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お嬢様は恋煩い  作者: 霧原善光
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第3-2話 池内桃香

 

 

 翌週の月曜日。

 シフトの時間にあわせてブルーメに行くと、厨房には店長と島田の他に、お店の制服を身に纏った見知らぬ女の子が立っていた。

 胸には“研修中”と書かれた名札がつけられている。

 それで俺は、今日から店長の娘さんが働き始めることを思い出したのだが、どうにも違和感が拭えない。

 俺の記憶にある店長の娘さんは、黒髪で地味な感じの女の子だったはずだ。

 しかし今俺の目の前にいる子は、髪を明るい茶色に染めて、目がパッチリとしていて、目立ちすぎない程度にアクセサリーを身につけていて、とても垢抜けていた。

 いわゆる大学デビューというやつだろうか。

 この手のタイプの女の子は、正直言って苦手だった。いや、どのタイプの女の子も別に得意ではないのだけど、こういったきゃぴきゃぴした感じの、青春オーラを全開にしている人種とはすべからく話が合わないのだ。

 まあ、あまり気にしないことにしよう。島田はこういう女の子好きそうだし、任せておけばいいだろう。

「お疲れ様です」

 俺が挨拶すると、三人は揃って俺の方を振り返る。

「やあ、慶太君、こんばんは」

「お疲れッス!」

「お疲れ様です!」

 島田はともかくとして、店長の娘さんも元気に挨拶を返してくれる。

 店長も娘と一緒に働けるのが嬉しいのか、いつにもまして表情が柔らかい。

「紹介するね。娘の桃香」

 紹介された店長の娘さん――桃香さんは、一歩前に進み出ると、笑顔でぺこりとお辞儀をした。

「池内桃香です。よろしくお願いします!」

「どうも、石神慶太です」

 桃香さんの元気溌剌さに、俺は少々面食らいつつ、簡単に自己紹介を返す。

 そんなつもりはないのだけど、どうしても素っ気ない態度になってしまうのが対人関係能力の低さを露呈している。

 自分でも分かってはいるのだが、改善の見込みはまったくない。

 しかしそんな俺に対しても笑顔を崩さない辺り、桃香さんはよくできた子のようだ。

「桃香、慶太君たちの言うことしっかり聞くんだよ」

「分かってるってお父さん」

 微笑ましい親子の会話。こうして少し見ただけでも、温かい家庭の様子が目に浮かぶようだ。

「じゃあ、僕は奥の部屋で仕事してるね。二人とも、厳しくしてくれていいからね」

「はい」

「任せてください!」

 店長はにこやかに頷くと、そのまま事務室に入っていった。

「それじゃ、まず注文の取り方から教えるよ!」

「お願いします!」

 島田は早速、桃香さんにハンディの使い方から教え始める。

 島田もようやく仕事に慣れてきたところだったが、動機はどうあれこうして後輩に教えることでいい復習にもなるだろう。

 桃香さんは島田に任せて、俺はまだ客が少ない間に、ひとまず一服するべく店の裏に出て行った。

 

 

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