第2-6話 団欒の後(2)
慶太を見送った後、私は真っ直ぐ自分の部屋に向かった。
後ろをさゆがついてくるけど、あえて気にしないことにした。できれば今は一人にしてほしかったけど、一人にしてってわざわざ言うことすら億劫だった。
なんでこんなに気持ちがもやもやするのか、自分でも分からなかった。
今日という日がずっと待ち遠しかったはずなのに。
慶太とさゆと琴葉と、四人でご飯を食べたりお喋りするのをとても楽しみにしてたはずなのに。
今はただ、一人になりたかった。
でも、さゆはついてくる。いつもと同じ、私の大好きなその笑顔で。
だけど今は見たくない。人の気持ちも考えず、暢気に笑ってるさゆの顔なんか、見たくなかった。
さゆとお喋りしてるとき、慶太もとっても笑顔だった。あんな笑顔、私にもあんまり見せてくれたことがない。
慶太はずっとさゆとばっかりお喋りしていた。私も話したいことがたくさんあったのに、ほんのちょっとしか話せなかった。
二人が話していたことは、全部私は知ってることだった。
私だけしか知らなかった慶太のことが、どんどんさゆも知るところになる。それは嬉しいことのはずなのに、なぜか私は嫌だと思ってしまった。
慶太は料理ができる。さゆもできる。私はできない。
慶太はカッコいい。さゆは可愛い。私は可愛くない。
慶太は優しい。さゆも優しい。私は優しくない。
慶太とさゆはとってもお似合い。
――きっと、いい恋人どうしになると思う。
「ありがとう、麻夕ちゃん。慶太のこと、紹介してくれて」
別に、さゆのために紹介したわけじゃない。
慶太とさゆが仲良くなって、みんなでどこかに遊びに行けたりしたらいいなって思っただけ。
私は私のために慶太をさゆに紹介したのであって、決してさゆのためなんかじゃない……。
「慶太ってとってもいい人だね。親切で、大人って感じがした」
さゆは慶太の何を知ってるっていうのよ。
私は慶太と出会ってから、いっぱいメールしたし、電話もしたし、デートだってしたんだ。
さゆの知らない慶太のことを、私はまだまだたくさん知ってるんだから。
「麻夕ちゃんが慶太のこと好きなの分かる気がするな」
――もう我慢の限界だった。
“好き”――さゆには、私が慶太のことが好きだってことは言ってなかったから、単にそう推測しただけのことだったのかもしれない。
もしかしたら、さゆのことだからそんなに深い意味じゃなかったのかもしれない。
でも――私が慶太のことが好きだってことは、何も知らないさゆがそんな簡単に言葉にしていいものじゃない。
「知ったふうなこと言わないでよ!」
気付いたときには、私は大声で叫んでいた。
そしてふと我に返って、激しい後悔が私を襲った。
でも遅かった。さゆは雷に打たれたような表情で、凍り付いていた。
「麻夕ちゃん……」
茫然として、さゆは私の名前を口にする。
そんなさゆを見ていられなくて、激しい自己嫌悪から逃れたくて。
私はさゆを置いて、その場から走り去った。




