……!」


 一人が声を上げる。


 道路の向こうから祈が歩いてきた。

 テレビへ映ったときと同じ制服で同じ黒髪、そして昼食用とは思えない大きさの鞄。


 祈が校門をくぐった途端、生徒たちの視線が一斉に集まった。


「本当にあの子だ」


「二年三組の天羽くん」


「動画より全然綺麗じゃない?」


「私さぁ、前に廊下ですれ違ったことあるよ。オーラがすごかった」


「いいなぁ……」


 名前を知らなかった者も、一晩で祈を知った。


 神と融合した祈の存在感は人間の理性よりも深い場所へ触れる。

 女性は年齢を問わず無意識に目で追い、男性も目を離せなくなる。


 そこに八百万回再生された動画が彼を見る理由まで与えてしまった。


 何人かカメラを向けたが祈がそちらを見るだけで慌てて下げた。


「天羽先輩!」


 一年生の少女が人垣から一歩前へ出た。

 両手でスマートフォンを握り締め、顔を赤く染めている。


「あ、あの、写真を撮ってもいいですか?」


「肖像権が……」


「じゃあ、連絡先だけでも……」


「0120-1◯7-929です」


「それ違いますよね。あの、普通に……」


「チャイムより先にお腹が鳴りそうので、また今度にお願いします」


 祈は立ち止まらず昇降口へ向かった。


 断られた少女は落ち込むどころか、まともに声をかけられたことだけで嬉しそうに友人のもとへ戻る。


 祈が下駄箱で靴を履き替えていると周囲のざわめきが一段低くなった。

 すると廊下の奥から一人の女子生徒が歩いてくる。


 それは三年一組の九条美玲(くじょうみれい)だった。


 腰まで届く艶のある黒髪、長い睫毛と涼しげな目元、そして制服の上からでも分かる整った姿勢。

 昨年と今年、校内で非公式に行われた人気投票で連続一位になり文化祭では彼女を一目見ようと他校の男子生徒まで大勢集まった。


 それに加えて成績は学年上位、弓道部の主将で生徒会副会長。

 男子生徒たちが陰で「高嶺の花」と呼ぶ校内のマドンナだった。

 普段なら美玲が廊下を通るだけで男子生徒の会話が止まる。


 だが今朝、その美玲自身が見つめていたのは祈だった。


「……天羽祈くん?」


「はい」


「昨日の駅の動画、見たわ」


「それは災難でしたね。食事中に見てないことを祈ります」


 美玲は一瞬目を丸くしてすぐに笑った。


「ふふっ、面白い人なのね」


「よく店長さんには性格に難があるとは言われます」


「そんなこと言ってないわよ」


 美玲は自分のスマートフォンを取り出した。


「無断撮影を止めて何もしていない人を助けたでしょう。それで生徒会でも校内での撮影やネットへの投稿について注意を出すことになったの。よければ放課後、少し話を聞かせてもらえない?」


「僕よりも昨日バラ肉になった配信者に無断撮影された男性に聞くべきでは?」


「もちろん……そうね。でも校内の問題として生徒の立場から話せる人も必要だから」


 祈は美玲を見た。


 彼女の提案に下心はない。

 少なくとも、本人がそう思っている意識の上ではそうだった。

 しかし祈と目が合うたび美玲の心拍は少しずつ速くなっていた。


「本日はアルバイトがあります」


「なら、お昼休みは?」


「食事があります」


「そう。話しながら食べてくれても構わないわ」


「僕の食事を甘く見ない方がよろしいかと。その細い指が失くなる可能性があります」


「私、あなたのご飯に手を出すつもりはないけれど」


「賢明です」


 美玲はまた笑った。


「それなら都合のいい日を教えて。これ、私の連絡先━━」


 小さな紙を祈へ差し出すと周囲の男子生徒たちが息を呑んだ。

 九条美玲が自分から男子へ連絡先を渡すところなど誰も見たことがなかった。

 祈は紙を受け取り、特に見ることなく制服のポケットへ入れた。


「紛失した場合は、個人情報の漏洩として生徒会と公式SNSに報告と謝罪をいたします」


「うん、絶 対(・ ・)無くさないでね」


 美玲は祈の顔をもう一度見たあと、名残惜しそうに三年生の教室へ向かった。


 階段の途中で一度だけ振り返る。

 しかし祈は既に彼女から背を向けて上履きの踵を直していた。

 

