第2-9話 仲直り
それからさゆりをお嬢様の部屋に呼んで、私はお嬢様の気持ちをさゆりに説明いたしました。
お嬢様が慶太様のことを、どれほどお慕いしておられるか――。
そのことを聞いた時、さゆりはとても驚いた顔をしておりました。
さゆりにとって男女の恋愛などというものは、お伽噺の中での出来事でしかなかったのです。
そして大人になればどこかから勝手に素敵な男性が現れて、結婚するものだと思っていたのでしょう。
私の両親も、お嬢様のご両親であられるご主人様と奥様も、私たちの周囲の大人は皆お見合い結婚でしたし、私どもの加護によってお嬢様やさゆりに変な虫が寄り付かないようにしておりましたから、そう思うのも無理ないのですが。
しかしさゆりも、慶太様の名前に顔を紅潮させるお嬢様を見て、やがては納得がいったのでしょう。
実感は湧かずとも、お嬢様が恋をしているという点については理解できた様子でした。
また、お嬢様がストレスを感じておられた理由についてもさゆりに説明しました。
さゆりが慶太様と仲良くしていたことにやきもちを妬き、とても不安になってしまったことを。
そのことについては、恋愛感情以上にさゆりには理解しがたいものだったかもしれませんが、とりあえずはそういうことが起こりうるということだけはよく分かったみたいです。
「ごめんね、さゆ……」
「ううん、いいの。私こそ、慶太と仲良くしてごめんね」
「違うの! さゆには慶太と仲良くしてほしかったの。ただ、あんまりにも仲が良すぎたから、私不安になっちゃって……」
話している内にお嬢様の瞳が再び潤んでまいりました。
それでも素直に自分の気持ちを伝えようとするお嬢様の健気さに、私まで目に熱いものがこみ上げてきます。
「ごめん、おかしいのは分かってるの。慶太と仲良くしてほしかったのに、仲良くしすぎたからって怒るなんて……」
俯くお嬢様に対し、さゆりは首を振って答えました。
「さゆね、慶太のこと好きだけど、結婚したいわけじゃないよ。麻夕ちゃんの方がもっと大好きだし、さゆ、麻夕ちゃんのこと応援してるね!」
「――ありがとう」
恥じらいに頬を染めるお嬢様を、さゆりが正面から抱きしめました。そんなさゆりを、お嬢様も優しく抱き返します。
――さて、これにて一件落着ですが、せっかくなのでもう一手打っておきましょうか。元の鞘には収まりましたが、雨降って地固まればより良いことは間違いありませんからね。




