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役立たずちゃんの地味魔法脱走劇  作者: 兵衛門


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4.5,生産・物流チート

 泥嵐をやり過ごす為の避難所で体調を崩した私が目を覚ますと、眩暈も頭痛も治まっており、すぐ隣でヴィクトリアさんとファルナさんが毛布にくるまって眠っていた。

 テントの布の向こうが少し明るいから、早朝なのかも知れない。

 改めて自分に〈鑑定〉を掛け、発現した特殊能力について調べてみた。

 【亜空間収納】は眩暈が起きる前に見ていたので、今度は【創造魔法】を重点的に調べてみよう。

 ざっくり大まかに言うと、【創造魔法】は内包魔力を使って無から有を生み出す特殊能力だ。ただし、消費する魔力はかなり大きく、通常の内包魔力しか持たない者ではまともに発動すら覚束(おぼつか)ない。

 【内包魔力特盛】がある私ですら、何もない空間に何かを発生させるのは手の平に収まる程度のものが限界だと思われる。試しに使おうとしたら一瞬意識が飛んだほどだ。

 この能力の面白い所は、消費魔力を抑える為に出来ることが非常に多い事だ。

 通常の魔法と同様になんらかの要素を加える事でも消費魔力を軽減できるし、知識と経験によっても消費を抑えられる。

 作り方と適切な道具、材料、そして作るための知識があれば、そこそこ実用的な消費に落ち着かせることが可能なのだ。

 なので、「作る」ではなく「変える」という使い方であれば、自由度の高い使い方が出来るのではないだろうか。

 寝床をそっと抜け出そうとすると、ファルナさんの白蛇さんが首をもたげて私を見つめていた。


 「心配ないからファルナさんを起こさないで下さいね?」


 自分の口元に人差し指を立てて白蛇さんにお願いした。

 テントの外に出ると、寝ずの番として焚火を絶やさないようにしていたバスキアさんが「どうした? 少しは良くなったか?」と声を掛けて来てくれた。

 もう大丈夫だという事を告げ、先ほど迷惑をかけた事を謝ると手招きされた。


 「この薬はマルクスが調合したものだ。マルクスは変人だが、腕前は確かだから飲んでおけ」


 そう言いながら、水の入ったコップと小さな皿に乗せられたペースト状の薬を渡された。

 ……ペースト状のこれを水で流し込むの……?

 漢方みたいな匂いがしていて、なんだかこの世の物ならぬ味がしそうな代物に尻込みする。

 バスキアさんが早く飲めとばかりに私をじっと見つめているので、思い付きで〈乾燥〉を使い、ペーストだったものを顆粒状にしてみた。

 ちょっとだけ指で触って舐めてみると、渋にが酸っぱいという、結構大変なお味に仕上がって(むせ)てしまう。


 「大丈夫か? 一気に行った方が楽だぞ」


 そうアドバイスをくれたバスキアさんは覆面で顔が隠れているが、目が笑っていた。

 むむむ(思考)…………む(閃き)?!

 ピンと来て、【創造魔法】の能力を使ってみることにした。

 顆粒状になったマルクスさんの薬を錠剤の形にするくらいなら、たぶん出来る。

 薬の乗った小皿を両手で覆い、即興の呪文を唱えてやる。


 「我が魔力を捧げ、対価を求める。飲みやすく纏まり給え。我は奇跡を起こす手を持つ者」


 小皿を包む手を広げると、見事な錠剤に変わっていた。【創造魔法】に一番必要なのは、内包魔力じゃなくて発想やアイデアといったものなのかも知れない。

 錠剤になった事で飲みやすくなったマルクスさんの薬は、臭いを我慢すれば何とかなるところまで持ってこれた。


 「驚いた。そんな事も出来たのか。ただ魔法はそのあたりでやめておけ。ファルナが魔力欠乏の可能性がある言っていたぞ」


 バスキアさんが心配そうに注意してくれた。

 あの眩暈は魔力欠乏だったんだろうか。自分でもよくわからないまま、「心配してくれてありがとうございます」といってテントに戻った。

 身体はだるいので、もう少し眠った方が良いかも知れない。

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