 葵がその光景を二階の廊下から見ていた。


 美玲が祈へ差し出した白い紙。

 祈がそれを拒まず制服のポケットへ入れたところまで見えた。


 胸の奥へ濁った熱が広がる。


 九条美玲は女子生徒から見ても綺麗だった。

 成績も良く誰にでも丁寧で優しく、祈を犯人だと決めつけたこともない。

 自分より祈に近づく資格があるように思えてしまう。


 でもそう考えた瞬間、葵は唇を噛んだ。


 祈が誰と話そうと自分に口を出す権利はない……葵は半年以上前にその権利を自分から捨てた。


 分かっている。


 それでも、美玲へ向けられた祈の静かな目を見ていると胸が痛んだ。


「葵」


 隣から名前を呼ばれる。


 一ノ瀬真が立っていた。


「何を、見てるんだ?」


「……何でもないです」


 葵は窓から離れると一ノ瀬は階下へ目を向ける。

 祈の周囲には一年生から三年生まで何人もの女子が集まっていた。


 その中でも葵の視線だけが他の少女とは違うことに気づいてしまう。

 憧れではない、失ったものを取り戻そうとする人間の目だった。


 一ノ瀬の胃の奥が冷たく縮む。


「アイツに近づくのは、やめた方がいい」


「どうしてですか」


「昨日もアイツがいた場所でElが現れた。何かあるに決まってる」


「でも祈がいなかったら、昨日の藤原さんも高梨さんと同じように人生を壊されてたかもしれません」


「でも━━」


「証拠もないのに疑うのは、私もう嫌なんです」


 葵は一ノ瀬を見ずに教室へと戻った。


 一ノ瀬だけが廊下へ残される。

 祈へ女子が集まることよりも葵が自分の言葉を疑い始めていることが恐ろしかった。


 以前なら一ノ瀬が危険だと言えば葵は祈から離れた。


 今は同じ言葉を証拠がないと退ける。


 久世蓮司が学校へ来てから何もかもが逆方向へ進み始めていた━━。



 *      *      *



 一、二時間目の体育は、冬の持久走だった。


 二年生の男子が校庭の外周を走り、同じ時間に三年生の女子が内側のトラックでタイム測定を行っている。


 祈は準備運動の時点から注目を集めていた。

 体操服に着替えると制服の下に隠れていた身体の細さが際立つ。


 白い腕も華奢な肩も、とても運動が得意には見えない。

 それでも病弱な印象より、触れれば消えてしまいそうな危うい美しさが先に立った。


 三年生の女子たちは自分たちの列を整えながら、何度も祈へ視線を送っている。


「あの子が駅の動画の?」


「朝美玲が話してた子」


「ねぇ、本当に二年生?」


 体育教師が笛を吹いた。


「私語をするな! 二年男子は今から二千メートルだ。それと、半年以上休んでいた天羽は無理なら途中で歩いていいぞ」


「途中で給油するので大丈夫です」


「は……? そろそろスタートするぞー」


 祈はスタート地点へ並んだ。


 本気で走れば校庭は最初の一歩で消える。

 なので脚力を人間の範囲へ抑え、呼吸と発汗を再現して周囲の速度へ合わせる必要があった。

 祈には惑星を砕くよりも普通の高校生を演じる方が繊細な制御を要求される。


「位置について」


 笛が鳴る。


 二十人ほどの生徒が一斉に走り出し、祈は集団の中央へ入った。


 一周目、四十七秒。


 二周目、四十七秒。


 三周目も、四十七秒。


 前を走る生徒の速度が落ちれば抜き、後ろから近づく生徒がいれば少しだけ速める。


 まるでメトロノームのように乱れのない足音で祈は同じ時間を刻み続けた。


 やがて周囲の生徒たちの呼吸が荒くなった。

 肩が上下し額から汗が流れて着地する足も重くなる。

 だが、そんな中でも祈だけは走り始めたときと何一つ変わっていなかった。


 そんな祈のランニングスタイルに教師が眉を寄せる。


「天羽! 余裕があるならもっと速く走れ!」


「療養明けですので、無理をするなと先ほどご指示いただきました」


「走りながら淡々としゃべるな! 気味が悪いぞ!」


「では、苦しそうにした方が教育的でしょうか」


「そういうことを言ってるんじゃない!」


 祈は少し考え、次の直線だけ口を開けて呼吸を荒く見せてポッケから取り出したi◯バープロテインバニラ味を食べ始めた。


「はぁ、はぁ。大変、苦しいです。もぐもぐ……」


「そりゃ食ってるからだろうが! ていうか食いながら走るな! 俺を馬鹿にしてるだろお前!」


「先生のご期待に応えたつもりでした……」


 近くを走っていた生徒が吹き出し、その直後に呼吸を乱して咳き込んだ。


 祈は同じ速度のままその横を通り過ぎる。


「もぐもぐ……笑うと吸える酸素量が減りますよ」


「ちょおま、誰のせいだよ……!」


 五周を終えた祈は狙ったとおり全体の九番目でゴールした。


 速すぎず、遅すぎない。

 記録だけを見れば長期欠席から戻った生徒としては多少良い程度だった。


 ただし一滴の汗も流さず、息すらも乱れていないことを除けば━━。



 教師はタイム表と祈の顔を見比べた。


「お前、本当に走ったのか?」


「集団幻覚でなければ」


「ならどうして息が上がってない」


「日頃から心肺へ負担をかけない生活をしております」


「食いながら走ってたのにか?」


「消化器官は鍛えてあります」


 祈は校庭の隅へ置いた鞄から、栄養補助ゼリーを取り出した。


「おい! 走った直後にまた食べるな!」


「これは給油です。僕は失った燃料は早めに補う主義です」


「お前が失ったのはカロリーより常識だ!」


「そちらは半年以上前に家へと置いてきました」


 体育教師が笛を握ったまま天を仰ぎ、目を瞑った。


 三年生の女子の列から笑い声が上がる。

 測定を終えた九条美玲が、タオルで額を押さえながら祈へ近づいてきた。


「天羽くん、全然疲れてないのね」


「表情を読まれない練習です。革ジャン着たバイカー達との賭けポーカーが近々あるので」


「またそんなことを……心拍数まで顔に隠せるの?」


 美玲は手にしていたスポーツドリンクを差し出した。


「よかったらこれ。未開封だから」


「ご自分で飲まれた方がよろしいかと」


「もう一本あるの。朝のお礼……というのも変だけど受け取って」


 祈はボトルを見た。

 断り続ければ周囲の視線を余計に集める。


「ありがとうございます」


 受け取ると美玲は嬉しそうに微笑んだ。


「放課後が無理なら、明日の昼休みはどう?」


「明日は昼食が三段あります」


「食べ終わるまで待つわ」


「日が暮れる可能性があります」


「それでもいい」


 美玲は冗談に笑いながら自分の列へ戻っていった。


 校庭の反対側では次の授業へ移動する二年生女子が立ち止まっていた。


 その中に葵もいる。


 手には自動販売機で買ったばかりのスポーツドリンクが握られていた。

 祈が走り終わる時刻に合わせ、渡そうと思って買ったものだった。

 だが祈の手には既に美玲から受け取ったボトルがある。

 透明な容器の中で液体が揺れるたびに葵の胸の奥も落ち着かなく揺れた。


「ねぇあれ、九条先輩だよね」


 隣の友人が言った。


「天羽くんと仲いいのかな」


「今朝も連絡先を渡してたって」


「もしや付き合ったりして」


「……祈は、そういうの興味ないと思う」


 葵は思わず口を挟んだ。


 友人が不思議そうに見る。


「どうして葵が分かるの?」


「幼馴染だから……」


 そう答えたあとでその言葉が現在も有効なのか分からなくなった。


 幼い頃から知っている。

 好きな食べ物も苦手な教科も、笑うと少しだけ目尻が下がることも知っていた。


 けれど半年以上の空白から戻った現在の祈が何を考え、何を見ているのかは何一つ分からない。


 近いうちに美玲の方が今の祈について自分より多く知る日が来るかもしれない。


 その想像だけで握ったボトルが小さくへこんだ。


「葵、飲まないの?」


「……あとで飲む」


 祈がこちらへ顔を向けた。

 葵は目が合ったと思い反射的に背筋を伸ばす。


 しかし祈が見ていたのは校舎の上に止まった一羽の烏だった。

 その烏は祈に向かって頭を下げ、何処かに飛び立った。


 その数秒後には栄養補助ゼリーへと視線を戻す。


 葵の存在には最初から気づいていなかった。

 だがその無関心が、美玲へ向けられた微笑みよりも痛かった━━。


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